308.劣化ボスは負けるが運命(さだめ)
「切り離されたら遠慮はいらねぇ!」
「イエスマスター!」
エルエさんともどもレーザー放射。
俺は霊相手にもダメージ当てられるけど、おお、エルエさんも結構ダメージ出せてるな。
さすが古代兵器。幽霊特攻も持ってんのか?
ルルルルーアさんの隣にりんりんさんが陣取り、彼女の腕に抱えられたレムさんが手を動かしてなんかジェスチャーを……あれ、応援してるのか?
まぁいいや、二人にはルルルルーアさんの警護をお願いしよう。
あとレイレイさん、なんで幽体相手に素手で近接戦闘選んでるのかな?
しかも霊体特攻攻撃持ってないからダメージ与えてないし。
「レイレイさん、ヘンリエッタさんだっけ、骸骨もって少し離れて。あいつに操られる前に遠くに!」
「わ、わかったある! うひぃ、しゃれこうべこわいあるーっ」
幽霊は普通に戦えてるのに骸骨は苦手なのか。変わった人だなぁ。
マイネさんもマンホールを投げて攻撃。
おお、マンホール受けてくの字に曲がった。物理攻撃だけどマイネさん幽霊特攻持ってるな。
「ぐおおぉぉぉぉっ!!」
「じゃかましっ!」
マイネさんの一撃で悲鳴が漏れ、それにイラついたマイネさんが戻ってきたマンホールを掴みながら真上から打ち下ろす。
あ、今のトドメだ。
悲鳴を上げながら消失していくクラッター。
まぁレギオン戦体験してただけにちょっと肩透かしだったな。
こんな低レベル状態で味方も少なかったのに楽に勝っちまったし。
『うぅ、悪い夢を見ていたようですわ』
……ん?
は? え? はあぁっ!?
「ああ、ヘンリエッタ様……」
安全が確保され、骸骨に縋りつくルルルルーアさん。そんな彼女の目の前で、骸骨から飛び出るように半透明のグラマラス美女が起き上がる。
『む、あなたたちは何者? 見たところ魔族ではなさそうだけれど……いえ、待って、私は確か魔族に捕まって……ここは、牢屋? 助けに来てくれたのかしら?』
幽霊、おったぁ!!?
『どうしまして、そのような驚いた顔……ん?』
俺はつい、下を見るように促す。
つられて下を見た幽霊さんは、骸骨に縋りつくルルルルーアさんと自分の足が入ったままの骸骨に気づく。
『これは、まさか……死んでる? え、私死んでますわ!? う、うそうそうそっ!? い、いやあぁぁぁぁっ!?』
今気づいたの!?
慌てふためく推定ヘンリエッタさん。
縋りつくように手を前に出してあっちへおろおろこっちへおろおろ、動揺しすぎじゃないですか?
そして聖女なのにヘンリエッタさんの幽体が見えないルルルルーアさん。なんとも切ないなぁ。
なんかこう、蘇生方法とかないんだろうか?
教会……はおそらく向かった時点で昇天しちゃうだろうし。
復活の薬みたいなもの手に入れるしか方法はないんだろうなぁ。
「えっと、ヘンリエッタさんであってます?」
ルルルルーアさんに聞こえないよう、俺はヘンリエッタさんに耳打ちする。
『え、ええ。でしてよ?』
「アナタには三つの道が用意されてます」
『三っつ?』
「一つ。このまま成仏する。二つ、霊体のまま彷徨う、三つ、俺にテイムされて復活方法を探す。どれがいいですか?」
『ど、どれがいいって、て、テイムなんて、ああでも成仏は嫌ですわ、私まだ殿方との逢瀬もしておりませんのにっ、でも幽霊のままなんてどうすればいいかわかりませんし……ええい、仕方ありませんわね』
―― ヘンリエッタさんが仲間になりたそうにしている、テイムしますか? ――
―― ヘンリエッタさんをテイムした! ――
『へ、変なことしないでくださいまし』
幽霊に変なことしたら変態じゃないですか。
俺が触れるのはハナコさんだけだからな。
あ。そうだ。ヘンリエッタさん、憑依とかできる? 自分の骨動かせたりとか。
『え? えーっとこうかしら?』
すぅっと骸骨に吸い込まれるように消えるヘンリエッタさんの幽体。
おお、動いた!?
「ひ、ひえぇ!? ヘンリエッタ様がまた悪霊にぃ!?」
ルルルルーアさん落ち着いて。それは……
「ほ、ホーリーレイ!!」
『でしてよーっ!?』
それ断末魔っ!?
あー、ヘンリエッタさんが成仏してしまった。
まぁテイム済みだからしばらくしたら復帰するけど……骸骨の方は残るのか、回収しておいてあげよう。
まさかの味方に殺されるというヘンリエッタさん。しばらくしたら戻ってくるのはわかったので俺たちは引き上げることに。
「ああ、そうです。次の町を目指すのでしたらこの砦から……」
まさかのルルルルーアさんから次の町の情報を貰えるとは。
情報を得た俺たちは早速次の町に向かうことにしたのだった。
町に着いたら今日はログアウトだな。




