320.魔王城2階層
二階に上がると、リビングアーマーはいなくなったらしい。
代わりに、リビングソードと思わしき物体が宙を舞っているのが見えた。
俺たちに気付いたのだろう。猛スピードで突撃してきた。
当然、エルエさんが即座に反応して白刃取り。
そのまま壁にたたきつけて勢いでペキリ。
「瞬殺でしたな」
「あ、の程度ノ速度でアれば捕捉可能で、す。問題ハ複数飛んでキた場合デす」
これ、エルエさんがいなかったら詰んでるかもしれんな。
俺ら誰も反応しきれてなかったぞ。
障壁とか誰か張れない?
無理? ……そう。
幸い、リビングソードはそこまで数が多くないようで、最高でも二体までしか連なって出現することは無かった。
さすがに三体以上は対処できるチームがいないかもと運営の慈悲が入ったのかもしれない。
エルエさんいなかったら普通に全滅必至だからなぁ。二体でも十分すぎる脅威だわ。
「せっかくだしエルエさん、一匹捕獲お願い」
「了解。アレにし、ましょう」
一体のみの剣が迫ってきていたので捕獲開始。
白刃取りしてそのまま柄の部分を俺に向ける。
どうぞ取ってくださいってことらしい。
どれ。お、おお、意外と元気。
エルエさんに持ってて貰ってなければこれは手にすることすら不可能だわ。
「リビングソードさんよ、このまま折られるのとテイムされるのどっちがいい?」
あ、ダメだこいつ。こっちの話に反応する気ゼロだわ。
「エルエさん折ってくれ」
「了解」
リビングソード関連は意思疎通不可能なのか。残念。
リビングレーザーソードとかできないかなってちょっと期待したのに。
「テイムもできそうにないし、この階層もさっさと抜けよう」
「残念あるな。私の左右に侍らせて飛剣乱舞とかしたかったある」
「レムさんのソード乱舞とか見たかったなぁ」
りんりんさんや。あの剣機械で動いてないからレムさんの対象外だぞ?
早々に二階層を潜り抜け、三階層を目指す。
結構入り組んでて動きづらい。
曲がり角を曲がる時が一番怖いな。
近距離でリビングソードに出会うと避け切れる気がしないし。
一応エルエさんが先頭歩いてくれてるけど、皆怖々進んでいる。
リビングソードたちはほんと直線的に襲ってくるだけで一度避ければはるか後方まで駆け抜けてしまうようだ。
そしてしばらく移動した後止まって、逆方向向いて突撃を繰り返す。
正直パターンさえ覚えれば十分倒せるなこいつ。
とはいえ二体になると難易度がかなり上がるけど。
おっと階段みっけ。
これで二階層とおさらばだぜ。
三階は、っと。
「馬、ですね」
「馬ね」
「馬ある」
ただし首ないけどな。
野生の首なし馬が現れた。
こいつは結構デカいから倒すのに苦労しそうだ。と思ったんだけど。
メンバーがメンバーだけに過剰戦力だった。
まずマイネさんのマンホールがおかしい。
投げるだけで首なし馬が真っ二つになるんだぜ?
あれ絶対マンホールじゃねぇよ。
次にりんりんさん。剣持ってる女の子かと思ったんだけど、意外と魔法の運用上手いんだ。
だから馬が近づく前に魔法で倒し切る。
そしてレイレイさん。
馬の脚を崩して態勢崩れた馬に多段ヒット攻撃で攻撃繋げてノーダメージで倒していく。
意外と強かったんだなこの二人。
うちのテイムキャラもまた強い。
ヘンリエッタさんは剣持ってるのになぜか関節決めにいってレスリングみたいな掬い上げるタックルで馬に襲い掛かる。そこになぜかタイミングよくルルルルーアさんの攻撃魔法がぶち当たり諸共に昇天する。
一時間後にまた会おうぜベイベ。
ティリティさんは暗黒魔法が得意なようで、突撃してくる首なし馬の真下に黒い穴を出現させてどんどん飲み込んでいくのだ。飲み込むだけで終わりってところがまた恐ろしい。普通に敵対しなくてよかった。
エルエさんは相変わらずの無双状態だし、レムさんもあの機体スペックが高すぎるおかげで拳一つで解決できている。
テイムはしてないけどローリィさんもまた魔法に関しては一目置ける人物だった。
普通に大魔法ばんばん使ってるのにMP切れてないもんな。
一度聞いてみたけどまだ半分も消費されてないらしい。
おかげで俺だけ何もしてない状態である。
レーザーソード構えて待ってるんだけどなぁ。どっかの馬来ないかな。
近くまで来る猛者はいるんだけど、俺のもとに辿り着く前に率先してティリティさんが潰していくのでまったく攻撃ができない。ちょっと、悲しい。
結局三階は戦うことすらできずに次の階段前までやってきてしまったのである。
ちくしょう。
せめて四階層はそれなりの活躍ができますように。
じゃないと俺、ただただ女性有力パーティーについてきたついでの雄扱いされちまう。




