３４９．六枚羽の堕天使
無数の羽根が舞い散る。
どうやらこれにもダメージがあるらしい。
おそらく当たれば聖属性ダメージが来るのだろう。
ハナコさんやヘンリエッタさんは特に呪殺結界から出ないようにして貰おう。
荘厳な聖堂に光を受けて煌めく無数のステンドグラス。
後光を携え六枚羽の堕天使がゆっくりと羽ばたいている。
堕天使だと分かるのは羽の色だ。
純白の天使の羽とは違い、闇色に輝くその羽はどう贔屓目に見たところで天使とはいいがたい。
しかしながら容姿は天使のそれであり、暗黒天使と言っても過言じゃない存在だった。
手には細く鋭い剣を持ち、逆の手に持つのは……錫杖か？
なぜか血涙流して怒りの顔で俺たちを睥睨している。
こういう時は、あのセリフしかねぇよな。
「頭が高けぇぞ堕天使ッ」
「うわー、ヒロちゃん全然似合ってないわ」
うるせいやい。
ともかく、空飛んでる間は近接メンバーがどうしようもないから遠距離特化チームで狙撃だな。
レーザー銃を発射。って、はじいた！？
アイなフィールドでも発生してんのか？ 円形にはじかれたぞ今の。
「ちょっと、遠距離魔法もはじかれてるわよ！？」
「魔法と光線系は無効化されるみたいね」
『鬼火は効くみたいね』
「実弾、効果確認、デす」
「お？ 尻子玉取れたぞ？」
幽体攻撃や実弾は効くのか。
というかネネコさんは何してんの？
腕が伸びてたから遠距離パンチかと思ったら尻子玉抜いてんのかよ！？
「やった！ 見たかダーリン。私の雷球が直撃だぞ！」
スレイさんの雷球ははじかれなかったようだ。
さらにアイネさんの毒針も直撃。
珍しく悲鳴が上がったな。
というか、なんかすごく苦しみだした。
アイネさんの毒、どんだけヤバいんだろう？
「旦那様、呪い系の攻撃も耐性あるみたいよ」
耐性、あるんだ。
なんか今の一撃だけで大ダメージ入ってる気がするんだけど。
「トモダチに、なろう？」
え？ あ、スキルか。
まさかあまりにも友達がいなさ過ぎたアカズさんがあの堕天使でもいいから友達にしたい、のかと一瞬本気で思っちまった。
このスキルは確か、個室内にいる敵性生物に対して赤い腕で身動き封じるスキルだったな。
って、確かによく見ればこの聖堂内、個室じゃん！
うっわ、アカズさん意外とこういう状況だと強いな。
ということはダンジョンアタック系もボス戦はだいぶアカズさんが特攻持ちになるんじゃん。
弱点の露出があるからそこだけ気を付ければ、だけど。
「ヘンリエッタ様お願いします！」
「ええ。隠形印！」
「七年殺し！」
ヘンリエッタさんと共にルルルルーアさんが風景に溶け込む。二人は接近戦を行うつもりらしい。
大丈夫か二人とも？
死んだら経験値はいらないぞ？
あ。なんか急にダメージ食らったらしい堕天使が慌てて周囲を探し出した。
おそらくルルルルーアさんだな。
一撃、ニ撃と近接攻撃をしているらしい。
おそらく杖で殴ってるな。よくやるよ。
よし、せっかくだから近接メンバーもなんか投げて戦闘参加しとこうぜ。
なんかもう終わりそうだし。
って、うわっ！？ なんかすごい無数の雷が落ちてきた。
これがあいつの必殺か？
ヘンリエッタさんとルルルルーアさんは大丈夫……みたいだな。まだダメージ受けてやがる。
とりあえず今ので六回目か？ ってことは次で……
「ＧＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡ――――ッ！！」
うわ、マジで七撃食らっただけで死ぬのかよ！？
相手ボスだぞ？
「隠形印解除！」
うおっ！？ いつの間に戻ってきてたんだお二人さん！？
「ふぅ。上手く行きました」
一仕事終えたってさわやかな顔で告げるルルルルーアさん。
七回攻撃しただけだけど、まさかボスキャラすら一撃必殺とは恐れ入る。
七年殺しか。多分ナーフされるだろうな。
ナーフ内容は……ボスには無効、もしくは大ダメージに留めるか、だな。
倒れた堕天使が闇に染まって消失していく。
落ちてくる羽根も数を減らし、堕天使が消える頃には羽根の姿もなくなっていた。
剣と錫杖残ってるな。おそらく強制ドロップだな。
回収しとこう。下手に持って呪われてたら怖いしな。堕天使の持ち物だから呪いついててもおかしくないし。
「ボスは倒したけど……こっちの通路の先って何かあるのかしら？」
「まぁせっかくだし行くだけ行こうか」
その前に、なんかこの聖堂内にも貰える物とかないかなっと。
あ、なんか落ちてる。
これは……聖書かな？
まぁ回収しとこう。
「よし、そんじゃ行こうか」
「左側の通路裏ステージ、入りまーす」
なんでメリーさんっぽいのが一番楽しそうなんだろうね。
あとギーァが彼女についていくのはなんでかな？
やっぱりお前眷属か何かだろ。
