298.二つ目の町
いくつかの戦闘を経てようやく町が見える位置へとやってきた。
ここに来るまでに出てきた魔物は、トツゲキウリボウ、ソードゴブリン、ゴブリンアーチャー、ホーンラビット。
突撃系が多いので盾持ちのマイネさんが大活躍、するわけもなく、遠距離からのレーザー斉射で全部ハチの巣にさせていただいた。
四種類だけならこれでいいんだけど、ゴブリン系は同時出現するからゴブリンのパーティーと考えるともう一種類くらい敵がいてもおかしくない。でも出会わないんだよなぁ。
皆はこれでこのフィールドの敵はすべて見た、と思ってるようなんだけど、うーん。嫌な予感するなぁ。
スライム枠がいないんだよな。どっかにいそうなんだけど。そのフィールドに見合わないレベル帯の敵が。
「ほら、ヒロキンさん、やっぱいないんですって。町も近いですし、さっさと入りましょう」
「入るのは同意見だけど、入るまでは絶対に油断しないこと。なんとなくフラグが立ってる気がするんだ」
「いやフラグって、誰も立ててないでしょヒロキさん」
「先ほどマイネさ、んが立てたかト」
「え、私!?」
「そういえばやっぱいないんですって決めつけるのはフラグになるあるよ」
なんかもう何言ってもフラグに直結しそうな気がするよ。
もはや次の町は目と鼻の先、という段になった時だった。
ものすごい速度で遠くの森から飛び出してきた毛むくじゃらの生物。
即座に俺はレーザーを放つ。
「ふ、フラグが立った!? なんでよぉぉぉっ」
げっ!? マジかあいつ、穿たれながら迫ってきやがる。
「エルエさん援護、全員迎撃態勢! やべぇの来るぞ!!」
よくよく見ればあのでっかい毛むくじゃら、半身がメタリックに黒光りしてやがる。
名前:
種族:メカニカルベア クラス:生体機械
二つ名:なし
Lv:10
HP:153/206
MP:2/2
TP:230/230
GP:0/0
状態:普通
技スキル:
加速Lv2: 瞬間的に速度が上がります。
気配察知Lv1: 貴様、見えているぞ?
ベアクロー: これぞすなわちクマの一撃。
咆哮: 強者の雄たけび。自分よりレベルの低い敵をスタン、恐怖付与。
フルバーストアタック: バーニアを吹かせて超速特攻。
立体機動Lv3: 空中での高速立体機動移動が可能になります。
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多連装ミサイルポッド: 後部射出ポッドからミサイルを発射します。
……なんか、立体起動とか持ってるんだけど?
げっ!? 機械部分からバーニア噴出した。
空中浮いてすごいスピードでこっち来た!?
「マイネさんっ!!」
「ああもう、マンホールは盾じゃないのよ!」
レーザー一斉射をものともせずに空中をかっ飛んできたクマがマンホールに体当たり。
なんとか受け止めたマイネさんだったが、バーニアによる加速のせいで徐々に押され始める。
「なんかダメージ入りにくいと思えば、こいつメタリック部分はレーザーはじいてやがる!」
「肉弾戦ね!」
「きゅぃ!?」
阿保か!? クマに肉弾戦しかけんじゃねぇよ!?
ええい、とりあえず闇の鎌使うしかねぇか。
近接戦闘だが拳で接近するよりマシだろ。
「こ、効果ないある!?」
クマの体だからな、拳の一撃なんてダメージにならんだろ。
「せぇぇ、や!」
おお、刃はやっぱ多少効くな。浅いけど傷ができた。
そういえばレーザーソードならどうだろうか?
機械部分ははじくだろうけど、半身を機能不全にできれば……
よし、武器を変えて応戦だ。
機械部分は放置で、生身部分向けてレーザーソードを振り下ろす。
ブゥンと音が聞こえて血飛沫が舞った。
ちょ、おいおい、切れ味!?
クマの腕が飛んでったぞ!?
さすがにダメージを与えすぎたようでメカニカルベアのヘイトがこちらへと移る。
が、すぐに再び悲鳴を上げて地面に墜落。
なんだ? と思えば、レムさんがクマの頭の上に乗っかり楽しそうに機械いじりを始めていた。
エルエさんは仲間なのでそこまでいじれないが、このクマ相手なら遠慮はいらないとばかりに、レムさんが嬉々としていたずらを始めたのである。
それからしばし、攻撃を与え続けた俺たちは無事にメカニカルベアを撃破した。
ドロップアイテムは各自に配られるようだ。
確認を終えて、俺たちは町門を守る衛兵さんたちのもとへと向かう。
「いや、お前ら初見でメカニカルベア撃破とか、やるな」
「見てたなら助けろよ!?」
「冗談じゃねぇよ。あんな化け物に好き好んで喧嘩売りたくねぇし、お前ら冒険者は助けたら分け前減ったとか難癖付けてくるだろ」
冒険者ェ!? そこは素直に助けてもらっておけよ先輩方っ!!
あんたたちが安いプライド守ろうとしたせいで兵士たちが助けなくなってるんじゃん。
せめてど素人どもは助けてやってください兵士さん。
 




