373.宇宙船を探して・4
「珍しいわね、時の支配者がルログ人に捕縛されてるなんて」
「むぅ。少し油断しただけだ。まったく円の時間を支配する者と戦った後で奴らに襲われてな。まさか襲撃されるとは思っていなかった。しかし……人間などに救われるとは」
あれ? おかしいな。
助けたはずなのに憎悪の視線を向けられてますが?
「とりあえず俺らはこの宇宙船を鹵獲しに来たんです。アナタはどうします? 俺らはここの奪取を行うためにルログ人殲滅するつもりですけど。一人で帰るなら外まで案内しますよ?」
「いや、せっかくだ。同行させて貰おう。借りは返さねばなるまい。這い寄るモノに借りを作る気はないのでな」
「ひ、ヒロキ、さぁ早く奪取しに行きましょ!」
メリーさん、さすがに露骨すぎると思うんだ。
「うん?」
青い肌のお姉さんに近寄り耳打ちしておく。
「あの這い寄るモノさん、俺たちに正体隠してるっぽいんでメリーさんと呼んであげてください」
「ふむ? 理解しにくいが、奴はお前たちに同行しているが正体は隠しているのか」
「本人そのつもりらしいです」
「すでにバレているのにか? 随分と間抜けだな。這い寄るモノにしてはお粗末すぎる」
「それで、お姉さんはなんとお呼びすれば?」
「我か? 別にお前、やあんたでいいだろう。慣れ合うつもりはない」
「なるほど、了解です。じゃあジェーンさんと呼ばせてもらいます」
「待て、どうしてそうなる!?」
「名無しの誰か、つまりジェーン・ドゥ。なのでジェーンさんです」
「チッ、テインだ。テインとでも呼べ」
「了解ですテインさん」
「ふん」
なんか俺にだけ当たり強くないですか?
もしかして人間嫌いなのかな?
「しかし貴様。我の傍にいるのに嫌がらないのだな?」
「はい?」
「人間どもは死体安置所のような臭いがすると毛嫌いしてくるはずだが」
「んー、多分プレイヤーだからかな? 臭いは全然ないですね」
あまり臭いとゾンビとかとも戦えないから臭い関連の認識はあまりないのだと思う。
っていうか、あ、あるわ。デフォルト設定だと無臭になるようになってるだけで、臭い設定存在してるよ。
多分スイーツとか食事食べる時に匂いが必要になる人向けの設定だろうけど、いくらリアル設定が売りでも死体の臭いが嗅ぎたいとかいうプレイヤーはいないもんな。
「そうか、ならばまぁ、いいか」
「とりあえずこのUFO内ではよろしくお願いします」
「了解した」
俺たちは部屋を出て再び操舵室を探す。
ここら辺はそういう区画じゃないのかな?
研究施設が多い気がする。
居住区から研究区、次は動力区か操舵区か。
あ、違う、研究素材保管室だ。
無数の宇宙人と思しき残骸がホルマリン漬けにされておる。
「えげつなし……」
「ルログ人は危険ねぇ」
「ふん。人間とそう変わるまい? 知らぬ生物を解剖するのは人間も同じだ」
「普通に正論でびっくりだよ。一部人間ということにしてください」
「どうでもいい」
テインさんがそっけないです。どうしたらいいですか?
「いつものスケコマシ発揮してプレゼントでもすれば?」
「いつものスケコマシってなんですかね、まぁいい、とりあえず探索を優先だ」
―― 特殊イベントが発生しました! ――
―― 特殊イベントが発生しました! ――
―― 特殊イベントが発生しました! ――
―― 特殊イベントが発生しました! ――
―― 特殊イベントが発生しました! ――
なん、だと!?
ここで強化イベント!? きっかけはなんだ?
突然すぎて意味が分かりません。
―― 特殊イベント:アイネさんの知り合いを見つけよう ――
―― 特殊イベント:ネネコさんとルログ人で相撲して貰おう ――
―― 特殊イベント:ツチノコさんの進化を見守ろう ――
―― 特殊イベント:メリーさん?の正体を暴こう ――
―― 特殊イベント:テインさんとUFOの管理者を倒そう ――
テインさんまで特殊イベント入っとる!?
っていうかメリーさんの正体暴いていいの?
「イベント発生した」
「あら、そうなの? どんなイベント?」
「アイネさんの知り合いがここに囚われてるらしい」
「ホント!?」
「それからネネコさんはルログ人と相撲しろって」
「アレとか? できんべかぁ?」
「ツチノコさんは進化するのを見守ろうって」
「シャー?」
進化? といった顔で小首を傾げるツチノコさん。進化するつもりは今のところなかったようだ。
「あとテインさんとUFOの管理者倒そうって」
「私は貴様の仲間ではないのだが?」
「俺に言われても?」
「私たちは!?」
「そうよ。私たちにはイベントないの! 小型にもイベントをー」
「うぁ!」
いや、グレートマンさんは俺のテイムキャラじゃなくてマイネさんのでしょ。
イベントはそっちと起こしてください。
「私だけ三回連続何もなしは嫌よー、断固抗議するわ!」
二度あることは三度あるのだよ。諦めて。
「えーっとメリーさんは正体現わせって」
「な、なんのことですかーっ!?」
「もう皆にバレているのだろう這い寄るモノよ。そろそろ諦めたらどうだ?」
「は!? バレてるって、え? 皆に?」
俺たちを見回すメリーさんに俺たちはこくりと頷く。
「まぁ手伝ってくれてるし芽里さんとも仲良さそうだから本人から説明あるまではいいかな? って」
「ば、ばかな、私の完璧な擬態が……」
「いや、擬態って。まず芽里が普通の体で生活してる時点でメリーさん動いてるのがおかしいでしょうよ。お間抜けよね」
妖精さんもう少しマイルドに伝えてあげて?
 




