419.首謀者
「やぁ、ようこそツチミカド君」
なんか普通のおっさんがタキシード着て待っていた。
首謀者の居る部屋に向かってきたんだけど、なんだこのおっさん。
普通過ぎてちょっとどう反応したらいいか困る。
室内は真っ暗な何もない四角い部屋。
正直ずっとこんな場所にいると思うと気が変になると思うんだけど。このおっさん普通にここで待ってたんだよな。ちょっと精神的にヤバい人かもしれん。
というか、このおっさん微妙に光ってね? そうだよな、ここ真っ暗だもんな。俺らも自分以外が見えない状態のはずなのにおっさんだけくっきり見えてるもんな。このおっさん普通のおっさんだけど異常なおっさんだった。
「すでに理解はしているようだね。私と敵対することは無意味だよ。君は罰ゲームを回避できたようだが、他の彼らはまだゲームに囚われたままだ。私と敵対すればことごとく記憶を失い路頭に迷うことだろう」
「なるほど、全員を人質に取るわけだ。なかなか外道だなぁあんた」
「はは、君には負けるよ。まさか道を踏み外した者を実際に見ることになるとはね」
何でその称号きちゃった!?
ほんと変な称号が普通に前面に勝手に出てくるのどうにかしてほしいな。
いらない称号多いんだよクソッタレ。
「さて、それを踏まえて聞こうじゃないか。何をしにここに来たのかね?」
「あー、それは、とりあえずシルビアさんが用事あるってのが一つ」
と、シルビアさんの名前を出したことでおそらくイベントが発動したっぽい。
シルビアさんが前に出てくる。
少しためらい気味に、でも意を決したようで、声を出す。
「お父さんっ」
あ、そういう関係!?
どうしよう、娘さんテイムしちゃってるんですが。
こ、これって娘さんを僕にください、とか言っておいた方がいい!?
「ほぅ、誰かと思えばシルビアか。随分と大きくなったじゃないか、誰かと思ったよ」
「待ってて。私、必ず助けるからっ」
助ける? なんでさ?
いや、待てよ。
この状況で父親、助ける。
黒い世界に存在する人だけど普通じゃないおっさん。
……俺の迷探偵が唸りを上げているぜ。
しかしそういうことならば! 闇のゲーム……
「父さんを返しなさいっ闇の」
「馬鹿め、罰げー「発動!」なにぃ!?」
あっぶね、なんとなく戦いになるか向こうから約束破るだろうなと思ったから小さく呟くように闇のゲーム発動させといてよかった。あとすでに部屋に入る前に設定しといてよかった。
視界が滲む。
目を開くと、闇のゲームステージに辿り着いていた。
相手は見えないけど、仲間は近くに皆いる。
声だけは聞こえるから会話をしておくか。
「こ、これは!?」
「さぁ、闇のゲームを始めようぜ? まずは勝敗条件を決めよう。俺が勝てばその体から出ていけ首謀者、そしてお前の闇のゲームは接収する。俺たちの仲間に構うな。そして二度と闇のゲームに関わるなクソ野郎!」
「き、貴様! こ、このような外道なゲームを選んでおいて、そこまでするか!」
「ハッハァ! 外道同士仲良くしようぜぇ相棒。さぁ、お前さんからの罰ゲームを教えてくれや」
おっと思わず外道顔しちまってたぜ。
「ぐぬぅ……貴様だ。貴様の全てを奪ってやる!」
いいぜ、対価確定だ。こちらの条件はシルビアの父さんを操っている首謀者からお父さんを回収し、首謀者を闇のゲームに関わらせない、あとヤベェ闇のゲームをさっさと接収しておく。対するは俺の体を奪ってシルビアのお父さんみたいな扱いをするつもりらしい。
さぁ、始めようぜ。お札ゲットゲームを!!
敵、首謀者一人。味方、テイムキャラ全員と俺。
どれだけ取れるか、勝負だ!!
「オキナ、そっちで両方の状況見れるだろ。こっちがヤバそうなら教えてくれ」
「かしこまりましたツチミカド様。あああ、ゾクゾク致します。ここで私を頼るという一見他人を頼っているように見えて、本当に私が裏切っているかの確認までなさる外道オブ外道! ここまで徹底した外道ぶりに私、歓喜で震えておりますぞーっ!!」
え、いや、普通に頼っただけなんだけど……
なんか勝手に深読みしてしっかりと教えてくれるようだから、ラッキーかな。
よく考えたらこいつがここで裏切って首謀者側についてた場合、首謀者がなんかチート能力使ってても教えられずにいる可能性もあったのか、ヤバかったかもしれん。
お札が空から降って来る。
二度目ということもあり、皆効率のいい取り方で動き出す。
俺も慣れたからな。ここは沢山とってやんぜ!
ヒャッハー、一枚げっとぉぉぉ? 何で逃げる!?
ああ、クソ、なんでだよ。
コツは、コツはわかってるんだっ。
なんでコツがわかってるのに取れないんだよ!?
ああ、クソ、終わっちまう。
もう終わりなのか。
まだ、まだあと一枚空を舞ってる。
俺だ。俺が取る! 俺があぁぁぁぁ!!




