377.宇宙船を探して・8
火炎弾がアイネさんのお兄さんにぶち当たる。
耳障りな悲鳴を上げて体を捩るお兄さん。
ゼリー状の体の一部が吹き飛んで消失する。
これは、すべて削り切ったら勝てるか?
風の魔法とかどうだ?
エアカッター!
おお、結構削れたぞ。
ならロックフォール。
おお、岩が当たった場所がごっそり削れた。
ライトニングは?
ダメだ、ビリッと来てるみたいだけど消失は見えない。
あ、そうだ、太陽嫌がるなら聖属性は? ホーリーレイ!
「GYIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII!?」
おっと、一番ダメージあったっぽいぞ。
弱点じゃないけど苦手属性と見た。
ならホーリーレイを連発だ!
「よし、ヒロキが潰しにかかってる。ルログ人はこっちで受け持つから防御気にせずやっちゃいな!」
任せろニャルさん。
防御は本気で任せるぜ。
そこまで気にする余裕はなさそうだし。
しかし、水の中じゃなくてよかったな。クトゥルフの眷属なんて海にいてなんぼだろ。
こんな宇宙船の中じゃ倒してくださいって言ってるようなもんだぞ。
そらホーリーレイ。おっと、かなり削れたぞ。
スライムくらいの体格になったな。
もう攻撃手段もなさそうだ。
さっきまでかぎ爪使って攻撃してきたり、動きこそ遅いが押しつぶしにかみつき、拳と肉弾戦を仕掛けてきていたのだけど、俺の反射速度についてこれてなかったのでことごとく空ぶっていた。
稀に魔法っぽいのも唱えてきてたんだけどホーリーレイで削ってしまえば呪文もキャンセルできたっぽい。
そのうちに腕が消滅し、足が消え去り、体の半分以上が消え去った今の状態では満足に動くことすらできないようだった。
ここまで破壊すればもう攻撃手段は無い、と思ったんだけど、回復能力がかなり高いらしい。
少し放置しただけで腕が生えて足が生えそうだったのでさらに魔法で回復の芽を摘んでいく。
「兄様……」
消失寸前、アイネさんがこちらに視線を向けて呟く。
しかし、すぐに俺に目を向け、頷いた。
トドメを刺してくれ、ということなのだろう。
「安らかに眠れ、兄さんッ」
「ヒロキの兄じゃないでしょっ」
「これが最後の、ホーリーレイ!」
すでに形すらも保ててなかったトゥールーの奴隷は、一言すらも悲鳴をあげれず、無言のまま消滅していった。
「兄様……やすらかに」
そして、アイネさんが睨みつけるはボスとして存在していた一回り巨大なルログ人。
「もうルログ人も残り少ない。我は大物を狙うぞ這い寄るモノ!」
「あいよー」
「共闘するぜ」
「いらんが?」
「そこをなんとか。イベントこなさせてください」
「チッ、仕方ない。勝手に手伝え」
自分一人で問題ないけど手伝いたければ手伝えってことらしい。
当然イベントをこなして何かしら貰えるはずなので遠慮なく手伝うことにする。
俺たちがボス向けて動き出すと。ボスの方も動き始めた。
なにやら杖を手にして、呪文を唱え始める。
魔法、使えんの?
あ、いや、違う。魔法陣?
「あ、これ面倒なタイプかも」
「ニャルさん?」
「多分あいつルログを呼ぼうとしてるわ」
ルログ? ルログ人じゃなく?
「ルログは双頭の蝙蝠よ」
「はは、随分と他人事を言う。いいか人間。ルログはな、ナイアルラトホテップの側面という噂だ」
へー、ないあるらと……それ、ニャルさんじゃね?
「おい、そこの這い寄る混沌、顔背けんな」
「はは、なんのことやら……」
「神格としてはかなり低い部類だが、神が来れば少々面倒なことになるぞ」
「じゃあ召喚終わる前に潰すしかないね。テインさん畳み掛けよう」
「癪に障るが同感だ」
なんとかテインさんとの共闘イベントができそうだ。
あとはツチノコさんの進化らしいんだけど、こればっかりはいつなるのか謎である。
「杖を狙え!」
「シャーッ」
「うあ!」
ツチノコさんのファイアブレスとグレートマンさんの光線が振り上げようとした杖に向けて放たれる。
どうでもいいけどあれ、グレートマンだしグレート光線でいいんだろうか?
「おっし、杖飛んでった!」
妖精さんは何もしてないだろ。
俺はレーザーソードで近接戦闘だ。
レーザー銃使うのもいいけど、せっかく共闘なんだし、隣り合って戦う方がそれっぽいよね。
「どるぁ!」
だんっと足を下ろし、掌をボスに押し当てたのはネネコさん。
おそらく発頸とか言う奴だ。ボスキャラのどこかよくわからない穴という穴から血と思しきものが噴き出す。
内臓潰したか?
「兄様の……仇ッ!」
そして真上からアイネさんの急襲。
って、お尻にあった針で突き刺した!? それもしかして産卵してません?
マダにーさんと同じ内側からぼわって奴だよな。
嫌だよもう見たくないよ。
「テインさん!」
「速攻で潰すぞ!」
だから、俺とテインさんはほぼ同時にボスルログ人を切り裂いた。




