319.魔王城
「うー、納得いかないある」
「まだ言ってる」
「気になるなら運営に聞いてみようか。再現できないかどうか」
「せめて誰が犯人かだけでも知りたかったある!」
「ちなみにヒロキは誰が怪しいと思った?」
マイネさんが仕方ないな、と助け船をだしたようだ。
俺に結論出せというのか。
「とりあえず、魚の魔族が入った段階までは関連性があるんだ。鶏を憤慨させて、虎に殴られ、殴られた頬をさすりながら魚の魔族に許可を出したって言ってたから。殴られた頬をさすってるまでは生存してたと思う。つまり怪しいのは魚、蟷螂、蟻、熊の四人だ。ただし蟻の証言でうつむいたままって言ってたからおそらくその時点ですでに死んでいたと思われる。となると容疑者は魚か蟷螂。ただ魚は許可を貰ったから早速水浴びに向かったと言っていたからスデニシンデターを殺害したにしては陽気すぎる。よほどのサイコパスならともかく上司の殺害を行って平然としていられるのは難しいと思う。その点蟷螂は俺はやってないの一点張り、まるで自分は関与してないとでもいうように発見当時に蟻と会話中だったことも鑑みて、犯人は蟷螂の魔族。背中から自慢の鎌でばっさり、ってところかな」
「おぉ。意外としっかりとした推理ある」
「でも魚の魔族も怪しいのは怪しいんだ。魚鱗を使ってばっさりやってた、もう後顧の憂いがないので存分に水浴びできると喜んでいたサイコパス野郎だった、って可能性があるからな」
「運営なら蟷螂をミスリードにしてそのくらいやりそうね」
「ああ。その点でいうならば最後の熊が殺してた可能性もあるし、全員が共謀していた可能性だってある。正直証言だけで犯人特定とかおそらく不可能に近いだろ。殺し方も切り裂いただけだから切り口の特徴もないし」
「じゃあやっぱり殲滅が一番の答えだったわけね」
「そもそも俺らが謎を解く必要はないし。目的は魔王退治なんだから余計なことやってる時間は惜しいだろ」
「それもそうあるな。はぁ。あとで運営に尋ねてみるある」
ようやく納得してくれた皆を引き連れ、俺たちは魔王城へと辿り着く。
意外と長かったな。フィールドが無駄に広いのが悪い。
ここに来るまで何日かかったことか。
意外とレイレイさんとりんりんさんとの旅も悪くなかったな。
俺が唯一の男だからってことで疎外されたりしなかったし。
よし、もうひと踏ん張りだ。
「門番、いないわね?」
「まるで入れるものなら入ってこいって言ってるみたいですね」
「武者震いが止まらないあるよ」
「あるのかないのかどっちなんだ?」
「ないあるよ」
どっちだよ。
表の門はものすごいでかい鉄扉。当然のごとく俺たちでは動かなかったのでエルエさんに押してもらった。
これ、普通のチームはどうやって侵入すればよかったんだろう?
「おそらく、どこかで開門の呪文みたいなのがあるんじゃない?」
「うむ。四天王は皆知っているぞ。吾輩も知っていたのだが主張するまえに開かれてしまった。せっかくダーリンにアピールできたのに」
「いいよ、こんなことで張り合わなくても」
「そ、そうだな。張り合う必要がないくらい吾輩の好意は伝わっているものな」
とかいいながら照れるティリティさん。靄人間なのに仕草が可愛い。
「さぁ、いちゃついてないでさっさと行くわよ」
「私も彼氏欲しいある」
「ヒロキハーレム入っちゃえば?」
「ななななんであるか!?」
しかし、ほんと見事に女性ばっかりだな俺の仲間。
どうしようプレイヤー仲間も結構女性が多いぞ。なのに彼女できないんだ。なんでかなぁ。
輝君に相談したら教えてくれないかなぁ?
「お、魔物発見」
「リビングアーマーあるな」
「鎧だけか。堅そうね」
と、皆が戦闘態勢に移るより早く、レムさん操る人型機械が駆け寄り、渾身の拳がリビングアーマーのバイザー付きヘルムにめり込んだ。
そのままヘルムだけが吹っ飛んでいき、慌てたようにリビングアーマーがヘルムを探しに両手で手探りしながら歩き出す。
ちょっと、可愛い。
あ、こけた。
どうやらあの鎧はヘルムがないと周囲が見えなくなるようだ。
とりあえず可哀そうだし……放置していこう。
俺たちはヘルムを探して彷徨う鎧を放置して、さらに奥へと向かうのだった。
というか、レムさん出会う鎧全員の頭吹っ飛ばしてるけど、彼らに恨みでもあるの?
違う? おろおろしてる姿見るのが楽しいのか。
いらずら好きだから相手の態度に楽しみ見出すタイプなのな。あんまり変な趣味覚えるなよー。
通路に出現するのはどうやら彷徨う鎧、じゃなかったリビングアーマーだけのようだ。
他の魔物はおそらく階層ごとに出現魔物が変わるんだろう。
しかし、と、俺は背後を振り向く。
壁にめり込んだ頭を探しておろおろしている彷徨う鎧たちが無数に彷徨っている。
たまに鎧同士でぶつかって何が起こった!? と焦ってる姿も見受けられた。
が、がんばれ。




