324.やっぱり戦力過多
「生まれ変わった気分だ……」
実際生まれ変わったんじゃないかな?
魔王って自分で自分を生む生物なんだろうか?
というか、新しくなった魔王なのにブーメランパンツ履いてるんだなぁ。
「やだ、魔王様がさらにイケオジに、吾輩、恋しそう」
止めはせんぞティリティさん。
「でも、今は吾輩ダーリンのモノだから」
好感度、どれだけ上昇しちゃったんだろうか?
そういやゲームの好感度って基本上がるばかりで下がることってめったにないよね。よほどひどい選択肢を選択した時くらいか。
「フハハハハ、感謝するぞ勇者たちよ、代わりに惨たらしく殺してくげぇっ」
うっわ、痛そう。
マイネさんの容赦ない一撃がセリフ途中の魔王、その脇腹にえぐり込む。
「まだまだ戦えるある!」
少し遅れてレイレイさんが膝カックンからの態勢崩し連撃をはじめ、最初の戦いと同じように一斉攻撃が始まった。
HPこそ増えたものの結局態勢崩された魔王は戦うことができなくなっている。
そのままどんどんHPだけが減っていき。
あ、これ完全にハメパターン入ってるわ。
戦力過多だったようで俺の出番は魔王最終戦なのに一つもなかった。
30分ほど魔王の弄られるシーンを見続けただろうか?
魔王のHPが消え去り、真っ白になった魔王が倒れる。
「ば、かな……七度、七度も変化したのだぞ、なぜ、負け……る……」
いや、そりゃいくらパワーアップしても攻撃できてないじゃん。
あ、う、ぐっ、がはっ。を繰り返してただけで勝てるわけないだろ。
「っしゃぁ! ノーダメージ勝利ある!」
拳突き上げ配信閲覧者たちに勝利宣言。
今の絶対炎上するだろ。あれはもう倒したとは言えん。無抵抗の弱者を集団で殴り蹴ったとしか言えねぇ。こいつら皆外道集団だよ。
「ようやく魔王撃破ね。これで終わりかしら?」
「ん? あ。皆体を!」
「これは……」
俺たちプレイヤーの体が光り輝く。
いや、真下に魔法陣が生まれた?
エルエさん、レムさん急いでこっちに!
って、なんか女性陣めっちゃ集まってきた!? ぬはぁぁぁ!? 天国かここはっ!?
俺の傍にルルルルーアさんとティリティさんがすぐに寄ってきてひしと抱き着く。
それを見て自分一人何もしてないと気づいたローリィさんも同じように抱き着いてきた。
別に近くにいるだけでよかったんだけど。
そしてエルエさんとレムさんとレムさんの乗ってる機械人間が寄ってきて、皆して光に包まれる。
なんとか皆が間に合ったか、これで誰か異世界に取り残されたってことにはならな……そういえばヘンリエッタさん、死んでたな。
え、大丈夫かな? 異世界に取り残されるパターンじゃね?
生き返ったらっていうか生き返ってないけど復活したら魔王城ですわよ皆どこかしらーとか半泣きで言ってそう。
光が収まる。
俺たちの目の前には、どこか懐かしさすら感じる、ゲーム内現実世界の街並みが広がっていた。
「おお、戻った」
「レイレイさんとりんりんさんは?」
「んー? おそらくだけど二人が転移した場所に戻ったんじゃない」
ここにはマイネさんがいるけどレイレイさんとりんりんさんはいなかった。
他のメンツはちゃんと一緒に戻ってきたみたいなんだけどな。
テイムキャラはテイマーの傍に飛ぶんだろう。
「えーっと、私は結局どうしたらいいのかしら?」
ローリィさんってそういえばテイムしてなかったな。
「どうします? テイムいっとく?」
「そうね、行くとこないし、戻れそうにないし」
―― ローリィさんが彼女になりたそうにしている。コマしますか? ――
待って、なんかテイムメッセージおかしくね!?
ま、まぁいいや、多分OKでいいだろ。
―― ローリィさんを手籠めにした! ――
だからテイムだよね!?
「ど、どうしようティリティさん、わ、私手籠めにされてしまったわ」
「なんてこと、妻の目の前で浮気っ!? 吾輩ショック! でも、ダーリンならそれもありかも」
どういう状況!? 好感度が高すぎて俺のやること全肯定になってるじゃん。
「ヒロキンさん、二人と連絡できたわ。ちゃんと元の世界戻れたって。明日また会えないかって言ってるわよ?」
「じゃあ俺の住居に招待しとくよ場所の案内はそっちでしといて」
「了解」
しかし、魔王倒したら即行送り返すとか、それでいいのか異世界。
「あの、ヘンリエッタ様はどこにいらっしゃいますか?」
「ヘンリエッタなぁ、魔王戦で死んだだろ。まだ復活時間になってないからどことも言えないんだ」
「そういえばルルルルーアに味方殺しされてたわね」
「ふえぇ!? 違います、私殺すつもりなんて……」
「まぁその辺りは本人交えて話し合おう。それより、ヘンリエッタさんの復活場所が死んだ場所なのか俺の周辺なのかが問題だ」
「あ、そっか。確かに異世界だったら一人取り残されたってことになるわよね。悪霊化するんじゃないかしら?」
つっても異世界に行く方法なんてもうないしなぁ。
……あれ?
「どうしたの?」
「いや、とりあえずまずはヘンリエッタさんの復活を待とう。話はそれからだ」
まさか、いや、でもあの運営なら可能性は……




