382.闇のゲーム大会・1
「皆さまこちらへ」
施設内に入ると、目の前にカウンターがあった。
カウンター内にいる黒服が自分の元へ来るように促してくる。
俺たちがそちらに向かうと、黒服が深々とお辞儀をして出迎えてくる。
「失礼いたします、招待状はお持ちでしょうか」
「これか?」
「はい、拝見しました。ただ、一人多いようですが?」
黒服は俺たちを見て小首を傾げる。
「こっちは参加者らしい。入り口で会ったから一緒に来たんだ」
「おや、それは失礼を。お嬢さん、招待状はございますか?」
「ひゃぃっ! こ、こちらで、はわわっ」
鞄に慌てて手を突っ込み、取り出そうとして中身をぶちまける少女。
さすがに怯えすぎじゃね?
仕方ないので俺は落下物を拾ってやる。
少女はあわあわしていたのでとりあえず手紙見せとけと指示をだして落下物は俺たちで拾うことに。
うわ、なんだこれ? 血まみれのナイフあるんですが?
まぁ私物らしいし、まとめて渡そう。
やはり闇のゲーム持ってるだけあってこんな気弱そうな少女でも気を抜くわけにはいかなそうだ。
全部拾い終えて招待状を見せ終えた少女に荷物を返す。
「ありがとうございますっ、ありがとうございますっ」
そこまで感謝されることじゃないんだけどなぁ。
っていうか普通にナイフしまったな。
つまり、これは俺試されたってことでいいんだろうか?
気付かなかったというよりは気付いてたけどあえてスルーしておく、って態度の方がよさそうだ。
「ではお二方。あちらの抽選をお引きください。出た番号のルートに向かってください」
ありゃ、ということはここで別れる可能性もあるのか。
俺と少女は思わず互いを見る。
「え、こ、ここから一人、ですか?」
「みたいだな。出来れば一緒に行ければ嬉しいけどね、これは無理そうだ」
番号の数は9まで。つまり9×9の81通りある中で9通りしか一緒に居られる番号はないってことになる。
幸運さんが仕事したら一緒になるだろうけど、いや、むしろ幸運さんが仕事して別の場所に行くってことになるなら、一緒に向かう方が危険ってことだよな。
どっちだ。どっちになる?
「1番です! やった」
「俺は5番だな」
「がーん!?」
なぜ1番で喜んだのかは不明だけど、とりあえず別々の道を行くことになるようだ。
これは逆に警戒しとかないとダメだな。見た目に騙されて庇護欲のまま助けようとしたら死ぬ可能性が高い。
こいつは、危険な存在だと認識しておこう。
「うぅ、一人は嫌だよぅ……」
「一緒に行ってやりたいけど、黒服たちがダメだししてきそうだしなぁ……黒服に付き添い頼んでみるか?」
「……一人で行きますぅ」
さいか。
「そっか、じゃあ、多分また後で。気を付けて行けよ」
「ふぃぃっ」
さて、んじゃま5番のルートを行きますかいな。
俺は六人全員揃っているのを確認して5番ルートへと向かう。
彼女は無事行けるだろうか? あるいは、あの姿こそがブラフだろうか?
どのみち、出会うならばこの道の先にきっといる。
その時、彼女は味方だろうか? それとも……
通路をしばらく歩き続けると、大広間へと出た。
そこには五人の男女が暇そうにしていらっしゃった。
うーむ、プレイヤーはいなさそうだなぁ。
「おー、お前さんも招待客か。ってか律儀に知り合い五人も引き連れてきたのかよ?」
金髪のお兄さんが呆れた口調で語りかけてきた。
「あはっ、これから何が起こるかわかってたら普通知り合い連れてきたりしないっつーの、バッカでー」
ぐぅ、ちょっと可愛いからってメスガキムーブかまして来やがって。
どこのギャルですかね。そこのえっと……何その赤やら緑やらピンクやらごちゃまぜの髪。
マーブル模様の髪を持つソバカス娘がくけけと笑う。
「どうせすぐ脱落する」
「君、来て早々可哀想だけど、まぁ仕方ないよ」
「どのみち闇のゲームで敗北すればそこで終わりだ早いか遅いかの違いでしかない」
なんか全員からお前さっさと死ぬ奴だろ扱いされてるんですが?
「ほほぅ、言ったなソバカスマーブル娘」
「ま、マーブル娘言うな!? テメェぶっ殺すぞ!」
「はいはい、たっけて殺されるー。で、なんだ? 早速闇のゲームするのか?」
「はっ、じょーとーだテメェ、あたしが勝ったらテメェは下僕な!」
「じゃあ俺が勝ったら?」
「奴隷でもなんでもなってやんよ。オマエなんぞに負けるこたぁ一切ねーけどな!!」
メスガキはそう告げて、懐から何かを取り出す。
「闇の……」
「そこまでです! 勝手にゲームを開始されては困りますな」
「チッ」
黒服、ではなくなぜか翁面を被った男が俺たちがやってきた通路ではない場所から現れる。
入ってすぐだったので見てなかったけどそっちにも通路あったのか。




