311.ちょっと行ってくる
もう少し本を読んでいたかったけど、なんかそれどころじゃなくなってきたな。
ルルルルーアさんが自動的にテイムされに来たし。
それに、ヘンリエッタさんがなんか見つけたっぽいんだよね。
『こっちですわ、こっち来てくださいまし、ちょっと、なんで誰もこっち気付かないんですのっ、泣きますわよっ』
と、まぁ五月蠅いので俺が向かってあげるしかないのである。
まったくもう、仕方ないなぁヘンリーさんは。
……ヘンリーさんだと男の人っぽくなるのはなんでだろうな。
やっぱりヘンリエッタさんといった方がいいか。
「ルルルルーアさんそっちは何があるんだ?」
「え? あ、そうですね、あちらによくおられるようです」
なんて白々しく尋ねながらルルルルーアさんを誘導していく。
ほら皆こっちだってよ。
っと、アレが呼んだ理由かな?
無造作に置かれた本の上に、一枚の紙切れが置かれていた。
どうやらこれがイベント開始用のアイテムらしい。
えーっと何々?
―― ヘンリエッタへ ちょっと四天王の砦行ってくる ――
なんでやねんっ!?
ただの引きこもり系魔法使いがなんで魔王四天王のもとに向かってんの!?
「なんてこと!? 四天王の砦に一人で行ってしまわれたのですか!?」
「うわー変なイベント起きそう」
「まぁもうちょっとですし、このくらいのイベントはこなしていきましょう」
「魔王退治のついである!」
結局四天王の砦にはいかないといけないってことか。
仕方ない。さっさと行ってさっさとクリアしようぜ。
「次元刀使う場所あるかしら? ぜひとも試したいわ」
「試すのはいいけど人の居ない方向にな、巻き添えで死にたくないぞ」
「わかってるって。マンホール次元斬りを見せてあげるわ」
新技手に入れたからマイネさんが上機嫌だ。
調子に乗りすぎてやらかさないかちょっと不安になる。
しかし、これはもう少し本読ませて、なんて言える状況じゃないな。
仕方なく、皆揃って四天王の砦へと向かうことになった。
二つ目の砦だけど、なんで人間の町挟んで砦があるんだろうね。
ここの町侵略せずにサーダストリー近くに砦を立てる意味が分からないんだけど、孤立無援になるんじゃないの?
まぁゲームだからそこは気にしちゃダメかな。
とりあえず運営さんに疑問点として挙げておくか。
魔物を撃破しながら四天王の砦へとやってきた。
ふむ。外観はラングウェイの砦と一緒だな。
ただし入り口に見張りが二体いる。
あれは……二足歩行の鎧着込んだカピバラか?
とりあえずエルエさん、レーザーでヘッドショットお願い。
「了解」
閃光が二度瞬いた。
どさりどさりと倒れるカピバラ二体。
うーむ、ちょっとかわいそうな気もするけど放置してたら攻撃したり仲間呼んだりで邪魔しそうだったしな。
とりあえず俺らが侵入するための尊い犠牲ってことで。
拝むだけ拝んでおこう。
「それ、意味あるの?」
「俺のクラスは拝み屋ですがなにか?」
「拝み屋って何よ?」
「こんな簡単に……」
ルルルルーアさんはあっけにとられすぎ。このくらい簡単っしょ。
それにしてもここの警備体制穴だらけすぎないか?
兵士詰め所みたいな場所もないし、おっと、あのあたり体を隠せそうだな。
んー、なんだこれ、ちょっと潜入ミッションみたいになってきたぞ。
このあたりとか影に隠れながら移動できるな。
話し声が聞こえる場所はそっと覗きながら相手が通り過ぎるのを待つ。
二人組か、同時にかかれば……行くぞエルエさん!
音が出ないからレーザー銃での暗殺が捗るなぁ。
そろそろ遮蔽物がなくなってきたから段ボールが欲しい。
「こいつら、ヤリ慣れてない?」
「ぺる様あるぺる様。もう一人の自分出てきそうね」
「あれは盗みに入るんでしょ? 私たち盗むものないわよ。四天王の心でも盗んじゃう?」
「心臓なら盗むっていうか粉砕してやるわよ?」
「不意打ちしまくりだけど、なんか楽だな。砦の構造も前と一緒だからボスの居場所も牢屋もわかるけど、どこ行く?」
「まずは地下牢でいいんじゃない?」
「魔法使いさん捕まってるかな?」
「手遅れになってないといいあるな」
『私のようにですわね』
ヘンリエッタさんは手遅れというか、確実に死んだあとでしかイベントに絡めない状態だったよね。
っと、ここだここだ。
階段を下りて地下牢へと向かう。
えーっと牢屋にいるのはー。相変わらず頭のおかしいタイプのお兄さんとかおばちゃんとかだな。
なんで年頃のお姉さんがいないのか。
あと子供もいないみたいだな。
おっちゃんたちも扉開いたのに出てこようとすらしないし。
えーっとあとはあそこの牢屋が最後かな?
誰かいますかねーっと。
……なんだあれ? ロボット? あ、レムさん無防備に近づいちゃ……ありゃー。




