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38.神隠し隠連暮(かくれんぼ)・2

 違和感を抱えたまま、俺達は神社へ続く階段に辿りつく。


『変だわ。神社が近いのに私、何のダメージもないわよ?』


『おねーさんもお肌にちりちりしてた感覚、全く無いわねぇ』


 というか、周囲の木々がなんかおどろおどろしい感じなんだけど。

 鴪貫太がどんどん進んで行くせいで皆に注意喚起する訳にもいかないし、というか、多分イベントだから何言っても止まってはくれないだろう。

 こんな場所でかくれんぼとか絶対ヤバいだろ。あ、いや、稲荷さんの神社だから大丈夫だとは思うんだけど……


「おい、どうなっている!?」


 が、階段を上がった先、鳥居を見た稲荷さんが焦った声を出す。

 なぜなら、鳥居は見事に粉砕されており、半壊した柱が左右に取り残されているだけだったからだ。

 明らかに経年劣化している鳥居はどう考えても先程まで居た稲荷神社の鳥居じゃない。あるいは、あの鳥居が何十年、何百年経ってようやく今、目の前にある鳥居みたいになったと言われた方が信じられるくらいに崩壊している。


「待て、アレが神社か!?」


 稲荷さんが驚愕するのも無理は無い。

 崩壊した鳥居を抜け、所々壊れた石畳を進んだ先にあったのは、朽ちた神社。

 どう考えても稲荷さんの加護などありませんといった荒れ具合。

 さらに欠けた狛犬と頭を失った狛犬。稲荷じゃ……ない?


「いかん、いかんぞヒロキッ、ここは東の山じゃ!」


「え? 山に方角とかあんの?」


「主のいる小学校から向えるのは西の山と東の山。ワシの居る山は西側じゃ! ここはマズい、神の加護が消えておるっ、何が居るか分からんぞ、く山を降りよっ」


 これ、マジでヤバい感じのイベントじゃん。

 しかもヤバいのは俺が帰ったとしても他のメンツは絶対にここで遊ぶのが確定してるってことだ。

 後味悪すぎるだろ。俺以外の奴が行方不明になるとか。

 折角知り合った朱莉まで、行方不明だぞ、さすがに精神的にクる。


「テケテケさん、稲荷さんは索敵お願い。ツチノコさん熱感知、で皆を見ててくれ。ハナコさん、覚悟を決めるよ。彼らを、見捨てるのは後味が悪すぎる」


『ふふ、仕方ないわね。何かが起こるまでは遊びなさい。私達も全力でサポートするわ』


「ヒロキくーん、早く早くっ。ジャンケンで鬼決めるよー」


「あ、ああ。すぐ行く」


 俺は不安を覚えながらも朱莉の元へと向う。

 ジャンケンが始まったのでチョキを出す。

 朱莉がパーで鬼となり、他の皆はまるで謀ったかのようにチョキだった。

 おそらく俺の出したモノに反応して皆の出すモノも変わるんだろう。

 つまり、ここは朱莉が鬼になるのが確定しているイベントって訳だ。


「ありゃー、私が鬼かぁ。じゃあ皆隠れてー」


 皆楽しそうに走り始める。

 朱莉は朽ちた神社の壁に向って、いーち、にーっと声を出し始める。

 さて、隠れるといっても何処にかくれればいいのやら。


 んー、とりあえずあの辺りに隠れておくか、いきなり見付かっただけで即死フラグにはならないでしょ。

 最悪の場合稲荷さんが反応してくれると信じて……

 茂みに飛び込み息を殺す。

 ふぅ、この世界だと幽霊とか普通に居るからかくれんぼとか滅茶苦茶恐いんだが。

 ったく、何年生きてんだよ俺。でも恐いもんは恐いし。


 っと、そうだ。スキルを変えとこう。

 幸運と霊視はそのままだな。ラッキースケベも一応外すの恐いからこのままで。

 テイムは今はいいだろ。蹴りや無手も一端しまおう。

 新しくセットするスキルは霊感、熱感知、早九字だ。


 稲荷さんの神社には九字切りはマズいらしいが、こっちの神社は朽ちて清浄さが無くなっている。ならば、縁切りをしたところで意味はあるまい。むしろ悪い縁だけを切れるはずだ。

 問題は、人に向けて九字切りした場合だろう。

 悪い縁ばかりかこれからの良縁まで切り裂いてしまうらしく、結婚相手に恵まれなくなり金運に見放され、仕事は手に付かず、悲惨な人生になるらしい。

 稲荷さんに散々怒られたので九字切りは人には絶対しないようにしないとな。


 クラスも拝み屋にして、二つ名はお化けなんて怖くないにしておく。

 塩の準備も万端だ。

 これでヤバい霊障が起こっても十分対処できるはず。


「もーいーかーい」


「まーだだよー」


 あれ? まだ誰か隠れてないのか。

 しばらくの後、また朱莉の声が聞こえる。


「もーいーかーい」


「まーだだよー」


 ……あれ? この声、誰の声だ?

 今いる小学生たちの声、じゃないような?


「もーいーよー」


 声が聞こえた瞬間だった。

 熱感知に反応していた七つの熱源、その一つが……消えた。


「シャーッ!?」


 ツチノコさんが反応する。

 俺も即座に動こうとして……


「あー、ヒロキ君みーっけ!」


 何も知らない無邪気な声で、朱莉が俺を見付けたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 怪談も日常の中の非日常だからね、ハナコさんとかテケテケと同じ類の何かなのかな。
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