359.二つ目の七不思議・8
「おお、旧校舎出てる」
何が条件だったんだろうか?
まぁともかく、ちゃんと最後の七不思議である火だるまの人がいる場所に辿り着けるようでよかった。
俺たちは皆揃って旧校舎へと向かう。
ハナコさん、テケテケさん、アカズさん、妖精さん、モヒカンズ……ってあれ? ニノキンさんと人体模型君は旧校舎入らないの?
なんか普通に手を振って来る気無しって感じだけど。
「ごめんね。僕らは旧校舎には入れないんだ。理由はわからないけどね」
こくこくと頷くニノキンさんと理由を告げる人体模型君。
理由が理由になっていないけど、おそらくテリトリー的なモノなんだろう。
テイムしておけば入れるようになるはずだ。
まぁ二人を無理してテイムする気はない。
なので二人とはここでいったんお別れである。
旧校舎に足を踏み入れる。
とたんぎぃっと音をたてはじめる床板。
うわ、完全な木造建築だ。
っていうかここで火だるまになった人って燃え移らないんだろうか?
「どのあたりにいるのかしら?」
「そもそもこの旧校舎ってなんなんだろ」
アカズさんが旧校舎の壁に触れながら小首をかしげる。
しかし、すごいな、床も壁も天井も木造。
ここまで完全な木造建築は初めて見たかも。
そして暗いからめちゃくちゃ不気味だ。
何が出てきてもおかしくはなく、普通に浮遊霊が湧いて出てきている。
まぁ個々のレベル帯が20もないから近づいてきた浮遊霊は拳一発で消し飛ぶけども。
「幽霊が多いわね」
『んー、どうにもこの旧校舎自体が幽体みたいよ』
「よくよく考えたらこの旧校舎も大きな個室だよね。私のテリトリーには……さすがに無理か」
この校舎全てをアカズさんの個室化できれば攻略は楽なんだけど、ここの七不思議を攻略したって状況になるにはおそらく火塗れの幽霊を討伐するか仲間にすればいいんじゃないのか?
そんなことを話し合いながら一階の部屋を覗いていく。
青い火の玉が漂っていたり浮遊霊が襲ってきたりはするものの、普通の教室が多い。
音の鳴る廊下を終えて階段へ。
うぅ、なんか力加えたらぼろっと突き抜けそうな階段だな。
二階まで辿り着くのがちょっと怖かった。
というか、二階ヤバいな。ところどころ床が抜けてるぞ。
「げぇ、なんだありゃ」
「デケェ、あんな幽霊人間の霊じゃなくね?」
「わ、私ああいうガチムチ系ちょっと苦手」
「おい、素に戻ってんぜ相棒」
モヒカンが私とか言わないでくださる、ギャップがすごすぎるんですが。
というか、なんだあの筋肉達磨。
明らかに人間じゃないな。いや、人間として存在していたとしてもどこかのボクシングチャンピオンとかエクストリームチャンプとかのものすごい肉体を鍛え上げた存在だ。
彼は俺たちに気付き、ゆっくりとこちらへと振り向く。
ヤバいな、なんか無茶苦茶強そうだぞ。鑑定は……レベル54!?
……なんだ、雑魚か。
急に走り出すガチムチ幽霊。床を粉砕しながら近づいてくる姿に恐怖を覚えるが、俺はハナコさんの前に躍り出る。
『オオオオオッ!!』
雄たけびと共に拳を振り上げ突撃してくるガチムチ霊に、俺は掌を合わせる。
ものすごい衝撃波が吹き荒れ、俺の掌に倍はあろうかという拳がぶち当たる。
『……?』
ニィと嬉しそうな顔をしたガチムチ霊、こちらが肉塊になっておらず、ダメージもなさそうな顔だったのに気付き、怪訝な顔になる。
「どうした? この程度か?」
拳を握るように固定してやり、にやりと微笑む。
そりゃあそうだ。レベル54? 強いよな。初期値のプレイヤーなら逃げだすところだ。
まともにやっても敵いやしない。
でも、滅びの大聖堂でレベルを上げた俺のレベルは150超え。大体3倍のレベル差。ステータスはさらに数倍だ。
渾身の拳から繰り出されたダメージは1。
なおも必死に拳を振るってくるが、これはもう防御すらせずに体で受け止めてやる。
『う、うが!?』
「んじゃぁ、次はこちらの番だ。一撃だけだ、耐えきれよ?」
拳を握る。
不味いと気づいたのだろう。慌てて逃げ出すガチムチ霊。
その背後にとびかかり、俺は渾身の一撃を打ち放った。
「嘘だろ!? あれを一撃!?」
「あ、あんた、化け物だったのか……」
「やばい惚れそう……」
「そうはならんやろ……」
見たかモヒカンズ、俺の雄姿を。
「ま、そうなるわよね……」
「レベル差考えたらねぇ」
『あはは、ヒロキったら弱い相手には強気ねぇ』
……ばれてーら。
「すげぇっすヒロキサン!」
「そこにシビれる憧れるっ」
「ステータスの関係だからってのはわかってるんだけど、あのガチムチの一撃掌で受けちゃうのは、ヤバいわ。濡れるっ」
「パイセンさすっがっす、パネェっす」
なんか下僕みたいなセリフになったな四人とも。いや、一人、中身女性っぽい人がなんか怪しい動きでくねくねしてるけど。モヒカンがくねってるのはちょっとキモい。




