354.二つ目の七不思議・3
「た、助けてくれぇ――――ッ!!」
前方から声が聞こえた。
ニノキンさんともども声がした方向へとやってくると、何かが走る音が聞こえてきた。
もうしばらく待っていると、暗がりからかけてくる一人の男。
助けを求めながらスプリンター走りでものすごい勢いでこちらに近づいてくる。
その容姿は体の半分が皮を失い筋肉の繊維が見えた顔、皮を失い内臓が揺れ動く姿が丸見え、隠さなきゃいけない場所まで丸見えの人体模型君だった。
って、何でお前が助け求めて走ってんだよ!?
「まてやゴルァ!!」
「ヒャッハー、七不思議狩りだァ!!」
「ケツ振って逃げやがってよぉ! 誘ってんのかボクちゃんよォ!!」
「逃げる奴ぁただの人体模型だ。向かってくる奴ぁ訓練された人体模型だ。皆まとめてぶっ飛ばせぇ!!」
なんかモヒカン四人組が人体模型君追ってやってきた。
人体模型君はニノキンさんに気付くと、なぜかくるっとターンして俺らの背後へと隠れる。
おいおい……
「お? 何だテメェ? そいつぁ俺らの獲物だぜぇ?」
「あ、ニノキンがいるじゃねぇか! 逃走させるだけでも経験値がうめぇんだ」
「そうか、わかったぜぇお前らは俺らに経験値を貢ぐためにここに来たんだなぁ!」
「へへ、悪りぃな嬢ちゃんたちぃ、遊んでやりたいが俺は紳士だからよぉ。全員仲良く地獄の底に連れてってやるぜぇ」
うわぁ、ナイフ舐める奴初めて見た。
おそらくなりきり系プレイヤーだな。
「えっと、半殺しで」
「「「「了解」」」」
なんか皆凄く嬉しそうだね。
他校の七不思議+αが田舎七不思議をイジメる奴らに牙を剝く。
「お兄さんたち、そんなに七不思議を倒したいのねぇ、じゃあ、倒してみなさい、この七不思議が一つ、テケテケをケケケケケケケケケケケケッ」
「なぁ、おい、あいつ、下半身、なくね?」
「口で鎌咥えて……まさか、マジでテケテケ!? なんで田舎学校に!?」
さすがにテケテケさんの異様に怯えた彼らは一目散に逃げだした。
が、それこそがこっちの四人の狙い通り。
通路の先には先ほどまでなかったトラップの群れ。これは妖精さんが仕掛けたいたずらのようだ。
突然足が引っかかってこける奴。
なぜか何もない場所で打撃を受けたようにくの時に曲がって倒れ込む奴。
皆必死に逃げ出した。
テケテケさんが手加減しているので倒れながらも立ち上がって逃げられる彼らは、テケテケさんが遊んでいることに気付いてないようだ。
「あ、あそこだ! あそこに逃げ込め!!」
「クソ、なんでテケテケなんてのがいるんだよ!」
「ふへ、ふへへ。俺美女に追われてる。美女に追われてるんだぜ!」
「初めてモテて良かったなクソが!」
四人のファンキーボーイたちは教室の一つに飛び込んだ。
そこは当然のように個室である。
がちゃりと扉に鍵がかかる。
「あン?」
「おい、鍵掛けたか?」
「最後にドア閉めたのはお前だろが!」
「あれ? なぁ、この部屋、赤くね?」
「は? あ、お、お前は!!」
追いついた教室の中にはすでにアカズさんとハナコさんが入っているらしい、俺たちは声だけ聞かされている状態なので何が起こっているかわからないけど、声だけでもなんかこう、わかるなぁ。
「ふふ、私の間にようこそ。ここは今宵、開かずの間。中に入れば決して出られぬ孤独な檻」
「ひぃっ!? か、壁がヘドロみたいに!?」
「血の色してんじゃねぇか、なんだこりゃ!?」
「教室が。教室が壊れてく!?」
「周囲が血の色のヘドロに……」
「あは、あはは。あははははは。さぁ、おともだちになりましょぉーよォ!!」
「ひぃ!? い、嫌だ、嫌だぁぁぁ!!」
「クソ、アニキ! この赤い腕なんだよ、アニキを放せ、放せよぉ!」
「どこか、どこかに逃げ場があるはず」
「このまま死んでたまっかよぉ!!」
うーん。アカズさんの笑い声がひっきりなしに聞こえる。
久々に楽しそうだなぁ。
殺しちゃだめだよ。忘れるなよー?
「なんだ? このロッカーだけ、不自然にあんぞ? ここ、出口か?」
あ、やべ、弱点見つかってんじゃん、アカズさん。
『はぁーあーい』
「あ?」
『うふふふふ、私と遊んでくれる?』
「あ、ここ、ロッカーじゃ、ねぇ!? トイレだと!? あ、あぁ、うわああああああああああああああ!?」
まさかのトイレトラップ!?
『行くよーアカズ、だんくしゅーっと』
「えぇ!? なんでおっさんを首ごとをこっちに投げてくるの!? いらないわよ」
「おっさんじゃねぇ! まだ小学生だ!!」
『「うそでしょ!?」』
どうやら四人のうち一人が小学生だったようだ。
トラウマになってもあれだし、そろそろ帰っておいでー。
「仕方ないわね。ほら、ハナコ帰るわよ」
『なんか久しぶりに人を脅かせた気がするわ。満足満足』
七不思議組はたまに人驚かした方がストレス発散になるんだろうか?




