316.最後の四天王
明けて翌日。
昨日は魔王四天王三人目を殺っちまったので、これ以上のイベントはごめんだ、とさっさと宿を見つけてログアウト。
そして運営への意見や許可貰った動画上げるのを終えて、そのまま寝た。
翌日、目覚めると、準備を整えさっさとログイン。
おっと、今日は一番早く来ちまったか。
食堂にやってくると、誰も来ていなかった。
しばらくその場で待っていると、朝食と同時にエルエさんがやってくる。
「失礼マスター、遅れまシた」
遅れてないぞ別に。
他の皆も来てないし。
俺の後ろに回ったエルエさんはその場に立つ。
機械なので食事を必要としてないから貴族の執事みたいに後方待機するようだ。
「大好き」
次に来たのはティリティさん。
やってくるなり俺の隣に座ってしなだれかかる。
好感度アップ効果、やばいな。
「おーおー。昨晩はお楽しみでしたねー」
「あ。マイネさんちっす」
「ええ、おはよう。さすがヒロキンさん。私も起きてすぐログインしたのに、もういるし」
「筐体自体が寝床だからな。布団に入るのと同じくらいの速さでログインできるんだ」
「一人暮らしらしいしね。そりゃ誰かに引き留められることもないからいいわよね」
つまりマイネさんは引き留められる誰かと住んでるってことか。
親御さんかな? それとも姉妹? あるいは、恋人?
「あ、女将さん私も朝食お願い」
「あいよ」
食事を続けていると、レムさん抱きしめたりんりんさん、あくび交じりのレイレイさんがやってくる。
さらに遅れてルルルルーアさん。
そしていつの間にか来ていたヘンリエッタさんに呼ばれて仕方なくローリィを起こしに向かうことに。
どうも朝に弱いらしいけど、これだけ女性が揃ってるのにピンポイントで俺に起こせとか、絶対ラッキースケベが仕事してるだろ。
よし、急いで起こしに行かねば!
喜び勇んで部屋へと向かう。そーっと扉を開くと……おい、普通に鍵掛かってねぇじゃん。これ大丈夫か?
抜き足差し足で慎重に部屋に入る。
ベッドの上には寝相の悪い女が一人。
血色悪い癖に寝顔はめちゃくちゃ可愛いなローリィさん。
目元の隈がなければ美少女だろうに、残念女だなぁ。
あと布団と衣類のはだけ具合が絶妙にエロいです。ありがとうございます。
おーい、起きろー。起きないとラッキースケベがさらに仕事しちゃうぞー。
ぱちっ。
そして俺たちは吐息が触れるほどの間近で目が合った。
「に、にぎゃあああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ――――っ!?」
うわ、そんな声だしたら皆が!?
どたどたどたっと楽しそうにやってきたマイネさんたちはどうした襲われた!? と、なんか楽しそうに聞いてきた。
「ローリィさん起きたよー」
「ちょ、ヒロキンさん、そこは慌てふためいて意味不明な言い訳述べるところじゃないの!?」
「なんで好き好んで誤解を引っ被りに行かなきゃいけないんだよ。それより全員ここに来たならこのまま移動しようか」
「そうあるな。そろそろ魔王倒して凱旋あるね」
「無事に帰れるといいけどね」
「ど、どうでもいいから、着替えさせてぇーーっ」
ローリィさんが半泣きだったけど誰も話を聞いちゃいなかった。
さぁ、冒険が俺たちを待ってるぜ。
……と、いう訳で。やってきました魔王四天王の砦。
さすがに最後の砦ということもあって警備が厳重……なぁ気のせいかな? この砦のすぐ後ろにもう一つ砦があるんだが?
「そりゃそうでしょ。ここはなんとかアさんの砦で、あっちが四天王最後の一人がいる砦でしょ」
そうだった。四天王アなんとかさんの根城もあるよね。
本人倒しちゃったから砦だけある状況。誰か捕まってるかもだけどイベント放置で行くつもりなのでここの砦はスルー一択だな。
「じゃああっち行くか」
俺たちに気付いていた門番の魔物、多分ミノタウロスか牛頭鬼かそのあたりの生物が少し悲しそうに俺たちを見送っていた。
だってお前らの主さん冒険者ギルドで即死してるもんよ。仕方ないんだって。
「んじゃ。改めて、最後の四天王がいるだけあってラストステージっぽく魔物の群れが……いないな」
「いないですね。せっかくレムさんがターミネイトモード入ってるのにぃ」
レムさんティリティさんの砦からかっぱらってきた人型機械気に入ったらしくて、メカニカルベアどうするって聞いたら俺にあげるってさ。
ふふ、死体使われただけじゃなくポイ捨てされるとか、メカニカルベアに同情するよ。
「門番はいないみたいだけど、とりあえず中に入りましょうか」
「四天王最後の一人討伐するあるよー」
フラグにならんといいけどな。
さすがにここまで来てるプレイヤーもいないみたいだし、気楽に行こうぜ気楽に。
 




