415.真・闇のゲーム大会・21
「ぬああああああああああああああっ」
違った。俺は勘違いしていた。
これはバイオなハザードゲームじゃなかった。
両手にレーザー銃を次々放ってはアイテムボックスに入れて新しいレーザー銃を手にまた撃ちまくる。
360度エイリアンだらけ。
何だこの密集地帯!?
そう、これはバイオなハザードではなかった。
あれはまだ逃げたりリロードする時間があるだけマシなのだ。
そう、これは魂〇羅だ。スピリッツだ。
自分中心に迫りくるエイリアンの群れを銃器で粉砕していく〇斗羅様だ!
銃が自前のレーザー銃だけど、普通に拾ってるだけで戦ってたらもう詰んでただろうけどっ、そんなことはどうでもいい。
全然進んだ感じがしねぇ。
ボスはどこだ。さっさと潰して脱出しないとエイリアンどもに食われちまう。
ここで死んでも戻るだけだが、さすがにちょっといただけねぇ。
負けたら真鍋が罰ゲームだ。
真鍋のためにも、負けるわけにはいかねぇんだぁー。なんつってぇ。
ぬああああああああああああああっ、なんで俺の方だけこんなに多いんだよこいつら。
詰む詰む詰む……って、まさかそういうことか。
これが最上優位のイベントってことか。
あいつの方はほとんどエイリアン出てなくて俺の方ばっかこんな化け物だらけなのか。
つまり、あいつは順調に脱出口に向かっていて俺は目の前に見えるのに、負ける可能性が高いってことか。
そうか、そうかよっ。
それが答えか闇のゲーム運営共っ。
俺は一応正々堂々戦うつもりだったんだ。
そっちがその気ならこちらも奥の手を使わせて貰うっ!!
「『来てくれトンカラトン』」
俺はトンカラトンの印籠を掲げて告げた。
その刹那。どこからともなくうなりを上げて迫りくるエンジン音。
「おーおー、おもしれぇー場所に呼んだなクソガキ!」
俺に噛みつこうとしたエイリアンをバイクで真上から轢き飛ばし、俺の目の前に現れる包帯男。
日本刀を掲げた強力な助っ人は、闇のゲーム世界にすらもやってきてくれたのである。
「オラ、テメェら、トンカラトンと言えやァ!!」
しかし、エイリアンたちが答える訳もなし。
一応、トンカラトン、と小さく呟いておく。
「お前にゃ言ってねぇぞ?」
「一応言っておかないと斬られるかなと思いまして」
「はっ、まぁいい、楽しい楽しい殺し合いの前だ、見逃してやんぜぇ」
トンカラトンがバイクを走らせ次々に斬り伏せていく。
斬られたエイリアンたちはトンカラトンへと変化を始め、加速度的にトンカラトンが増えていく。
「オラ、どうしたテメェら、エイリアンが聞いてあきれんなァ!」
日本刀一つで次々エイリアンを切り伏せるトンカラトン。
今更だけどこの助っ人めちゃくちゃヤバすぎだと思うんだが、いや、確かにシークレットな味方な分マシだけどさ。戦わなくてよかったよ本気で。
なんで数十体近いエイリアンの群れに突っ込んで無傷で全滅させられるんだよ。化け物か!
しかもトンカラトンがどんどん増殖するせいでこの周辺のエイリアンは一気に数を減らし、逆にトンカラトンが群れを成し始めている。
斬れば相手をトンカラトンにする怪異対ただ数が多いだけのエイリアン。どちらが勝つかなんて明白だった。
あとはトンカラトンさんが二列になって受け止めてくれている合間に出来た道を走ればいいだけだ。
「行ってきなヒロキ!」
「はいっ」
何だこの感覚。
この頼りがいのある感情。
それは……そうだ。先輩。
そう、これは頼れる先輩との会話だ。
先輩方に託されて、後輩が必死に走り抜ける。
ゴール地点はすぐそこだ。
すでに道は出来ている。
トンカラトン先輩たちが作ってくれた道が!
「いっ、っけぇぇぇぇぇ――――っ!!」
「負ける、かあぁぁぁぁっ!!」
なんだと!?
げぇ、最上、なんでここに!?
ヤバい、一足あいつの方が早い。
ゴール地点にあいつの方が早くついちま……
「トンカラトンと、言えぇぇぇ!!」
「トンカラトンっ」
思わず言っちまったじゃん先輩!
どーすんの、また一歩遅れ……えぇぇ!?
「オルァ!」
「え? ぎゃあぁ!?」
トンカラトン先輩まさかの暴挙。最上を真後ろから切り裂いた。
とはいえ背中を薄皮一枚斬られた程度。最上は気にせずゴール地点に手を伸ばす。
くそ、ダメだ間に合わないっ。
伸ばされた手が、ゴール地点へと触れる。包帯塗れの腕が……ん?
「っと、こっちじゃねぇよなぁ!」
包帯塗れの日本刀を持った男がゴール地点に到達する直前、踵を返してエイリアンの群れへと切り込んでいく。
……ん?
俺は走るのを止め、周囲を見回しながら歩く。
エイリアンがいっぱい、同じくらいにトンカラトン先輩がいっぱい。
あとはゴール地点まで開かれた通路だけ。
俺は歩いて、ゴールに辿り着く。
視界がゆがみ、元の世界へと戻るのだった。




