399.真・闇のゲーム大会・5
「さて、お目汚しを致しました。説明を開始いたします」
そうだった。メリッサさんの闇のゲーム説明前だったな。
俺たちの視線を再び集め、おかめが告げる。
「メリッサ様の闇のゲームはペイントショットです。ゲームが始まると皆さん別々の場所に飛ばされます。武器は水鉄砲が一つ。道中にある宝箱から銃や弾の補充をして相手の装備にある的を三つ、ペイント弾で汚してください。三つともが汚れてしまった方から脱落、最後の一人になるまで戦い、勝者のみ勝ち抜け。次の試合は勝者のみ抜けた状態で行っていただき、最後の二人で戦った敗者が罰ゲーム対象者となります」
ほー、今回は一度負けても問題はないのか。
全体のゲームを通して負け続けると罰ゲーム対象になるらしいけど。
実際にやってみましょう、ということで、メリッサさんが闇のゲームを起動する。
一応これの担当だし、最初はメリッサさんの一人勝ちかな?
闇のゲームが開始され、視界が一瞬滲むように変化する。
次の瞬間には見知らぬ地面の上に立っていた。
結構広いスペースだな。
目の前には小高い丘が見える。
左右は森だな。
自分の容姿も変わってる。
いや、容姿というよりは装備か。
手には水鉄砲。しかも夜店とかで売ってるようなちゃちぃ奴だ。
内部には色付きの水。試しに撃ってみるのもいいけど、もったいないので使わないでおく。
服装も変わってるな。
この感じから言って俺の頭と心臓、あと背中に一つか。
サークレット的な装備とミリタリージャケットっぽい奴の胸元と背中に三つの的が書かれている。
決して小さくはないが大きすぎることもなく、狙って撃てば当たるけど中距離くらいだと外れる可能性もある、くらいの小さめの的である。
他の装備は一つもない。
心もとないなこれは。
早速移動してアイテム探すか。
俺は周囲を確認し終えると、すぐに移動を開始する。
移動すると敵と出会う可能性が高まるが、まずはそれなりの武器を手に入れないと話にならない。
森の中へと入る。
周囲を警戒。
んー、一応危険な兆候はなさそうだぞ。
索敵も看破もちゃんと機能してるみたいだから結構有利なはずだけど……お、なんか地面に埋まってる?
宝箱じゃん。ラッキー。えーっと、おお、ガトリング砲だ。
手動式で一瞬で大量のぺインド弾を放てる奴だ。とはいってもタンクが空だけど。
あ、そうだ。一応司会者に質問したいんだけど、出来るのかなこれ?
「可能でございます。ツチミカド様、質問したいこととは何でしょう?」
うお!? まさか誰もいないところから声がかかるとは。
まぁいい、とりあえず会話可能だってなら質問いくつかさせてもらおう。
「とりあえず、入手アイテムはかさばるからアイテムボックス入れてもいいのかな?」
「構いませんが、ゲーム終了後にアイテムボックスから自動で削除されます」
「ほほぅ、ではアイテムボックス内のアイテムの使用は?」
「禁止されておりません、が、自宅転移系アイテムなどを使用された場合保証は致しかねます」
「なんでもできるってことか。じゃあ、一応聞いておいた方がいいかな。こういう場合はどうだろう?」
俺は質問をした。
多分聞いてた奴がいれば外道とか人でなしとかお前に常識はないのかとか抗議してくるんだけど、ルールに書かれてないんだからやってしまってもいいのだろう?
「く、ふふ、素晴らしいっ、まさかこのゲームでそこまでの外道行為を行おうとは、私興奮してしまいます。アナタはまさに闇のゲームに真に選ばれたお方のご様子。不肖おかめ、貴方様を応援させていただきますよ。何と禍々しき思考の持ち主でしょう。ふふ、うふふふふふ」
いや、このくらいは普通に皆気付くだろ。
プレイヤーなら特にやってても不思議じゃないぞ。
もしかしたら不正扱いになるかと尋ねてみたけど普通にオッケーだったし、だいぶルールがばがばだよな。
えーっと弾の補充はあっち側か。誰か待ち伏せしてる可能性もあるから慎重にいかないとな。
おっと、視界にあった生存者が9から8になったな。
誰かやられたっぽい。
お、みっけ。ぺインド弾補充は泉で水を汲むことで補充できるらしい。
泉の水が色付きなのでペイント弾になるのである。
周囲を見回してっと、良し今のウチにガトリングを補充だ。
背後にあるボトル部分を外して水を汲み取る。
これで満杯。ふっふっふ。まずは試し打ちと行こうじゃないか。
さて、犠牲者君はどっこかなぁー。
「死ねっ」
「おっと!」
補充を終えた瞬間、気配に感アリ、ってなもんで即座に飛びのく。
あれは、シルビアさんか。
「ペイント弾では死なないぞシルビアさん」
「ん。知ってる」
知ってても発射の瞬間言っちゃったわけですか。
まぁいい、可愛い娘だとしても今は勝負の時間。
「可愛い娘に手をあげたくはないが、これもゲーム、食らうがいい!!」
「が、ガトリングは卑怯!?」
慌てて逃げるシルビア、その背中にある的がペイントでべったりと汚れる。
「これはひどい……」
「背中向けた状態だとさすがにこれ以上は無理か。一度撤退だな」
「なんでそんな武器持ってるの!?」
泉を挟んで向かい合った俺に、物陰に隠れながら尋ねてくるシルビアさん。
「そりゃアイテムとして見つけたからだけど」
「なんて運のいい……」
とはいえ、これは面倒な膠着状態だな。下手に動くと逃がすし、反撃される恐れもあるからここから動けない。相手も同じだろう。
第三者によって均衡が崩されるまではずっとこうなるはずだ。




