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32.行きは幽霊帰りは狐、恐いながらもとおりゃんせ・3

「あいよヒロちゃん」


「あいよ、と言われても、ツチノコさんをどうしろと?」


「倒すのよ。こういう希少種は倒すと変わったドロップとかスキルが手に入るのよ、ただし倒した人だけね」


 ああ、つまり俺が倒さないとツチノコさんから入手出来るスキルが手に入らないのか。

 ツチノコさんは妙にぐったりした様子で、既に諦めの境地らしい。

 殺すなら好きにせい、そんな顔をしている。


「なんか、可哀想……」


「お主、ツチノコなんぞレア中のレアだぞ。倒すべきだとワシも告げておこう」


 ああ、ツチノコさんが絶望に泣きだした。

 器用だなツチノコさん。


「なんかAI独自搭載されてそうだなツチノコさん。テイムとかしたら喜ぶだろうか?」


 びくんっと反応するツチノコさん。何となく希望を見出した顔をしている。

 おい、まさか……


 ―― ツチノコさんが仲間になりたそうにしている、テイムしますか? ――


 来ちゃったよオイ。

 まぁ折角だし、テイムっちゃおう。


「は? ウッソ、この蛇テイム出来るの!?」


「なんとまぁ……」


 テイムした瞬間、助けられた事を理解したように俺に擦り寄って来るツチノコ。

 うーむ、丸々太った蛇だから蛇に見えないというか、小さいサンショウウオみたいだな。


「やっぱりツチノコさん、喋れないけど独自AI搭載型のボスキャラじゃん」


「ありゃー、またボスキャラ仲間になったのか」


 ―― ツチノコさんがヒロキに加護を与えた! ヒロキの幸運が上がった! ヒロキのラッキースケベが上がった! ――


 なんか上がった!?


 ―― ツチノコさんがヒロキにスキルを与えた! ヒロキは熱感知を覚えた! ――


 変なスキル貰った!?

 っていうかこれって蛇としての能力だよね。人間が熱感知して大丈夫なの?

 ま、まぁいいや、とりあえずスキル蹴り技と一度入れ変えてアクティブ化だけはしとこう。


「まさか目の前でテイムを見ることになるとはの、さて、ヒロキだったな。そろそろ試練をしたいのだが、準備はいいかの?」


「あー、そうっすね。そんじゃ始めますか」


「え? え? 何するの? ナニしちゃうのぉ!?」


「テケテケさん戦闘態勢!」


「え? はい!」


 一瞬驚いたテケテケさんだったが、即座に体勢を整える。

 俺の傍に寄って稲荷さんを警戒し始める。

 ツチノコさんは俺の肩に乗ってやる気満々だ。

 いや、君は戦力として数えてないからね?


「アレが敵で、いいのよね?」


「恐らく?」


 俺から距離を取った稲荷さんは宙に浮き上がり雷鳴轟くエフェクトが始まる。


「な、なんか凄くヤバそう?」


「あ、違う、稲荷さんが戦うんじゃないみたいだ。来るぞ!」


 稲荷さんの真下に五芒星が出現。そこからせり上がって来る一匹の狐。

 狐といっても結構デカいぞ。

 しかも、色が普通と違う。緑色の狐?


 コーンと雄叫び上げた狐が走りだす。

 狙うは真っ直ぐに俺。


「ヒロキ、まずは相手のステータス確認する癖をつけなさいっ」


「え? お、おぅ、ステータス確認」


 名前:風狐

 種族:狐 クラス:使魔

 二つ名:ベジタリアン

 Lv:10

 HP:547/547

 MP:83/83

 TP:84/84

 GP:63/63

 状態:普通

 技スキル:

  ???Lv10:    ???

  ???Lv13:    ???

  ???Lv4:     ???

  ???:        ???

  ???:        ???

  ???:        ???


「敵のステータスを確認する癖が身につけばソレ系のスキルも伸びるわよ」


「おー、知らんかった」


「……のぅ、それ、教えちゃダメな奴では?」


 ふと、気付いたように稲荷さんが告げる。

 テケテケさんがビクンっと何かに気付いた。

 ばっと後ろを向く彼女に、つられて俺もそちらを見る。


 お怒りモードのタマモの姐さんが笑顔でこちらに手を振っていた。

 あー、これは戦闘終了後にテケテケさんお説教コースだ。

 また一つプレイヤーが独自で気付くべきことを俺に教えてしまったらしい。


 というか、鑑定スキル持って無くてもソレっぽい能力使えるのな。

 敵のスキルは不明なままだけど、名前や種族が分かればある程度の対策は立てられる。

 つまり、今回の敵は、どれ程強くとも……


「テケテケさん、隙を作るから後はお願い」


「はいはーい、おねーさんに任せてね! 畜生ッ」


 既に進退極まったらしい彼女は半ばやけくそ気味に告げた。

 口に鎌の柄を咥え、テケテケさんが戦闘態勢に移行する。

 ならば、俺もやるとしよう。投擲スキルと蹴り技を入れ変えて……

 油揚げ、投擲っ!


 俺は迷うことなく振り被って油揚げを投げた。


「なんと、もったいないっ」


 稲荷さんが思わず嘆いた。

 それは油揚げを投げた事か、食べ物を粗末に扱った事か、あるいは……使役段階の狐風情が油揚げに飛び付いたことか。

 ともかく、俺の目論見は成功したのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ほのぼの。 [一言] このまま超常現象と一緒にほのぼのして行けたら良いですね
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