385.闇のゲーム大会・4
「馬鹿な、一枚目は私の有利に、なぜ、負け? ありえん……」
目を血走らせ頭を抱えた桜井がブツブツとつぶやき始める。
皆揃ってやっちまったなぁ、って顔をしてるのは、自信満々に潰そうとして潰されたから、じゃないらしい。
よくよく話を聞いてみれば、スリーカードで喜んでた俺だったものの、最初の一枚目、つまりターン時点で桜井はすでにストレートを揃えていたのだ。
ってことは……あれ? 次にA来てなかったら敗北してた?
めっちゃ紙一重じゃないですかやだー。
幸運さんが仕事してくれたらしい。
とりあえず拝んでおこう。
幸運さんありがとう。
「では桜井さん、覚悟はいいですか?」
「っ!?」
「罰ゲームッ!!」
「あ、ああ。ああああああああああああああああああああああッ」
ん? なに? どった? ずびしっと指を差された桜井が急に叫んでその場でびっくんびっくんし始める。
あ、これ、もしかして精神に作用する感じの罰ゲームか。
罰ゲームが終ったらしい。
魂が抜け去ったような廃人になった桜井がその場に座り込む。
「では皆さまあちらの通路をお進みください。次のゲームが待っております」
あ、一回一回部屋変えるのか。
涎垂らしたままの桜井さんだけをその場に残し、俺たちは新しい部屋へと歩き出す。
ってことは、一回一回誰かが部屋に取り残されるってことか。
「しっかし、あんたホント神引きしたわね。あいつの闇ゲーム特性、ほぼ確実に最初の一枚目は自分に有利なカード来るようにする奴だったわよ」
あー。桜井が自信満々だったのってそれのせいか。
「ああいうときはゲーム所持者を先に上がらせて残りで潰し合うのが常道だ。運が良かったな坊主」
「そ、そうっすね、いやー、幸運でした」
「どうせスリーカード揃っていけるとか思ったんだろ。四枚目が来てよかったな」
幸運さんが仕事したとは言わないようにしておこう。
おそらく何十回くらいまでなら結果は同じになってはずだ。
俺の幸運値はかなり高いはずだし、早々桜井には負けなかったと思われる。
「着きました。数分の休憩をはさみますので、しばしの御歓談を」
そう言って、次の通路に消えていくオキナ。
残された俺たちは何もない部屋に適当に座り始める。
あ、何もないわけじゃないな。冷蔵庫が一つあって飲み物が入ってる。
「お、気が利くな」
あ、普通に飲むんだ。
真鍋が普通にジュースを取り出す。
ペットボトルのコーラらしい。
飲まなくてもいいんだけどせっかくだし一本貰おうかな?
金城も飲みだしたし。俺もーっと。
「あ、つっちーあたしもコーラ」
はい? つっちーって俺か? ツチミカドだから?
「ほいよ」
「さんきゅー」
「いや、普通に持っていくのかよ」
「はは、さっきまで敵対しそうだった二人だから絶対ふざけんなとか喧嘩になると思ってました」
「俺は女の子にはやさしーんだ」
「はっ、外道少年が何か言ってやがるぜ」
なぜ貴様らがその称号を!? 今の称号にソレは付けてないはずなの……ぎゃあぁ!? 称号欄のお化けなんて怖くないが外道少年に換わってる
「ま、あんたがそれなりに運がいい、ってことは認めてあげるわ。桜井のおじさんかなり厄介そうだったからさっさと潰してくれてありがとねー」
「あー。そりゃ確かに思ったな。あのおっさん絶対理詰めで潰しにかかってくるから一番最後まで残ってくるだろって思ってたんだよ」
「確かに、彼は厄介そうだったな、なるほど、そう考えればツチミカド君の勝利は我々にとっても良い結果だったわけか」
おいおい、こいつら蹴落としを喜んでやがるじゃないか。俺以上の外道ばっかりじゃね?
というか、なんかゲーム始まってからウチの付き添いたちがおとなしいな。
皆どったの?
「……」
妖精さん? あれ? 皆なんか表情抜け落ちたような感じになってね?
『ようやく気付きましたわねヒロキ』
あ、ヘンリエッタさんだけ問題なしか、霊体だからか?
『ゲームの開始と同時にオキナさんと目があった皆がこのようになってしまいましたのよ、どうやら意識を奪われていると思われるのだけれど……』
マジかよ!?
いつの間にそんなことに!?
「んー。しかし、桜井のゲームはどうなるんだ? 回収はされるはずだが、ツチミカド、お前の闇のゲーム増えてるか?」
「え? いや、テキサスホールデムだっけ、増えては、ないな」
そういえば闇のゲームによる執行が終ったら所持者が変更されるんじゃ?
大会中は違うんだろうか?
「そうだ、ヘンリエッタさんスキルない?」
『え? えーっと、あ、ありますわねテキサスホールデム。闇のゲーム卓もございますわ』
なんでそっちに行ってるのかは謎だけど、とりあえず味方の誰かに闇のゲームが渡ったらしい。
皆さんに告げるとなぁんだ。と興味をなくしたように話題を変えてしまった。
うーむ。それにしても身の上話する間柄でもないし、ここで潰し合うから会話が弾まんな。




