317.四天王殺害事件
「えぇー……」
観音扉を盛大に開き、俺たちは魔王四天王最後の一人がいる、謁見の間へと駆け込んだ。
そこにいたのは……六体の魔族と、彼らの中心で倒れている魔族。
俺たちに誰も気づこうとすらしないので近づいてみると、中心に倒れていた魔族の背中が切られ、血だらけになっているのが見えた。
「あ、あのー、これどういう状況?」
「ん? あ、ああ。なんか気づいたら魔王四天王スデニシンデター様がこのように、何者かに殺されていたのだ」
「な、ナンダッテーッ!?」
なんだこの急展開。
俺たちはただただ立ち尽くす。
そして魔族たちは話しかけないとイベント進行してくれないらしく、同じくスデニシンデターさんを囲んで突っ立ったまま。
ここに、誰も動かない室内が誕生した。
「って、とりあえず話聞くあるよ」
一番最初に耐え切れなくなったのはレイレイさん。
よかった動いていいらしい。
「えーっと、皆さんとりあえず状況説明してください」
「お、おぅ。そうだな」
ようやく動き出す魔族たち。
とりあえずそっちは皆に任せてエルエさんとティリティさんとでスデニシンデターの遺体確認だ。
といっても、背中から袈裟懸けに切り裂かれてるだけで外傷はない。
裏返してみても何らおかしい場所はなかった。
「こりゃ後ろから切られた一択っぽいな」
「魔力痕跡確認できなかったぞ」
「その他外、傷もな、いようでス」
まいった、これは犯人わからんぞ?
全員ぶったおすか。どうせ魔族だし。
「なるほど、あなたが発見した時にはすでに魔王四天王はあの姿だったのね」
「ああ。その通りだ。まさかスデニシンデター様がすでに死んでいるとは思わず声をかけたのだが、反応がなくてな」
いや、これだけ血まみれになってたら気付くだろ。
そう思いながら俺は魔族たちを観察する。
六人の魔族は特徴的だ。
熊の魔族、魚の魔族、蟻の魔族、鶏の魔族、虎の魔族、蟷螂の魔族。
「私は死んでるのに気付いて皆を呼びにいったんだ」
熊の魔族が告げる。
「我々は彼の叫びに気付いて集まった」
「最初に発見したのはそいつだろ。なら犯人はそいつに決まってる」
「シャー」
「お、俺じゃないぞ。やってないからな」
「スデニシンデター様は横柄な態度をとることが多かったからな。おそらく恨みを買ったのだろう」
とりあえず推理系イベントってことでいいんだろうか?
となると、まずは全員の発見時刻の居場所だよな。あと動機についてか。
なので、俺たちは一人一人聞いていくことにした。
熊の魔物。
謁見の間にやってくるとスデニシンデターが死んでいた。
一度彼に触って死んでいるのを確認した後、皆を呼ぶために叫び声をあげた。
以後、皆がやってくるまで死体と二人きり。
動機はないが蟻の魔族がスデニシンデターの悪口を言っているのを聞いたことがある。
魚の魔族。
叫びを聞いて急いで謁見の間にやってきた。それまでは用水路で水浴びをしていた。
……確かに謁見の間に入る際に通路の一部が水浸しになってたな。
動機はないが、虎の魔族が前にスデニシンデター愛用の壺を割って証拠隠滅すべきか焦っていた。
蟻の魔族。
叫びを聞いて急いで謁見の間にやってきた。それまでは蟷螂の魔族と談笑していた。
動機といっていいかわからないが、蟷螂の魔族とスデニシンデター死んでくれればいいのにと笑い合ってたそうだ。
鶏の魔族。
叫びを聞いて思わず叫んだ。じゃなかった謁見の間にやってきた。
途中で魚の魔族にぶつかり羽根が濡れて気持ち悪かったらしい。
動機はないが、熊の魔族がさんざん怒られてスデニシンデターを殺しそうな顔で睨んでいたのを覚えているらしい。
虎の魔族。
叫びを聞いて謁見の間にやってきた。それまでは外を散策していたらしい。
一番最後に謁見の間に辿り着き、濡れた床ですっころんで頭を打ったそうだ。
動機はないが、魚の魔族が用水路で水浴びするのをスデニシンデターから禁止にすると告げられていたのだとか。
蟷螂の魔族。
叫びを聞いて急いで謁見の間にやってきた。それまでは蟻の魔族と談笑していた。
動機はないが自分ではないとしきりに言い張っている。
とりあえず、見た目から考えると蟷螂の魔族が一番犯人候補だよな。
だってこいつ手が凶器だもんよ。
しかし、推理系って俺得意じゃないんだよなぁ。
誰か得意な奴……いそうに、ないな。
「一ついいかな、えっと虎の魔族さん」
「なんだ?」
りんりんさんが手を挙げる。
別に挙手してしゃべる必要ないぞ?
「えっとですね。皆さん叫び声聞いたって話ですけど、熊の魔族さんの叫び、外まで届いたんですか?」
あ、確かに、それは確かにおかし……
「いや、鶏の魔族がコケコッコーと叫んだから何かあったのかと。こいつ朝と夜に一回だけしか鳴かないんだ。今はどっちの時間でもないだろ?」
こいつら、自分たちのこと何々の魔族というのか。名前考えとけよ運営さん。




