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449.堕落の魔王

「なるほど、そこの脳足りんが玄関開いたままにしてたから入ってもいいと判断してやってきたわけね。招き入れてるじゃないキマリス。あんたがやらかしといてなんで入ってきた、はないわよねぇ?」


 俺たちがここに来た理由を一通り聞いたナァマさんはギロリとキマリスを睨むと、呆れた口調で告げる。


「だ、だって、だってぇ、うぅ、味方がいなぁいっ」


 泣き真似し始めましたよこいつ。普通、泣いたらうおろろろんとか言わねーだろ。

 ピエロっぽい服装なだけあっていちいち動きや所作が作為じみてるんだよなキマリスさん。

 実はこの間抜けな行動も計算しつくされた行動なんじゃないかとすら思えてくるから怖いところだ。


「さて、わざわざ魔界くんだりまで来た理由が、特殊イベントねぇ」


「うす。一応今回の特殊イベントは、少年君、ナァマの館にいるからキマリスちゃんに謝って、とカルカさんと闇組織行くのと、芽里さんと人形師の館行くのと、コトリさんと名称不明アイテムを手に入れること、あとはルルルルーアさんが味方殺すのとルースさんとナァマさんと対戦しようってイベントですね」


「味方殺しって……悪魔より悪魔的なイベントねぇ」


「ですよねー」


「ちょ、ちょっと、ボク仲間になってないのになんで特殊イベントになってるの!?」


「知らねぇよ」


「どうせだからテイムされとけば? 天使もいるみたいだし、あんたがテイムされればつり合いとれるんじゃない?」


「ナァマがテイムされたらいいじゃんっ」


「私ここの領主。あんたも領地あるんだから帰りなさいよキマリス」


「ボクの領地は優秀な部下がいるから大丈夫なのさ。キマリス様は外にいる方がお似合いですので自分のやりたいようにしておいてくださいって言われてるからね」


 ふっふん、と胸を張るキマリス。

 あの、それ厄介払いされているのでは?

 俺とナァマさんは視線を交わし合う。

 どうやら彼女もそう思っているらしい。

 うん、本人には真実伝えないでおこう。これも優しさだ。


「そうねぇ。ああ、そうだわ。どうせ私と戦うのでしょ、なら私が負けたらキマリステイムしていいわよ」


「なんでぇ!?」


「いいんすか? あの胸揉みまくりますよ」


「なんでっ!?」


「許可するわ。好きにしなさい」


「だからなんでっ!?」


 よし、キマリスさんテイム可能になったらしい。

 別にテイムする必要はなさそうだけどせっかくテイムしていいって言うんだからやってみよう。

 本人の意向完全無視だけど。


 おお、早速戦闘空間にっ!

 先ほどまでいた暗闇の中の部屋から一転、淡く青白い光を放つ床と暗いけど相手が視認できるレベルの明るさがある空間へとやってくる。

 真っ暗闇よりは動きやすいけど、数メートルも離れると相手が闇に消えてしまう。


「さて、他のイベントについて話をするのもいいけど、まずは一当たり致しましょう。ああ、ちなみに私が勝った場合はヒロキだっけ? 貴方の精気吸わせて貰うわよ、ようするに、レベルドレインという奴ね」


 ぜってぇ負けられねぇ戦いじゃねぇか!?

 最悪アレを使うしかないが、いや、イケるはず。

 両手にレーザー銃を構え、俺は戦闘開始を待つ。


「全員戦闘態勢! 倒すぞルースさん!」


「了解っす、天使の一人として魔王退治、させて貰うっすよーっ」


「あら、可愛らしいことを言うのね。堕落させたくなってくるわ、ふふ。では皆さましばしご供覧あれ。我こそはリリスと共にアダムを誘惑し、悪魔の子を産ませた堕落の姫。シェムハザとアザゼルを堕落させた物質主義キムラヌートの魔王なり」


 あれ、意外とビッグネームなのでは?

 初めて聞いた名前だったけどリリスは知ってるし、他の名前も聞いたことある。

 これ、だいぶ強い存在でないですか?


 慌てて確認してみると、レベルは250、良かったまだ対応可能なレベル帯だ。

 魔界はレベル200は欲しいとキマリスさんが言ってた理由は、こうしてボス戦になった場合200あればなんとか対応できるから、ってことだろう。


 魔物が襲ってきたのを呪殺結界で瞬殺してたから近いレベルにはなってるけど、まだ200までは届いていない。

 それに関してはコトリさんのレベルで対処してもらうしかないだろうな。

 まぁダメだったらあいつを戦闘に参加させるしかあるまいが。


「それじゃ、行くわよ、マインドハック」


 げっ、いきなり精神異常系だと!?

 芽里さんがびくんっとのけぞり、その場でうつむく。

 攻撃しようとした手を止めて、糸の切れた人形のようになってしまった。


「さぁ、同士討ちを始めなさい」


 気だるげに告げるナァマさん。

 しかし、彼女は気付かない。

 何しろ、芽里さんがどういう存在かなんて彼女が知るわけがないのだから。

 だから……


「私、今貴方の真後ろにいるの」


 その都市伝説は、牙を剥く。

 慌てて飛び出すように前に逃げるナァマさん、その肩に乗っているメリーさんには気づいていなかった。

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