365.ロボット研究施設・3
「あの、教授がすみません、ご迷惑おかけしてませんか?」
「えっと、見学の許可はいただきました。最高責任者らしいですし、大丈夫、ですかね?」
「教授……はぁ、まぁ許可しちゃったのならしかたないですね」
ため息を吐いた西園寺さん、キャリアウーマンといった容姿端麗な苦労人の顔をしている。
出来る女の人っぽいけど振り回され気質のようだ。可哀想に。
「えっとアインシュタイゼン博士の助手をしています、西園寺凜々花です」
凜々花さんと呼ばせてもらおう。
俺たちはここに来た目的を二人に告げる。
エルエさんのパワーアップも兼ねていると知ったアインシュタイゼン博士は乗り気で、どのようなモノでも力に変えれるのか! と、年甲斐もなくワクテカしていらっしゃった。
「では、教授では説明が長くなりすぎると思われるので私がご案内いたしますね」
ご苦労おかけします。
俺たちは凜々花さんに付いて歩き出す。
まず研究所内に入って案内されたのは、工場のような場所だった。
旋盤やらボール盤などが置かれたどこかの町工場と思われる場所では、金属加工だけでなく溶鉱炉を使った金属成形までやっているようだ。
もしかして、使う金属全て自分たちで作ってんの!?
「ここは私たちアインシュタイゼンロボット工学研究所の資材作成室になります。金属のインゴットなどから製鉄、製ミスリルなどを行い必要な資材を作成、成形を行っています」
すっげぇリアル。ゲーム内で金属加工までできるのかよ。
っていうかその辺りはリアル追及しなくてもいいだろうに。
なんか火花散ってるぞ。目に悪そうだ。
次に案内されたのは組み立てを行っている設備だった。
組み立てと言っても簡易の小さい部品を組み立てている部署のようだ。
「ここは小型ロボット組み立て室となります。成犬型くらいまでの大きさであればここで組み立てを行います。ただし、精密機械などを搭載する場合は別室での作業となります」
つまり、ここは精密機械などを搭載しない物の外装組み立てとか、簡単なモノの組み立てに使っているんだろう。
目の前ではエアダスターと思しきものが作られていた。
あれって売りに出すんすか? え、今作ってるロボットに組み込む奴?
次に案内して貰ったのは知能機械系を搭載したロボットの組み立て室だった。
先ほどの室内と違うのは、安全のためにエアロック式になっていることだろう。
室内を分厚いガラス戸で見えるようにしているが、中には立ち入り禁止にされていた。
目の前では組み込みが終った人間大の掃除ロボット、ダイルンバー君1号が起動。ものすごい速さで動き出して組み立てを行っていた人たちを吹き飛ばしながらゴミを集めだしたところであった。
あれ、どうやって止める気だろう?
充電設備がないから内臓電力が終ったら止まる? あと5分ほど? 皆、死ぬなよっ。
内部で阿鼻叫喚している組立員たちに十字を切って俺は祈りを捧げる。
拝み屋として務めを果たさねばな。
っていうか、本当に放置でいいんすか?
あ、これマジで放置して次案内するつもりだ。
「こちらはドックとなっています」
「船でも建造してるんです?」
「ええ、宇宙船を建造中です」
マジで!?
「とはいえ、まだ浮き上がる方法すら不明の段階なんですけどね」
人類の英知はまだUFOにまでは届いていないようだった。
「残念じゃよ。宇宙人が乗っているとされる宇宙船でも研究できれば宇宙船の開発も可能だというのに……」
おい、それはイベントか?
俺の住居調べさせろと?
いや、むしろ新しいUFO見つけて提出してあげればいいだけか。
あとでグレートマンさんに聞いてみよう。
「知り合いに宇宙人専門に退治してる正義の味方いるから聞いてみましょうか?」
「ぜひ鹵獲してくれたまえ! 報酬は弾むぞ!!」
―― 特殊イベント・宇宙船の鹵獲が発生しました! ――
おっふ。
「博士のお願いは気にしなくていいですよ。一般人にそんなもの手に入れられるとは思えませんし」
あるんだよなぁ。実は宇宙船に住んでます。言わんけど。
「それでは次はこちらに」
ドックの隣に存在している巨大施設。そこは人型巨大機械製造設備だった。
まだ足元しかできてないが、これは設備投資とかすれば巨人作成が可能なのでは!?
しまったな、スクラップ関連は全部エルエさんのおやつにしちまったぞ。次に古代遺跡行くことがあったらこっちへの資材用にも残しとかないとだな。
あ、待てよ、エルエさんが要らんって言ってた資材が残ってたな。
俺はアイテムボックスから端材を取り出す。
キャタピラ、四足ギミック、モノアイ型ヘッド、二足ギミック。うん、残ってるのはこれくらいか。
モノアイヘッドだけ持っとこう。なんか自分で作りたいし二足ギミックもかな?
「ふむ。脚部装甲の参考になりそうだな。こちらに貰ってもいいのかね?」
「余ってますからいいですよ。巨大兵器開発に役立ててください」
俺とアインシュタイゼン博士はなぜか一瞬見つめ合う。
互いに手を出し、硬い握手を結び合った。待ってるぜ、同志よ!
 




