350.コトリさんと箱
裏世界の左側通路にやってきた。
やっぱり部屋は表側で何もなかった部屋に宝箱、宝箱があった部屋には何もなしといった具合で、いろいろとアイテムを回収させて貰った。
「ヒロキ、そんなに宝箱だけ集めてどうするの?」
「いや、なんかこう、宝箱ってその箱だけでも価値があるっぽくね? なんか意匠が豪華だし」
「まぁ確かにそうなんだけど。持って帰っても使い道ないでしょ?」
「いや、あるんだよこれが。ほら。イベントの場所で宝箱置いといたら皆開けない?」
「おー、トラップか!」
「せっかくだからロシアンルーレットみたいに当たりはずれを入れとこうかなと。ちなみにはずれ大多数の当たり3個くらいで」
「え、えげつない。さすが外道ね」
彩良さんいちいちオーバーリアクションで驚かないでくれない?
あと外道は余計だ。
ついでに意味ありげに玉座もいくつか配置しておこう。
座ったらイベント起こるようにしたほうがいいかな?
なんかいい方法ないかな?
「いたずらに使えそうではあるねマネージャーさん」
「ふっふっふ。いたずらといえば妖精さん、妖精さんといえばいたずらよね! 玉座一脚ぷりーず!」
「いいわね、せっかくだし一人一脚トラップ作成しない?」
「そんなに玉座持ってねーよ?」
「残念」
まったく俺は玉座職人じゃないんだぞ。好き好んでそんなに玉座持ってねーっつーの。
収集始めたのも少し前からだし。
「なんだこれ? ねーヒロキー帽子みっけた」
帽子? ってなんで普通に率先して宝箱開けてるのメリーさん。
いや、メリーさんに似た誰か。
まぁ大体何者かはわかってきてるんだけど、あえて自分から名乗るまでは何者なんだーって余地を残しておこうと思う。
んー、この帽子はなんだ?
スナフ……おっとこれ以上はいけない。
なんか見たことあるような帽子だ。
えっと、呪われた祝福されし吟遊詩人の帽子? 呪われてるのか祝福されてるのか謎な帽子だな。
なんでこんな場所で吟遊詩人の帽子が出てきたのかも謎だし。
歌が上手くなる、くらいしか祝福効果ないな。
しかも呪いの方が極悪だぞこれ。
よし、他の誰かさんにあげよう。この宝箱に置き直してっと。宝箱ごと回収っと。
「うわー。悪い顔してるー」
「使い道がないから誰かに使ってもらうだけさ。そう。フリーマーケットの如く」
「いらないものを押し付けるだけよね?」
封印指定物もついでに誰かに送り届けるか。
サユキさんのアレとか、世に出せないアレとか。
「さて、ここが最後の部屋になるわけですが」
『聖杯の代わりになにがあるのかしらね?』
「んー、吾輩、聖杯の逆などわからんぞ?」
「聖杯の代わりだし闇杯じゃないの?」
まぁとりあえず行けばよかろうなのだ。
扉を開いてエルエさんが前に……おっとバックステップ!?
「マスター、敵です!」
なんでそんな敵が存在し……リッチ!? いや、鑑定にでたのはエルダーリッチ!?
部屋の中には襤褸切れのローブをまとった骸骨がすぐ目の前にいた。
多分部屋に入ったら目の前に骸骨出てきて驚く間に先制攻撃食らうという罠だ。
「Jeaifakarhaneeuh」
……なんて?
「ふむ、言葉に意味はなさそうじゃな。そいっ」
稲荷さんがコトリさんの結界から飛び出しリッチに飛び蹴り。
ぎゃあぁ!? と吹っ飛んだエルダーリッチは胴体部分に風穴開けて倒れる。
一撃かよ!?
「エルダーリッチがただの死者ではなく不死者と呼ばれている理由は知っておるか?」
「ん?」
「死なぬのじゃ」
おお、マジで復帰しやがった!? ヘンリエッタさん、対抗しないと!
『対抗も何も死ねってことですわよね! 復帰まで時間かかり過ぎますわよ!』
「そういう問題じゃないような……」
俺たちがエルダーリッチに対応している合間に、稲荷さんがどこかへと向かっていく。
あれは……聖杯があった場所か。
そこに、小さな箱が置かれていた。
稲荷さんはそれをひょいっと掴み上げる。
その刹那、エルダーリッチは慌てたように稲荷さんへと敵意を向けた。
「遅いのぅ。これを壊せば其方は終わりじゃ」
「あ、待って稲荷さん、その呪物ください」
「えぇ!?」
まさかのコトリさんのお眼鏡にかなった!?
でもそれ、何の箱? コトリバコとは違うよな?
「これはの、聖句箱と呼ばれておるのじゃ。魔術師がこの箱に魂を移し肉体が滅びたのがエルダーリッチとなる。ちなみにリッチの場合はただ魔術師が不死者になっただけじゃから肉体が滅びれば終わりじゃ。エルダーリッチは魂をここに封じておるから肉体をいくら滅ぼしても復活してくる。それがこ奴が不死者と呼ばれるゆえんなのじゃ」
と、説明しながらエルダーリッチからの魔法連撃を華麗に避ける稲荷さん。
ほいっと結界の中に入り込み、コトリさんに聖句箱を手渡す。
ああ、コトリさんが取り込んじまった。
エルダーリッチさんはなんか凄く辛そうな声を上げて消滅したのであった。
これで、ロッポウか……




