45.神隠し隠連暮(かくれんぼ)・9
「ここだな」
一際大きなドアの前で、俺達は立ち止まった。
おそらくここがボス部屋だ。
ほぼ確実に強敵が待っている。
俺達は周囲を確認して敵影がない事を確認。
互いに見合って頷き合う。
そして、自然リーダー役である未知なるモノさんに視線が集まった。
「それじゃ、今から恐らくボス戦になる。皆、心して掛かってくれ」
「ボス戦かぁ、何気に初めてなのよね。大丈夫かしら?」
「敵が見えない可能性も考慮してマイネさんは子供たちの警護や俺達の回復に回って貰いたいんだけど、大丈夫か?」
「ええ。問題はないわ。どうせヒロキンさんのスキルで相手の姿は見えるみたいだし、指示さえ貰えば投擲くらいなら前衛の邪魔にならない程度にやらして貰うわ」
マイネさんの能力だと透明な敵には不利だからなぁ。
俺もスキルに目覚めるまでは不利だらけだったし。
「ヒロキは後衛で皆を守りながら俺達が見落とした敵がいる場合に周囲に指示出しを頼む。俺やグレートマンたちは基本攻撃に参加させて貰う。後方までは注意が回らないから、頼めるか?」
「了解。ハナコさん達と協力して皆を守る方に注視するよ」
「頼んだ。俺は前衛で敵の攻撃を受け止める。では、行くぜ」
代表して未知なるモノさんがドアを開いて突撃する。
ここは、作戦司令室か?
対面にモニターが無数に存在する画面の群れがあり、その下にあるコンソールなどの機械の前に、ソイツは居た。
よぼよぼの骨と皮だけの身体を白衣で隠した、前後に長い頭部の生物。
黒くつぶらな瞳に眉のない顔。
完全に宇宙人です、ありがとうございます。
「馬鹿な!? ここまで来る地球人がいるだと!?」
「ウァッ!?」
「むぅ、貴様、グレートマンか! ええい、まさかこの研究施設がバレるとは、まぁいい、貴様を倒してここはもう撤収だな。者ども、奴らを殺してしまえぃ!!」
前口上はここまでか。
メレオン星人たちがわらわらと沸いて出てくる。
透明化せずにやって来るのは何気に初めてだけど、容姿が容姿なので出来れば見たくなかった。
彼らは所定の位置まで向うと透明化して待機、そして二人が擬態をせずにグレートマンへと突撃していく。
しかし、姿が見えるのならばこちらとしても逆に助かるというもので、グレートマンと未知なるモノさんが一人づつ受け持って迎撃を始める。
俺は透明化したメレオン星人を指示でハナコさん達に伝えるだけのお仕事。
少しずつだけど確実に数を減らしていくメレオン星人。
ゲームだからだろう。わざわざ戦闘参加人数を少人数に減らして攻撃に順次参加してくるので対処が楽だ。
一斉攻撃にならないのはゲーム難易度のせいかもしれない。
まぁそこまで危険がないなら問題無しってことで、皆少しだけ余裕が持てている。
「ハナコさんあそこ! テケテケさんそっち。稲荷さんはアレ! ツチノコさんステイ」
どさくさにまぎれて突撃しようとしたツチノコさんをぎりぎりで引き留める。
「ほら、ツチノコさんは最後の希望だから朱莉達を守っておいてくれ」
「シャー……」
ちょっと残念そうにしながらも、一応自分のやることはあると理解してくれたようで、朱莉たちに危害が加えられないかつぶさに観察し始めた。
徐々にだけど敵の数が減っている。
高みの見物状態の研究者っぽい老害に視線を向ける。
おっと忘れてた。鑑定しなきゃ。
名前:パラクラリリ
種族:ノーデンシス星人 クラス:マッドサイエンティスト
二つ名:地球侵略者
Lv:20
HP:820/820
MP:322/322
TP:62/62
GP:2/2
状態:普通
技スキル:
???Lv21: ???
???Lv10: ???
???Lv17: ???
???: ???
???: ???
???: ???
うーむ。やっぱりスキル全然分からん。
でもこいつは放置しちゃマズい奴だってことは理解した。
チャット機能で未知なるモノさんに連絡。
確かこの人さっきの捕食で完全擬態覚えてたよな。
前線から一人抜けるけどコイツを先にやった方がいいと思うんだ。
「了解。やってみるぜ」
未知なるモノさんが戦線を離脱。
完全擬態で空気に溶け込みパラ……なんとかに向って移動する。
グレートマンが前線で一人戦って苦戦中なので、テケテケさんをフォローに入れる。
彼が戦ってる相手に攻撃する感じにすれば相手が見えなくても十分戦えるはずだ。
見えてないテケテケさんのフォローは稲荷さん。回復妨害役にマイネさん。
ハナコさんは子供たちのお守をお願いしているので稲荷さんが神通力でテケテケさんに近づくメレオン星人を撃退する形である。
人数的にはもう一人か二人遠距離攻撃持ちが欲しいが、贅沢は言ってられないので彼等に任せて俺は見えない相手の索敵に集中することにした。




