429.妖精は踊り好き
宴が始まった。
なんかギーァと一緒に踊りながらディーネさんと一緒に歌ったりしてたら周囲の妖精が集まってきてどんちゃん騒ぎになってしまった。
なぜか果物などを妖精たちが持ってきて、その場で食事まで始める始末。
まぁ楽しそうだからいいんだけどさ。
いつの間にやらツチノコさんも一緒に踊ってるし。
縮んだり伸びたりってそれ踊ってるんだよね?
ティリティさんや稲荷さんは食事をする方に回っているようだ。
二人してなんかの飲み物飲んでケタケタ笑っている。
アルコールとか入ってないよな?
「あれ? そこの妖精さん、あれってヤバい系の飲み物?」
「んー? これ絞ったジュースだね」
オレンジですね。つまりオレンジジュース飲んでケタケタ笑ってるのかあの二人。
大丈夫なのか神様と外なる生物よ?
ファトゥムさんはっと、フェノゼリーにクダを巻いている。
アレもオレンジジュースだよな?
「皆場所に酔ってるんだよ。ほら、せっかくだから君も酔いなよ」
と、妖精の一人がオレンジジュースを渡してくる。
すぐに飲もうとして、ふと、鑑定してみようと思い立つ。妖精の顔がなんか悪だくみしていた顔にみえたのだ。
名前:オレンチジュース
特性:飲料 果実の飲み物
説明:とってもおいしいオレンジ? ジュース。なぁ、今日俺んちこいよ。美味しいオレンジジュースがあるんだ。飲むだけだって、いいだろ? なぁ?
ちょっと、待てぇぇぇぇい!!
オレンジジュースじゃねぇぞこれ!
おい、皆待ってくれ、コレ飲んで大丈夫な奴か!?
「あー。鑑定しちゃダメじゃん。いたずら失敗だよーっ」
「あはは、バレてやんのーっ」
「俺はあの黒いのにちゃんと飲ませたぜーっ」
「俺はあののじゃのじゃに飲ませたぜー」
「二日酔い酷いんだぞそれー、けけけ」
なんて奴らだ。
妖精油断ならねぇ!?
っていうか同じ妖精なのにファトムさんはなんで飲んでんの!?
「フェノゼリーさん、これ、ヤベェ―ジュースじゃん!」
「アルコールは妖精にはキツいんだよ、このジュースだと酔えるから結構好んで飲んでいるよ。まぁ事情を知らない旅人たちにも振舞って二日酔いを引き起こさせるいたずらをよくするけどね」
「ひでぇ……」
でもそっか。妖精たちの日常飲料なのか。
しかし悪い酔いするのはきついな。
って、あああっ!? ディーネさんにオレンチジュースぶっかけんじゃねぇ! 水で出来てるから直撃受けたらヤバいじゃねぇか!!
「あー、まねーじゃーさーん。なんか楽しくなってきたよーぅ、きゃはははは。あ、ありゃー? まねーじゃーさんがいっぱいいるー。曼荼羅だー、まねーじゃーさん曼荼羅だらだらだらーっにゃははははは」
あー、ダメだこりゃ。
俺はディーネさんの救出をあきらめる。
妖精さんにビール掛けみたいに大量に掛けられ遊ばれていらっしゃった。
妖精さんたちはオレンチジュースを大量に飲んで歌って踊って力尽きてその場に眠りだす。
そこかしこで妖精さんが大量に眠り、寝転んだ妖精のお尻に顔を埋める妖精や、抱きしめ合って眠る妖精、そのまま寝相が悪く隣の妖精をコブラツイストしてしまう妖精などなど、なんかもう地獄絵図になってきた。
「おいおい、飲んでないじゃないかヒロキー。ほれ飲めー」
「儂の酒が飲めぬのかー、あー、違ったぁ、ジュースが飲めぬのかー」
左右からティリティさんと稲荷さんが絡んできた。
なんだこれ?
くはーっとオレンジジュース臭い息を吐きつけてくる。
なんだ、これ?
「見て見てまねぇーじゃーさーーーーん。妖精団子ーっ」
ちょ、ディーネさん、妖精たちを水の中に入れて固めるのやめなさいっ!
妖精たちも楽しそうにしてるけどそれ一歩間違えたら大量虐殺だからっ!
「しゃーっ!!?」
おや、ツチノコさんの様子が……
ってツチノコさんなんつータイミングで進化しようとしてらっしゃるの!?
なにこのカオス!?
「にゃはははは、どったのヒロキー、あー、飲んでないなー。素面じゃ辛いでしょー。飲んじゃえ飲んじゃえ」
ファトムさんまでやってきて俺の頭の上に着地すると絡んでくる。しかも髪引っ張って自分から絡みに来てんじゃん。何してんのさ?
「ギーァ」
おお、ギーァ、君だけだよ飲まれてないの……は?
何だそりゃ!? お前ギーァか? 原型なくなってんじゃん。何その怪獣大決戦とかに出てきそうな姿は? いつもの倍ぐらいの大きさになってない? え、オレンチジュース飲んだら体積膨れた? お前不思議生物過ぎんだろ。
クソ、まともな奴が一人もいねぇ。
信頼できそうなのがフェノゼリーだけってどうなんだよっ。
ああもう、いいっ! 飲む!
俺はオレンチジュースを一気飲みした。
その後何があったかは覚えちゃいない。
ただ、無性に楽しかった、覚えているのはそれだけだ――――




