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477.第三回イベント、一日目

 SIDE:未知なるもの


 その日、ほのぼの日常オンラインは湧いていた。

 ほのぼのオンラインには二つの顔があり、戦闘スキルを持たないプレイヤーは何の変哲もない在りし日の日常風景をほのぼのと送るゲームを体験できる。また、戦闘スキルや霊能系スキルを取ることで超常現象が起こる日常を体験できる。

 俺たち非日常組は、本日特別イベント会場へと跳び、全国に広がるプレイヤーたちが一堂に会していた。

 といっても、イベントに参加するメンツにも昼間は学業、夜に夜勤、などで時間が合わないプレイヤーもいる、ということで、今回のイベントに関しては、現実世界で七日間、朝昼夜の三度、ゲーム時間内で六時間分を使った戦場が用意された。


 どれかに一度は参加できるだろう、ということで参加したプレイヤーには参加賞もでるらしい。

 別にこのイベントに参加する必要はないので、通常の非日常を謳歌するのもいいのだが、今回的になるのが世間を賑わせているプレイヤーの一人ということもあり、お祭り気分で参加する奴が多かった。

 一部、外国からログインしているメンバーもいるらしく、朝のイベントながらすでに万単位のプレイヤーがこの広場に集っている。


 最初の一日の朝のみ、イベント開催宣言があるらしく、皆ここで運営の言葉を聞くために集まっているんだ。

 かくいう俺も、知り合いのプレイヤーが今回テイムキャラ達と敵になるということなので、仲間たちと共にぶっ倒そうぜ、と知り合いと固まってここにいる。


「き、緊張します」


 隣にいる少女が思わず口にする。

 彼女は格ゲー少女。前回のイベントで知り合ってからよく一緒に探索するようになった仲間だ。

 最初こそ俺の捕食に引いていた彼女だが、今は普通に戦闘後の捕食風景でも世間話してくるようになった。人間、慣れって怖いよな。


「あ、いたいた。未知なるものさんデート?」


「ふぇ!?」


「何言ってんだお前は。マイネもヒロキには着かなかったのか」


「あのムカつく面一発殴れるチャンスでしょ、ハーレム野郎は嫌いなのよ」


「ゲーム内くらいは許してやれよ。っていうかそいつの家に居候しといてよく言うな」


「現実はボッチ君らしいからいいの。しっかし、正義の味方たちに声掛けたのにテイムした三人以外誰もこっち来てくれなかったんだよね、様子を見るとか言ってさー」


「様子見、か」


 果たして正義の味方たちはどちらに付くのか。


「あ、未知なるものさん、マイネマイネさん、お久しぶりですっ」


「おー、案内人君じゃん。おひさー」


「僕らはコトリさん撃退を目標に向かうんですけどお二人はどうするん、あ、格ゲー少女さんも一緒にいたんですね」


 俺の背中に隠れていた格ゲー少女がひょこっと顔を出したことで案内人が朗らかな笑みを向ける。


「そうねー。まずは動かず様子見、かな」


「どうせ一番槍狙った奴らは瞬殺されんだろ。相手はあのヒロキだぞ、罠だらけの道に先陣切る気はないな」


「そうなんですか? なんか奇襲部隊とか作られてますよ。ほら、あそこの一団。足の速いメンバー集って一気に森を突破してヒロキさんに奇襲かけようって」


「そうなのね、お気の毒に」


 マイネに同意だ。あのヒロキがその辺り手を打っていないはずもないだろ。

 外道だぞ。


「はーい、お集りの皆様ご注目くださーい」


 おっと空中に何か出てきたぞ。人、か? スーツ着てるし、運営かな?


「お久しぶりですプレイヤーの皆様、運営室長の川島です。この度は第三回イベント、帝王ヒロキを倒せ、にご参加いただきありがとうございます」


 あいついつの間に帝王になったんだ?

 

「このイベントは企画段階から一部突出したプレイヤーを主軸にしたイベントを行えないか、と企画されたイベントでして、イベントのボスとして選ばれたのも、皆さんと同じプレイヤーであります。彼はテイム能力でかなり強いキャラクターをテイムしており、充分にボスキャラとして役目を行えると判断し、今回のイベントを打診させていただきました。快く引き受けてくださいましたので、皆さん存分にボッコボコにしてやってくれ。おっと失礼、してやってください」


 おー、すっげぇ歓声。

 ヒロキの奴恨み買いまくってないか。今ヒロキ殺すとか死ねとか聞こえてきたぞ。


「今回のイベントが現実世界で七日間という長期間開催を行っていますのは多くの皆様にお祭りイベントを楽しんでいただきたいと思ったためでございます。もちろん、相手が弱すぎた場合ヒロキさんが倒れた時点でイベントが終ってしまいますが、それはそれでおいしいですよね。皆さん相手に七日ぐらいよゆっすわ。とか言いやがった慢心野郎に一泡吹かせてやってください、マジで」


 なんか運営からも殺気漏れてないか? ヒロキの奴なにやったんだ?


「今回用意しましたフィールドは特殊フィールドになっておりまして、皆さんは何度死のうともデスペナルティーを受けるだけです。またフィールド内で受けた呪いや、キャラロスト攻撃、デスペナルティーなどもゲーム内一日終了後に解除されますので安心してボスキャラクターたちに突撃してください」


 キャラロスト攻撃とか普通に言ってるんだが。まぁコトリさんのリンフォン発動とかだろうな。


「また、敵として出てくるNPCも今回倒されてもイベント終了後に復活し通常配置に戻りますので気にせず倒してください。このイベント中に限り敵キャラのテイムは一切できない仕様になっておりますのでご了承ください。また、敵は戦闘不能になるとイベント会場から退場し、もう出てくることはありません。危険なボスキャラクターは囲んで殲滅してしまいましょう。では、イベント開始まで10カウント、行きますよー」


 カウントが叫ばれるごとに会場のボルテージも上がっていく。

 皆やる気十分だ。

 これはヒロキもすぐに倒されるんじゃないだろうか?

 大丈夫かヒロキ、この大人数が一斉に押し寄せるんだぞ。お前のテイムキャラだけでなんとかなるとは思えな……


「いーち!」


 ぞくり、俺の視界の片隅に、それは確かに映った。

 集まる人々から少し離れた場所に、黒い和服の少女が一人。


「ぜろーっ」


 よっしゃいくぜー、と皆が走り出そうとしたその刹那。

 少女はニィと、笑みを浮かべた。


「呪滅結界」


 ラスボスが、現れた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ─────何時から、ボス側から奇襲されないと思ったのかね?
[一言] メリーさんの、呪殺してスキルごと魂を呪縛して、壊れないようにしつつ死んだほうがましの苦痛を与えつつ、永遠に使役され続ける攻撃とか? 芽里さんに使役されて味方を嬲り殺しにさせられたりとかも!…
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