296.臨時パーティー
「私のもふもふぅぅぅ」
俺は涙を飲んでレムさんを救出する、
目の前には涙目で両手を伸ばし、俺からレムさんを奪い取ろうとしながらも、レムさんに嫌われたくないがために空を切る両手を見送る女の子が一人。
それを呆れた顔で見送るマイネさんともう一人の女の子。
今、俺の傍にはエルエさんとレムさん、マイネさん、そして二人の女の子プレイヤーが集まっていた。
このうち一人はレムさん目当てでもふりに来たプレイヤーで、ポニーテールの元気な女の子。
もう一人はお団子頭が可愛らしい格闘家スタイルの女の子。その袖千切ったような服、どこで売ってたの?
ダメージジーンズならぬダメージ胴着かな?
「すまないある~。りんりんは可愛いものに目がないある」
「わかるんだけど、レムさんが限界に来てるから。機械いじらせてストレス解消させてやらないと」
「機械……つまり機械を貢げばもふらせてくれると!!」
違う、そうじゃない。
レムさんも首を左右に振りまくってる。
「な、ならこれはどう! 前に潜ったダンジョンで手に入れたよくわからない機械」
キューブ状の黒いボックスを取り出すりんりんさん。
するとレムさんの目の色が変わった。
そして葛藤を始めるレムさん。もふられたくはないがその機械はちょっと触ってみたい。そんな心情が行動に表れていた。
ああっ、悪魔の誘いに乗っちまった。
レムさんはボックスを受け取り、機械いじりしながらもふられ始める。
なら満足するまでもふるがいいさ。
俺はレムさんをりんりんさんにお任せし、残りの三人に向き直る。
「とりあえず遅くなったけど初めまして。おそらくだけど異世界掲示板の2枚目書いた人だよね?」
「よくわかったあるな。950番踏んでしまったある。レイレイね」
「レイレイさんね。よろしく。一応自己紹介するけど、ヒロキです」
「私はマイネよ。よろしく」
「はいな。レイレイとりんりんある。二人でパーティー組んで遺跡アタックを配信してたあるよ」
ほほぅ配信者か。
何気に俺以外の配信者って誰にも会ってなかったんだよな。
せっかくならってことでお二人が投稿してる配信について教えてもらう。
あとでログアウト後に見てみよう。
「それで、俺らはこれから次の町に行こうかと思うんだけど……どうする?」
と、いまだに機械をいじっているレムさんをすっぽり包み込むように愛でるりんりんさんを見ながら告げる。
ようするに、レムさんと別れることになるけど、りんりんさん引き離してくれる? と告げてみたのだ。
「それあるが、もしお二人御迷惑でなければしばらくご一緒お願いできないあるか? りんりんあのままだとレムさんと離れそうにないあるよ~」
俺はマイネさんを顔を見合わせる。
「俺は別にいいですけど、マイネさんどうする?」
「私はいいわよ?」
「じゃあ、えっと。動画取ってるししばらくしたら配信するけど、大丈夫なら」
「それはお互い様ネ。こちらも配信中あるよ。しかも生配信」
そこ威張るとこか!?
いや、まぁいいか。
「じゃあパーティー組みましょうか」
「ゲーム内電話持ってるならアドレス交換しとく?」
「もぅ、女の子とパーティー組めるからってヒロキンさんは」
え、ちょっとマイネさん、それは違……
「えー、男性にアドレス教えるのはなぁー」
「あれー、いいあるかりんりん~、ヒロキさんはレムさんの飼い主あるよ~」
「そ、それはっ!? ぬ、ぬぐぐ、卑怯な、レムさんを盾に私のアドレスを聞き出してデートに誘おうだなんてっ」
デートなんて一言も言ってませんが?
「くっ、これがくっころの心境!? くっ、殺せ!」
といいながらりんりんさんがアドレス交換してくる。
なんか、すごく酷い言いがかりを受けた気がするので素直に登録したくないんだけど……
「あはは、すごく納得いってない顔してる」
「マイネさん、イジメ、ダメ、ゼッタイ」
「はいはい、ごめんごめん、っていうかレイレイさんもりんりんさんもノリがいいね」
「生配信してるとお約束とかある程度身についてくるあるよ」
「レイレイの口調もキャラづくりの一環なのよ。いろいろ試して最近中華風格闘少女に収まったところなの」
「あ。それ言っちゃダメな奴っ」
あるある口調が崩れた。これは素でダメ出ししたな。りんりんさんは気づいてないみたいだけど。
「エルエさん、人数増えたけど大丈夫?」
「何が大丈夫か、はわかりま、せんが、戦闘に関、しては問題な、い、と定義します」
パーティーを組むと、ステータス画面にパーティーメンバーの簡易ステータスが表示された。
HPとMPしか見られないのと状態が見られるだけだけど、結構便利だよね。これくらい簡略化されてた方が見やすいし。
そんじゃま、次の町へと向かいますか。




