421.人が俺しかいない探索
「ぎぃ――――っ」
闇のゲーム大会が終った。
最後は大会運営が軒並みいなくなってしまったので尻切れトンボって感じで帰ってきた翌日のこと。
新しく味方になった三人は妖精さんたちが率先して案内してくれているので、暇になった俺に、珍しくギーァが声を掛けてきた。
なんだ? と思ったのもつかの間、ギーァに引っ張られるように外に連れていかれる。
なんだなんだ? 俺に何か用事か?
UFOの外へとやってくると、すでにメンバーが揃っていたようで、俺の到着と共に、彼らは待ってました、と気合を入れる。
「テケリリリ、ダーリン待ってたぞー」
「そうじゃそうじゃ。次は儂らの番じゃ、さっさと行くぞヒロキよ!」
「シャー!」
「マネージャーさん、これ何の集まり?」
何だこのメンツ? 人が俺しかいなくね?
「あーっ、ヒロキ、私に内緒でどこ行く気ーっ!?」
あ、妖精さんに見つかった。
で、ギーァに呼ばれたのは何のため? どこ行くの?
「うむ。他のメンバーがヒロキと一緒に探索していると特殊なスキルを手に入れておるだろう。儂らもなんかほしいなってなってのぅ。とりあえず寄り集めてみたメンバーじゃ」
「と、いう訳で、どこいく?」
いや、決めてないんかい!?
「まぁ待てティリティよ。ちょいと占術で占ってみたのじゃがな。ちょうどこのメンツにいい場所があるのじゃよ。という訳で、レッツゴーじゃヒロキ!!」
えー、闇のゲーム大会から一日、なんかよくわからないうちに新しい冒険に出ることになったようです。
しかし、なんだこのメンバー。
俺と妖精さん、ティリティさん、稲荷さん、ギーァ、ディーネさん、そしてツチノコさん2号。
ツチノコさん1号が頭割れていくのと違い、ツチノコさん2号は尻尾の先に頭が出来かけている。
そう、このツチノコさんは1号が多頭蛇に進化中なのに、頭と尻尾の双頭蛇になろうとしているのである。
順当に行けば、あれだ。アンフィスバエナ、だっけ。
そんな名前の生物になるはずだ。
「あら、人がヒロキしかいないわね」
妖精さんは妖精、ティリティさんはなんかヤバい系生物だし、稲荷さんはそっか稲荷神だ。神様のアバターじゃん、人じゃないわな。
ギーァは未確認生物だし、ディーネさんは精霊。ツチノコさんは蛇だ。
うん、改めて確認しても人が俺しかいねぇ。
なんだこのメンバー。
とりあえず、稲荷さんを先頭に、俺たちは進化に適した場所とやらに向かう。
このメンツで電車に乗るのもなんか凄いな。
「そういえばヒロキ、あの真鍋だっけ、あとオキナはどうなったの?」
妖精さんは知らなかったっけ?
真鍋は結局どこに行ったか分からないんだよな。
そのうちどっかで見かけるかもしれんがおそらく俺たちと過ごした記憶はないだろう。
オキナは後始末をするってことで俺からロケラン貰って施設ぶっ潰してたな。
なんか給料上げろーとかブラック企業がぁ、とか叫びながら闇のゲーム大会施設にロケットランチャー撃ち込んでたからその場に放置してきたよ。
これでとりあえず闇のゲーム関連は終わったと思っていいかな。
熱燗侍さんや空飛ぶ茶碗さんと関係が出来たからメル友が増えたんだ。
っと、目的地はここでいいのか。
「中学校がある区域だよな。どこ行くんだ?」
「あっちの工事現場じゃな。廃墟になっとるところがあるんじゃ」
「工事現場ねぇ」
言われるままマップ選択に出てきた工事現場をタップ。近場に辿り着くと、なるほど、確かに工事現場である。
ただ、工事途中で遺棄された感じの廃墟感がにじみ出ている。
俺の目の前には安全第一のヘルメット被ったおっさん幽霊が佇んでるのが見えるので、ここは心霊スポットなのかもしれない。
「あれー? ここなんか魔力あるよマネージャーさん」
「テケケ? ダーリン、あそこに影の人いるけど、こっち見てない?」
「むぅ。なんぞ嫌な気配があるのぅ」
「シャー」
「ギーァ?」
うんまぁなんかいろいろ混ざってると。
とりあえず建設現場内部に行けばいいのかな。
あとこっち見てるあの黒い靄はなんぞ? ティリティさんの知り合い?
おっさん霊を殴って成仏させ、俺たちは工事現場内部へと入る。
こちらの様子を見ていた黒い何かが揺らめくのが分かったが、攻撃してくる気配がないので放置する。
ん? 今なんか膜みたいな何かを突破した感覚が……気のせいか?
「どこから探索する?」
「本命は中じゃろ。まずは外側ぐるっと回るかの」
「了解、あ、頭上にも注意しとけよ。多分トラップで鉄骨落ちてきたりするぞここ」
「落下してくるなら私が止めるよマネージャーさん」
水って鉄骨止められる強度あったっけ?
うん、期待はしないでおこう。なんか普通に気を抜いてたら死に戻りしそうだ。
「よし、そんじゃ気楽な探検といこうか」
今度は闇のゲーム大会みたいな濃厚なモノじゃありませんようにっ。




