358.二つ目の七不思議・7
「えーっと、状況を整理すると、君らはこいつを埋めるつもりだった。でもそれはこいつが連続殺人犯だったから? でいいのかな?」
「ああ。その通りだ。俺らは田舎町でこういうクソNPCを狩るハンターやってんだ。探せば意外といるんだぜやべぇやつ」
「ただなぁ、こういう隠れた殺人犯の場合はレッドネームになってねぇからよ。発覚するまでわからないらしいんだ。だからこいつらを殺すとこっちがレッドネームになっちまう。それでもよ、何もしてねぇNPCが殺されるの、黙ってみてるわけにゃいかねぇだろ」
「あたしは二人に助けられたクチでさ、知り合いが殺されかけたの救ってくれてからは一緒に行動してんの。それでも、別の知り合いがこういうクソ野郎に殺されちまったんだけどさ」
あの、ラズナさん、それはいいけどなんで俺からすごい距離取ってんの?
違うよ、ワザとじゃないよ。警告すらないから触り放題近づくな。じゃないんだよ。
ラッキースケベさんが仕事しただけだから気にしなくても普段は襲い掛かったりしないよ?
「うっせ、近づくなクソ外道、蹴り殺すぞっ」
「やめとけラズナ、パンツ見られるだけだぞ」
「お前マジクソ外道だな、蹴られながらパンツ見てくるのかよ!?」
いや、今の風評被害。そいつが言ったセリフなだけですよね!?
「っし、埋葬完了。これで桜の木が暴走すンのも防げるぜ」
「ん? どういうことだ?」
「この桜の七不思議だよ。ここに定期的に死体を埋めねぇと死霊どもが現れて近くの生者を引き込むらしい」
なるほど。つまり桜の木のイベントが起きてないのは彼らがせっせと隠れた殺人犯を埋めていたからか。
「えっと、どうする?」
「え、それお姉さんに聞く!?」
『一応七不思議の一つである桜の木はこれで完了みたいだから、私たちの目的は終わったみたいよ?』
「あ、そうなのか」
なら放置でもいいんじゃないかな。このゲームの楽しみ方は人それぞれだし。
「じゃ、俺らは次の七不思議行ってくるわ」
「はぁ!? あたしら止めたりしないの!?」
「え? 止めてほしいの?」
「いや、そうじゃなくて、その、ほら、あんたみたいなのって基本殺しはいけないとか言うじゃん。相手は殺人犯でも殺すな、とか」
「いやいや、これゲームだし、そこまで熱血漢じゃないよ俺。それに怪人とか殺しまくってるし、味方に味方殺しまくる聖女とかいるし」
「味方殺す聖女って味方にしといていいのか?」
「本人、悪気はないんだ」
意味が分からんよな。俺もわからん。でもルルルルーアさんは一応仲間だからさ。
「んじゃ、俺らは行くな。モヒカンズはどうする?」
「ひとまとめにすんじゃぁねぇよ。行くに決まってんだろォがよォ!! ヒャッハー」
だからなんでセリフがいちいち下っ端っぽいんだ。
あ、ちなみにどうでもいいけど桜の木の傍にいた三人組、ラズナさんと金髪君がキョウヤ、赤髪君がヒツギというらしい。うん、多分もう会わないだろうしどうでもいいね。
田舎学校に行くのも七不思議関連だけだから今日で終わりになるし、出会う場所がないからやっぱり合わないだろうな。
いや、もしかしたら第三回イベントに参加するかも?
会うタイミングはその時くらいかな。
「美術室はこっちだぜェ」
「ふへへ。夜中にこんなところに来ちまうなんてなァ、可哀想に」
「俺らが手取り足取り案内してやんぜェ」
「ほぉら辿り着いちまったぜェここが地獄の一丁目ってなァ!」
お前らいちいちそういうセリフ回ししないといけないのかよ、なんか疲れてきたよ。
あと人体模型君が案内できなくて少し悲しそうにしてるぞ。
ニノキンさんに肩ポンされて慰められている。
美術室に辿り着く。石像はミロのビーナスとかなんかギリシャのおっさんの胸像とかが置かれていて、その中の一つ、手の石膏像が床を動き回っているのが見えた。
普通に動いてるな。
俺たちが入ってきたのに気付いて、車に気付いて驚いた猫みたいにぴたっとその場で止まる。
あれ、動物とかって基本止まるよな。すぐ逃げればぶつかったりしないのになんで止まるんだろう?
知り合いがぶつかったらしいんだけど、最後まで目が合ってたんだってさ。凄く後悔してた。
「よっす、動く石膏像さん。お邪魔してます」
「やぁやぁ、大所帯でごめんね。七不思議巡りしてるみたいなんだ彼ら。すぐに旧校舎の方に行くから」
お、ばいばいと手を振ってくれた。この場合全身振ってくれたと言った方がいいんだろうか?
「つか、意外と七不思議って話分かる奴多いよな?」
「ああ、俺もこいつらは危険な存在としか思ってなかったから討伐しなきゃいけねぇと思ってたんだが……」
ああ、モヒカンたちが人体模型君追いかけてたのはそのせいか。
そりゃ七不思議は高位AI搭載型だからな、話の分かる奴が多いんだ。ただちょっと人を脅かすのが好きなだけで。
 




