422.工事現場の怪
「うおぉ、心臓に悪いっ!」
やっぱ落ちてきたよ鉄骨。
ディーネさんが水の魔法で止めようとしたけどやっぱり止まらず、結果的に稲荷さんの神通力でギリギリ止まった。
ほんとギリギリだった。あと数センチ遅れてたら普通に頭に直撃して死に戻りだったぞこれ。
なんだよここ、さっきからスパナとかバールのようなものとか大量に降って来るんだけど!?
上で誰か投げてるだろ。
絶対誰かが俺ら殺しにかかってるだろ。
「ほれ、あと少しじゃ」
確かに工事中施設への入り口はあと少しだけども。
なんか凄い入ってくんなオーラが出てるんだけど。
空から降って来るのもいろいろ増えてきてるし。
ほら、ヘルメットとかおっさんとか安全靴とか……おっさん落ちてきた!?
あ、違うあれ幽霊だわ。んじゃいいか。
地面に激突して消えていくおっさん。
多分落下して死んだ幽霊設定なのだろう。
ああいうのは放置が一番だ。下手に関わるとろくなことにならないし。
俺たちはなんとか施設内へと辿り着く。
空からの落下はなくなったけど、ここもなんか嫌な感じだなぁ。
えーっと、上に登るタイプのダンジョンになるのかな? まさか登ってる途中に襲ってくるとかないよな? たまに棒状の階段があるんだけど、あれで上がってる途中とか完全無防備だぞ。
「シャー」
え、ツチノコさんに任せろって?
おお、ツイストしながら登ってった。
さすが蛇。しかも両手が塞がったりなどで無防備になったわけでもないから登ってる途中での襲撃にも対処できるようだ。
特に火炎ブレス持ってるのがいい、中距離からの先制攻撃ができるからな。
安全を確保してくれたので、稲荷さん、ティリティさん、ディーネさん、ギーァの順に登っていく。
どうでもいいけどディーネさん、ギーァ抱えて普通に飛んで上がったな。
ツチノコさんの頑張りが無駄になった気がするのは気のせいだと思っておこう。
最後に俺が階段を上って二階へ。
廃墟だな。
ところどころ工事途中なのかブルーシートかかった素材が置かれていたり、ヘルメットやスコップなどが乱雑に置かれていたりする。
ふむ、浮遊霊が闊歩してる以外はそこまで変わった感じはしないな。
「む? ダーリン、今何かあっち通った」
あっち? 通路の先に部屋があるな。
警戒しながら向かってみるか。
ティリティさんに言われた場所まで行ってみる。が、何もいない。
通路が十字に分かれているので別の場所に行ったのかもしれない。
「ギーァ!?」
どうした? ん、あっちに何かいたのか。
皆して警戒しながら、今度はギーァが見かけた何かを探しに行く。
小さな部屋に出るが、誰もいない。
「あ、マネージャーさんあっち」
今度はこっちか。
「なんか影っぽい人型だったかな?」
「幽霊じゃないならシャドー系生物か?」
とりあえず見かけたら鑑定してみるか。
「シャー!?」
今度はあっちか。
なんか、どんどん移動してるけど誘い込まれてたりするんだろうか?
ここから先は本気で慎重に移動した方がよさそうだ。
「次はあっちじゃ!」
これで謎の影を見たのは俺以外全員。
皆の目撃証言合わせても影の人としかわからないらしい。
あ、いた! 名前は……シャドウ・ピープルか。
追ってみようと通路を歩く。
ん? 風?
不意に頬に感じた風に、思わず立ち止まる。
「どうしたの? 行かないの?」
「いや、この先は……やめとこう」
部屋へと引き返す。
一旦その部屋で落ち着いていると、別の通路からなんかすげぇのがやってきた。
ただ、そいつは脇目も振らずに俺たちがさっき歩いていた通路に向かって突進していく。
「おいおい……」
「なんだあのデカいの。通路一杯に膨れておったな」
おそらくトラップだな。逃げ場のない通路、風があったことから外に繋がっていると見た。
シャドウ・ピープルを追っていくと逃げ場のない通路の先は外で、背後から迫る今さっきのでかぶつ。
通路一杯に膨れた体でものすごい速度で迫って来るので、ほぼ確実に外に押し出される。
「マッピングしながら向かった方がいいみたいだな。ああ、やっぱりあの先外にまっしぐらだ」
南の壁向かって通路が伸びてやがった。あぶないところだ。
東の通路向かえば元の位置に戻れるな。
じゃあいったん元の位置に戻るか。
「んー、あっちに行ってみるか」
「主の幸運、意外とあてになるからのぅ、なんぞ反応したか?」
「さぁ? 幸運さん見えないからどこまで仕事されてるのかわかんないんだよな。実際問題、結果がでてから、あ、幸運さんあざっす。ってなるんだよな」
「まぁそんなもんか、で、こっちに何がある……階段じゃな」
「普通にコンクリートの階段か。上が暗くなってるのがちょっと気になるな」
「ここまではなぜかちょっと明るいからのぅ」
「魔法で照らすダーリン? ライト使えば多分見えるよ」
「それで本当に照らせればいいんだけどな。霊障だったら光も飲まれないかな?」
「霊障であればお主の得意とするところじゃろ」
なるほど、確かに。




