304.死山血河の極悪非道
無数のレーザーが飛び交う。
ガトリングの連射音が響き渡る。
無数の肉片が飛び散り、ハイオーガの群れが肉塊へと変わっては光となって消えていく。
「な、な、な……」
おっし、これで、50。
「ふっ、こちらは51デス」
なんだと!? おのれぇ、空中から乱射は卑怯だぜエルエさん。
「なんだこれは――――っ!!?」
やられる方はたまったもんじゃないだろう。
ハイオーガの群れは地中や物陰から出現したモノ合わせて200ほどいたけどすでに半分消滅だ。
俺たち以外の冒険者も善戦してるし、チームで一体一体確実に仕留めているから徐々に敵だけ減っていく。
俺たちの殲滅速度を見て無理をする必要がないと気づいた彼らは稼ぎ時だとばかりに無理なく戦い始めた。
りんりんさんは彼らの補助に回って回復支援を行っていて、レイレイさんは危なそうなチームを援護している。
そんな二人に混じってメカニカルベアを操り危険そうな敵から殲滅しているレムさん。
うん、向こうは任せてよさそうだ。
「すごい早撃ちだ。名うての冒険者か!?」
「あの女性も強いぞ!?」
ラングウェイはただただ茫然とその絶望を見るしかなかった。
出てくるハイオーガが前方側からことごとく消失していく。
たまに二体以上眉間をレーザーが貫きまとめて死んだりもする。
瞬く間に彼渾身の魔物たちが消失した。
敗因? レーザーに対する備えがないことかな?
あとガトリング砲で対処できたことかな。
ハイオーガいくら筋力強くとも近づく前なら楽勝ですな。
「さて、残るはあんただけよ四天王のら……らなんとか!」
マイネさん、名前覚えきれなかったかぁ。
まぁいいや。
ラングウェイはあまりにも衝撃的すぎる敗北に両ひざついて崩れ落ちている。
うん、ちょうど振り上げたマンホールがいい位置だ。
情報とかほしいわけでもないし。生かして返すともっと危険な魔物連れてきそうだからね。
ここは滅殺の方向で。
「ふんっ」
真上から無防備な頭蓋向けて鉄の塊が振り下ろされる。
うっわ、ひっでぇ一撃だ。
「す、すげぇ、魔王四天王を倒しちまった」
「こ、これが死山血河の……極悪非道、冷酷無比の外道少年か」
あれ? それ俺の二つ名じゃね?
っていうか、皆マイネさんの一撃見てねぇ!?
なんで俺の方ばっか見て慄いてんの!?
「敵性反応……ナシ、クリア。戦闘モー、ドを終了しマス」
エルエさんが空から降りてくるも、冒険者たちの視線は俺に釘付けだ。
いや、野郎じゃなくて可愛いどころに視線向けろよお前ら。
なんで俺ばっか注目して恐れてるんだよっ!?
「ふぅ、ミッション完了。結局何のイベントだったのかしら?」
「おそらくだけど、ただの襲撃イベントって数じゃなかったですよね?」
「うーむ。助っ人来るかと思ったんだけどなぁ」
あるいは倒される役目の誰かだ。
そいつが死ぬことでラングウェイは満足して引き返す、そしてプレイヤーは殺された誰かの上司とかに仇討ちを依頼されてラングウェイの居る場所に向かう、と。
うんまぁ一応襲撃中でも倒せたし、そこまで強くはないけど難易度の問題なんだろうな。
迎え撃つ場合はハイオーガは小出しにされてそこまで多くないハイオークとラングウェイとの戦いになるわけだ。
「一応ラングウェイの居た場所誰か知ってないか情報収集しとこうか」
「あ、そう、そうよね、ラングウェイ、ラングウェイ」
マイネさん俺の言葉であいつの名前思い出したか。
「皆さん大丈夫ですか! って、あれぇ?」
なんかかわいらしい女の子が帰り支度始めた冒険者たちをかき分け現れた。
服装からして神官とか司教とかの役割の人だな。
ちょっと厳かな感じの鉄錫を持った彼女は、出現と同時にエリアヒールを唱えて場にいた冒険者たちすべてを癒す。
「あ、あの、なにやら襲撃があったと、お聞きしたのですが……」
「君は?」
「あ、失礼しました。サーダストリーの聖女ルルルルーアと申します」
るるる……るが多くね?
あ、これ多分重要人物殺される系イベントだったんだ。
どうせ死ぬから名前をちょっと変な名前にしておこうという運営側の魂胆だな。
あるいはただの打ちミスだ、寝ぼけてボタン押したまま寝たらたまに似たような感じになるし。
でもルルルルーアは打ち間違いで出てくるというよりは狙ってやらなきゃでてこないか。
「それで、襲撃は?」
「もう倒したな」
「あ、これ四天王のらん……ランウェェイのドロップよ」
マイネさん、あいつの名前ラングウェイね。ランウェェイじゃないから。というかなんかパリピがテンション爆上げしたみたいな名前になってるから。
「へ? 倒し、倒したんですか!? 四天王を!! す、すごい……」
ふえぇっと驚いたルルルルーアさんはその場にぺたんと座り込む。
「よ、よかったぁ……」
こんな少女一人じゃあの数のハイオーガは倒せないだろうし、やっぱり死ぬイベントっぽいな。
胸糞展開潰せてよかったぜ。
 




