44.神隠し隠連暮(かくれんぼ)・8
ぎりぎりで回避した一撃は何もない場所からの攻撃だ。
間違いなくメレオン星人がそこに居る。
『鬼火っ』
ハナコさんの一撃が放たれる、が、虚空を素通りして床にぶち当たった。
『避けた!?』
「シャーッ」
あてずっぽうで肩から飛び出すツチノコさん。
放物線を描いて壁に激突した。
「何をやっとるんだ阿呆」
クソ、塩でなんとかなるか? メレオン星人向けて塩を投げる。
当たったことは当ったらいしが意味がないらしい。
再び近づいてくるメレオン星人。
空気が揺らぐのが分かるが俺以外反応出来てない。
ええい、前蹴りっ。
スキルを起動。
俺の身体がスキル特有の動きを行い、ポケットに手を突っ込んで行儀悪く前蹴りを行う。
って、これはヤクザキック!?
焦り過ぎてセットするほう間違えた!?
ええい、まぁいい。一応効いてる以上このままいくぜ。
オラオラオラッ。
怯んだ相手にローキックからのミドルキック、回転蹴りでハイキック。
倒れた相手に飛び乗ってストンピングからの口からなんか出そうな気がしたので顔面踏みつけてのマッハなふみふみ。
あ、倒した。
急に足が突きぬけるように地面に付いたことで敵が倒れた事を知る。
アイテムがその場に出てきて、稲荷さんの神通力で俺のアイテムボックスへと自動で回収された。
「ウァッ!?」
「ヒロキ、無事か!?」
未知なるモノさんが慌てたように駆け寄って来る。
グレートマンも周囲を警戒して敵が居なくなったと確認を終えた後、俺の元へと駆け寄ってきた。
「なんとか、でもやっぱり見えない相手は恐いな」
「すまん、前にばかり気を取られていた」
「ウァッ」
二人が反省してるけど、むしろ俺が遅れたせいで一人きりになってたせいもあるわけだし、むしろ俺を襲って来てくれて良かったくらいだ。俺は気付くスキル持ってたみたいだから避けれたけど、マイネさんや朱莉たちだと避ける事も出来ずに死んでいたはずだ。
「三人とも、この扉の先、行くから、早く戻って」
ちょっと、マイネさんマイペース過ぎません!?
後ろの警戒どうするか決める間もなく呼び寄せられた俺達は、一先ず俺が後方担当になることでグレートマンと未知なるモノさんが前衛で扉の先へと突撃することになった。
扉を潜り抜け、部屋のような場所に入り込む。
そこには二つのベッドと思しきものが設置されており、二人の小学生が寝かされていた。
「鴪貫太君、雙里君っ」
イベント発生か? 朱莉以外のメンバーが二人のベッド向けて駆けだし始める。
あっけに取られるプレイヤーたち、
なんか、不味いのでは?
とっさに近くに居た燦華の腕を掴む。
その行動にはっと気付いたテケテケさんが実体化して緑香の足を掴んで引き止めた。
次の瞬間、嗣朗と呉弟栖の胸に風穴が空く。
「きゃあぁぁぁぁ!?」
「クソッ! やっぱり居やがった!」
「ウァッ!!」
グレートマンが飛び出す拳光線を打ち出し一体を撃破。
遅れ飛び込むように突撃した未知なるモノさんが飛んで来た透明な舌を引っ掴んで相手を引き寄せ引き裂いた。
「呉弟栖、嗣朗っ」
マズい、致命傷だ。
俺のスキルに回復魔法は無いし、他の面子も覚えては無いらしい。
未知なるモノさんならワンチャン覚えてるかと思ったけど無理か。
「ハナコさん、あそこ! テケテケさんそっちっ」
恐らく燦華と緑香を倒すために配置されていたであろうメレオン星人を直感で見付けてすぐさま指示を出す。
何を言わずとも鬼火を投げるハナコさんと跳びかかるテケテケさん。
透明な一撃も霊体化したテケテケさんやハナコさんには素通りで、相手の攻撃は掠ることすらなく一撃で撃破する。
「他に敵は!?」
「ウァッ」
居ないらしい。
一先ずベッドに近寄り鴪貫太達を見る。
これ、既に死んでるんじゃないか? 顔が青白いぞ。
「助けられなかった、なのかな?」
「強制死亡フラグかもしれん。恐らく今回朱莉さん以外死ぬ予定だったんじゃないか?」
「なんで朱莉ちゃん以外?」
「いや、恐らくだけど、朱莉さんだけ動かなかっただろ。つまり彼女はどんな結末になろうと今回のイベントで死ぬ可能性はないってことだ。しかし他のメンバーは違う。おそらくメレオン星人の関わりすら分からなければ六人全員が消えて彼女だけが取り残される、とかあるいはプレイヤーも巻き込まれる側だが、彼女の代わりだったとかで生き残るキャラじゃないか?」
「なるほど、巻き込まれる切っ掛けを作りながら生還しちゃうタイプのトラブルメーカーか」
「ってことはこのイベント以外にも仲良くしてると巻き込まれていくってことね」
「うわーお、とんだ女だな」
とにかく死亡フラグを二人分はブチ折れたと思っていいのだろうか?
いや、まだだ。まだここのボスが残ってる。それまで死亡フラグはまだ折れ切っていないはずだ。
「燦華、緑香、俺から離れるなっ」
「「ふぇっ!?」」
「朱莉ちゃん、大丈夫とは思うけど気を付けて。出来れば俺から離れないように」
「は、はい」
「……ねぇ、ヒロキンさんってもしかして天然のタラシかな?」
「俺には真似できないな。うらやまけしからんが、相手全員NPCだからよし。現実世界じゃ無いなら俺は一向に構わん」
「ああ、それもそっか。んじゃま。あの疑似ハーレムを全員死なさないように、頑張りましょうか。ね、グレートマンさん」
「ウァッ!」
ぽんっとグレートマンさんの背中を叩くマイネさんに任せろ、と頷くグレートマン。
なんというか、ホント特撮映画から飛び出て来たかのような正義の味方だなぁ。




