315.フィフスシード
「なんだかんだで来たなー、最後の町」
「ここがフィフスシードね」
「なんというか……ウエスタン?」
「確かに西部劇とかで見たことある街並みあるな」
おっと酒場も見たことある胸元付近だけの観音扉だぞ。
道端にはあの藁っぽい塊がコロコロしている。
「タンブルウィードって言うあるよアレ」
「知っているのかレイレイさん!?」
馬鹿な!? レイレイさんに教えられただと!?
「あー。あの西部劇とかで道端ころころ転がってるやつね。あれって一つの草じゃなくて無数の枯草の集合体らしいわよ。ああやって遠くに種を残しに行くんだって」
ばかな!? マイネさんまで知ってるだと!?
「じゃあ私からの豆知識はー」
やめろ、やめてくれりんりんさん。
君まで豆知識を披露されてしまうと俺だけ何も知らない無知野郎になってしまうじゃないか。
「ひ。ひぃぃ。人が、人が多い。る、るるるるるルルルルーアさん。ど、どうしたら」
ローリィさんが人酔いしている。
ちなみにヘンリエッタさんは今死亡中なので頼れない。
いやー、まさかルルルルーアさんの放った神聖魔法を自分から食らいに行くとは思わなったよ。
どうでもいいけど、なんであの人は死ぬ直前に「でしてよーっ」って叫ぶんだろうか?
「落ち着いてくださいローリィさん。ほら、ティリティさんみたいに堂々としてるかエルエさんみたいにすまし顔でいればいいんです」
ティリティさん、俺の腕に絡んだままで離れません。好感度アップアイテムおそるべし。ハナコさんに使おうかとも思ったけどこれはさすがに危険すぎる。
ローリィさんにも製法は漏らさないようにしてもらったし、レシピは俺のアイテムボックスに突っ込んで封印指定にした。
作り方はローリィさんとティリティさんと俺しかもう知らない失われたアイテムなのである。
作らないぞ。絶対に作らないからな。
でも一回くらいはハナコさんに腕組んでもらいたいというか……いや、俺は頼らない。こんなチートには頼らず実力で惚れてもらうんだっ。
「魔、法屋見、つけマした」
エルエさんが指差す場所に向かう。
魔法屋さんは何売ってるんだ? そろそろネタ尽きたんじゃ……
おお、テレポートの魔法書じゃん。
フィフスシードではテレポート、パワーアシスト、オールキュア、バレットの四つ。
パワーアシストは多分強化魔法の一つだろう。上位魔法覚えてるから俺にはいらないと思われる。
そもそもパワーアシストすでに覚えてるし。強化魔法覚えた時に他の魔法と一緒に覚えたぞ。
バレットは無属性魔法か。
オールキュアは今まで買ったキュア系統を無駄にする万能状態異常回復魔法だ。やってくれたな運営め。
テレポートをさっそく覚えて使ってみる。
クソっ、今まで行った場所じゃなくてテレポート覚えてから向かった場所が登録されるのかよ。
フィフスシードしか移動できねぇ!?
「なんてこった。痒い所に手が届かねぇ……」
「ありゃー、せっかくのテレポートなのに覚えた場所から転移場所増えてくパターンか」
「面倒ですけど、この先はテレポートが使えると思えば」
「使えないよりは断然いいある」
それはそうだな。あるだけマシ。あるだけマシなんだ。
今は使えない屑スキルだってそのうち化けるんだ。そうだよな。
「よし、気持ちを切り替えて残りの四天王ぶっ倒しに行こうか」
「まずは冒険者ギルドでしょ。あと宿の確保。強制イベント起きない場合は一旦休息」
「おっとそういえば勉強忘れてたある」
「あ、ほんとだ。明日怒られたくないしログアウトしたら終わらせとかないと」
二人は学生さんなのか? それにしてはずっとログインしてる気が、今日、平日だよな?
疑問に思いながらも冒険者ギルドの扉を開く。
「フハハハハハ、人間ども、我が名は魔王四天王が一人、漆黒のア」
うわあああああああああああああああっ!!
唐突すぎるイベント思わずレーザー銃を取り出し後頭部を打ち抜いた。
漆黒のアさんは名前を言い切る前に前のめりに倒れていく。
「えぇ……」
「や、やっちまった。思わずやっちまった」
「これ、ただ四天王語った別人だったら殺人だよね」
ちょ、マイネさんフラグになりそうだからそういうのやめて!?
イベント来ると身構えてはいたけど、まさか冒険者ギルドに乗り込んできてたのが魔王四天王とかさすがに想定外すぎるわ。
先手必勝ということで……
「だ、大丈夫、レッドネームになってない。うん、大丈夫」
「ならいいけど」
あ、歓声上がった。
どうやらマジで魔王四天王が攻めてきてたらしい。
もうだめかと思っていたギルド員たちがもろ手を挙げて俺たちを厚遇してくれた。
よかったよかった。俺の取った選択は一応最高の一手だったようだ。
ってか四天王弱すぎじゃね?




