331.それじゃ、水着買うか
「おっはー」
「来たあるよー」
アイテムの入れ替えを行っていると、りんりんさんとレイレイさんがやってきた。
りんりんさん、来るが早いかレムさんを確保して椅子に座っちまったぞ。
こやつ、やりおる。
「噂には聞いてたけどこれギルドホームじゃなくて個人宅あるか。よくもまぁUFOなんて手に入れたあるな」
内装を見て驚くレイレイさん。そのまま座った場所が俺の隣だったことに気付いたカァッと顔を赤らめた。
「な、ななな、なんでわざわざ私の隣に座るあるか!?」
「何言ってんだ。俺の隣にわざわざ座ったのはレイレイさんでしょうが」
生配信見てる奴らからも指摘があったのか、レイレイさんはさらに顔を真っ赤にして両手で覆ってしまった。座る場所は変えないようだ。
コトリさんがそれを見てあらあら、と口元を着物の裾で隠して楽しそうに笑う。
「モテモテですね、旦那様」
「これはただ恥ずかしがってるだけだろ。俺がモテるのはゲームキャラだけですし。はぁ、現実の彼女はいつできるのか。絶賛お待ちしてますよっと。そんでりんりんさん、あの……」
レイレイさんが顔を隠してしまっているので話を振る相手はりんりんさんかな、と話しかけたんだけど、りんりんさんはすでにレムさんに夢中でこっちの話など聞いちゃいなかった。
仕方なくレイレイさんに尋ねることにする。
「それで、今日来たのはプールに同行するってことでいいのかな?」
「そ、そうある。水着も買おうって話になってるネ。プールは明日でいいあるね?」
ふーっと気合を入れてレイレイさんが顔を上げる。
気持ちを落ち着けて俺に返答してくれるらしい。
まだちょっと恥ずかしいのか視線は合わせようとすらしてくれないけれど。
「どうせまた水着買いに行くんでしょー。私たちの分も買っていいよね?」
「りんりんさんとレイレイさんは俺に金を払えと申すか。まぁいいけども」
「いいの、それで」
「いいんだよ妖精さん。今の俺は、正直金持ちなんだ。異世界でのドロップ品も売らないとだからまた金が増えるし」
「そーそー、こいつ金だけは持ってるから集ればいいのよ」
あ、マイネさんちっす。
「私が最後とは珍しいわね。テイムメンバーもみんないるし」
「今は正義の味方としての出撃もないのでね」
「うぁ」
おっといつの間にかキカンダーさんたちもいるじゃん。ジェイクさんも正式にマイネさんにテイムされたようでたまにこの家の中で見かけるようになったんだけど、気付くと部屋の隅に存在してるから怖いんだよなこの人。
「んじゃま、全員揃ったし行くか」
「水着買いに行くだけで大所帯あるな」
「でもほとんどのメンバーはもう水着持ってるんですよね。レムさんも」
「いや、レムさんは水着頼んだけどそのあと異世界連れてかれたからこれから受け取りだね。そのあと水着作ってそれが出来たら皆でプールに行こうって話になってるんだ。ハロウィーズにもすでに連絡は入れてるからあとはこっちの都合待ち。あと事前にアラクネ装飾店にも連絡済みだから向こうで一気に作って今日中に全員分手に入れようかって話になってるんだ。という訳で、ゲーム内で明日プール行く予定なんだけど、行けそう?」
「問題ないある」
「私もおっけー」
君ら学生だよね? 学校どうしてんの? 大丈夫なの?
でも生配信で稼いでるみたいだし、実質学校行ってないとかか?
実は二人ともAIだったとか、ないだろうな。
「どうしたある?」
「いや、なんでもない。行こうか」
もしも本当にAIだったら精神的ダメージがデカいし、プレイヤーさんだと思ったままにしておこう。真相は闇の中、それでいいんだ。下手に暴いて地獄を見る必要はないからね。
俺たちはぞろぞろとアラクネさんの店に向かう。
これだけ固まっていれば異世界召喚とかされないだろ。
なぁ妖精さん、メリーさん、スレイさん、芽里さん。
俺は近くにいたメンツに視線を向ける。
頭の上に止まった妖精さんと、肩に乗ってきたメリーさん。そして俺の左隣を奪い合うスレイさんと芽里さんに……ん?
メリーさんがここにいて、芽里さんがそこにいる。
メリーさんに視線を向けると、俺に気付いて手を軽く振ってくる。
芽里さんを見る。スレイさんと言い合いしながら歩いてるところにティリティさんが乱入してきてなんか大変なことになってないですか?
「どうしたの旦那様?」
ちなみに右隣を占拠しているのが正妻です、としれっと俺の腕に腕を絡めているコトリさんである。
何だこの状況?
ハナコさんともあまり話せてないからできれば一日くらいずっと隣で話し合いたいんだけど……無理かなぁ。
今はヘンリエッタさんと幽霊仲間ってことで話がはずんでいる様子。アカズさんは幽霊じゃないでしょ、なんで話に加わって幽霊生活も大変よねーとか相槌打ってるの!?




