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28.おめでとう、僕が七不思議だ

 ごくり、誰かの喉が鳴った。

 目の前の少年が笑顔を潜め、俯き目元を隠す。

 口元だけがニタリと微笑み、肩が震えだす。


「僕が、七不思議だって? ふふ、ふふふ……」


 そして、次の瞬間、説明士輝は顔を上げた。


「そうだよ僕が七不思議の一つ、全ての教室に存在する生徒、説明士輝だよ。おめでとうヒロキ君、君が僕に気付いた最初の一人だよ」


 満面の笑顔でそう告げた。


「「……」」


 ……ん? あれ? あの、リアクションそれだけ?


「ってオイ輝。それだけかよ?」


「うん? それだけだけど? だって僕の役割は説明役だし」


 え? マジで。


「七不思議の中でも一番簡単な部類だから難易度的にも1だよ」


「難易度? 1? というか、そもそも、輝は七不思議だよな。正体バレたら攻撃して来たりとか、専用フィールドで即死発動、みたいなの、しないのか?」


「何を期待されてるのかわかんないけど、僕は僕だよ? ただ不思議の一つなだけでこの学校の全ての教室で説明役やってるってだけだね」


「な、成る程……成る程?」


 つまり、学園七不思議だからと言ってテケテケさんみたいに襲いかかって来るだけってわけじゃないのか。

 普通にただ不思議な現象があるってだけの奴もある訳な。


「んで、難易度ってのは?」


「うん、七不思議にはそれぞれ難易度があってね。難易度の軽い物から攻略していくと攻略がしやすくなるんだ。この学校だと、全ての教室に居る説明士輝が1。徘徊する人面犬が2。3がテケテケさん、4がトイレのハナコさん、5が体育館で跳ねるボール、6が音楽室の怪、7が開かずの間だね」


 開かずの間最高難易度だってよ。


「トイレよりボールの方が上なの?」


「うん。ハナコさんが自由に動けるようになるし、ボールも襲ってくるからね」


「なるほど、そのハナコさんはトイレのハナコさん倒してなくても弱体化されるの?」


「ハナコさん自身そこに居るし、どの道弱体化AIだね」


「はぁ? そこに居るってどういう……オイヒロキ、視線逸らすな」


 がしっと肩をユウに掴まれる。

 ち、違うんです、説明するほどでもないかなって、ほら、俺チューバーだし、ちゃんと放送済みだし、ひぃっ!? やめて暴力反対。飛びます、飛びますから。


「って、なんで飛んでんだよ。しかも金の音すらしねぇし」


 お金は基本アイテムボックスに入れてるあるしね。ズボンのポッケ探したって塩瓶くらいしか出てこんよ。


「かー、なんだよ、ヒロキ、テメェ俺らより全然進んでんじゃねーか」


「あ、ちょっとヨシキ、今掲示板捜索して見たらヒロキっぽいのが動画出してるわよ。投げ銭が凄い事になってる」


「お、マジで。やった、生活費ができた!」


『よかったわねヒロキ。ホントに、餓死とかで死ななくて』


 ホントにね。千円でも入ってくれれば恩の字と思ったんだけど、俺も確認してみればなんか普通に光熱費やら何やら払ってもおつりが来る、というか、こいつめちゃくちゃ万札投げてね?


「うっわ、すっげ。なんだコイツ。ハナコさんガチ勢だな」


「つーことは、だ。ヒロキはテケテケさんとハナコさんをテイムしてるってこと、か?」


「あー、まぁそんなとこです」


 頭を掻きながら罰が悪そうに告げる。

 隠す事でもないから話すのはいいんだけど、皆には見えないからなぁ。


「うぅ、幽霊が二匹も傍に居ると思ったら気分悪くなってきたわ」


「見えねぇんだから問題ねーだろ」


「ヒバリの幽霊嫌いは筋金入りだからなぁ」


「でも、夜の学園で肝試しか。ちょっと面白そうだよな」


「なんだユウ、お前もしかして霊感取る気か?」


「まだ決めかねてるけど、ちょっと面白そうだろ」


「まぁ好きにすりゃいいんだが、おい、マジで大丈夫かヒバリ?」


「え、ええ、大丈夫よ、うーん」


 あ、これはダメだ。

 マズッたなぁ、ヒバリさん幽霊嫌いだって分かってたのに、告げちゃうのは不味かったよな。

 でもこれゲームだからそこまで毛嫌いする必要はないんだけど……

 現実と混同しちゃうタイプなのかな?

 まぁ俺も人の事は言えないけどな。ハナコさんは現実に居るし。


『ヒロキ、正気に戻れー、私は現実世界にはいないわよー』


『ダメねぇ、聞いてない、というかシャットダウンしてるわ。これは考え変える気がないわね』


「あー、こりゃヒバリが慣れるまでは俺は霊感スキル取らない方が良さそうだな」


「なに、ヨシキも取るつもりだったの?」


「ハナコさん一度見てみたいからな。でもま、急ぐ訳でもねぇし、気が向いた時にするわ」


「んー、じゃああーしも取らないでおくか。ヒバリが嫌がるのに無理矢理同行させてもアレだしな」


 それだと俺は離れた方がいいのかな?

 折角出来た縁だけど、今回は仕方ないけど合わなかったということで。


「ヒバリさん具合悪そうだし保健室に連れて行った方がいいんじゃないかな?」


「あー、そうだな。仕方ねェ肩貸すぞ」


「逆手伝うわ」


 ヨシキとユウに連れられて、ヒバリが去っていく。

 さて、結局独りになっちまったか。


「んー、テケテケさんもハナコさんもテイムされてるし、僕もテイムされた方がいいのかなぁ?」


「輝落ち付け。俺は別に七不思議を集めてる訳じゃないからな」


 危ない危ない、危うくクラスメイトがテイムされに来る所だった。

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