284.電車を操る悪魔
「なんだ? 電車が駅に止まらない!?」
「ちょ、どうなってんの!? キサラギ駅とかじゃなかったの!?」
「あ、あれ? おかしいな。他の奴の話じゃダイアログがでなくなったらキサラギ駅行きだっていう……」
変だ。何が変かわからんが、これは確かに変だ。
他の駅に止まらない。
電車はずっと走り続ける。
ロボ子さんの話では人外の異物が引き起こしているらしい。
「動力部ってどの辺りにあるんだ?」
「向こうの一番奥でス」
向こうの一番奥……先頭車両!?
車掌さんが居る部屋か!?
俺はロボ子さんと共に走りだす。
周辺にいたプレイヤー達も何かわかったんだと遅れて着いて来る。
「おい君、何かわかったのか!?」
「ウチのロボ子さんが人以外の異物が先頭車両の車掌さんが居る場所にいるんだと」
「運転席か!?」
「ちょっと、それて電車ジャックじゃん!」
「ふざけんな! 私の乗ってる電車で何やらかしてくれてんだっ」
「急いで止めねぇと脱線とかするんじゃねぇだろうな!?」
パニックになりそうだけど致し方ない。とりあえず原因を止めに行かないとッ。
そのまま皆で先頭車両までやってくる。
運転席では車掌さんがあわあわしながら何かやっていた。
その車掌さんの目の前には機械を楽しそうに操るヌイグルミみたいな小動物。
なんだあれ?
「アレが原因?」
「ちょ、可愛いっ! ねぇ、可愛いが過ぎるんだけど!?」
円らな瞳のその生物は、蝙蝠みたいな羽を背中につけてぱたぱた動かしながら空中に浮いてレバーを弄ったりボタンを弄ったりしている。
狸、いや顔立ちはハクビシンに似てるかな? 体つきはティディベアみたいな愛くるしいヌイグルミ体型だ。
名前:
種族:グレムリン クラス:小悪魔
二つ名:悪戯小悪魔
Lv:1
HP:14/14
MP:5/5
TP:8/8
GP:2/2
状態:夢中
技スキル:
機械弄りLv2: 機械を操ることに長けていきます。
もふっとぱんち: もふもふな拳でパンチします。ダメージは0、対象に精神回復付与
飛行: 空を飛べます。最高高度3m程。
でびでび槍術Lv1: 悪魔族に伝わる槍術。
いたずらLv1: レベルに応じたいたずらを思い付きます。
機械特攻: 機械系に特攻。能力増加。
「グレムリンだーっ!?」
「グレムリン?」
「あーっ、機械を操るいたずら悪魔っ」
ゲームやアニメによっては小鬼だったり妖精だったりするが、このゲームでは小悪魔に分類されているようだ。
「マスター、天敵、です」
君機械だもんね。確かに天敵だ。
そしてグレムリンを討伐しようとしたプレイヤーたちが可愛さに魅了されたプレイヤーたちに妨害される。
あ、これなんかよくわからんうちに討伐難易度上がってる!?
「ちょ、お前ら何してんだ!?」
「あんな可愛い子に何する気よ!」
「ただのいたずらなんだから笑って許してやれよ」
「お前ら頭湧いてんの!? あいつ放置してたら俺ら纏めてデッドエンドだぞ!?」
「いいじゃん、俺ら死んでも生き返るし」
「ふざけんな! だったらテメェこの場でさっさと死んでくれやっ!!」
「俺は死にたくねぇんだよ!!」
「クソ、埒があかねぇ、あいつ等ぶっ倒して止めるぞ!!」
「グレムリンちゃんは私が守るっ!!」
一つの車両を東西に分け、プレイヤー達が激突する。
狭いのに暴れんな馬鹿共!?
「マスター、どうします!?」
「テイムを敢行してみよう。そこのグレムリン擁護派さん。テイムなら問題無いだろ?」
「問題あるわよ! 他人にテイムされたらもう会えないでしょ!?」
「会えるようになるとなれば?」
「!? ……詳しい話を聞きましょうか?」
詳しい話といってもウチの広場でおさわり自由にしてやればいいかな、と。
「その話乗った! このままじゃ討伐されるか、全滅した後会えなくなるのは確かよね」
「どうでもいいから早く止めてくれ!!」
よし、双方バトって引くに引けないようなので、早急にアレをテイムするとしよう。
HPが弱過ぎるから攻撃はできないな。手加減出来ないし。
テイム! あ、くそ、全然テイムされてくれない。
そりゃそうか、相手はこちらにテイムされたいわけじゃないし。
でもレベル差が結構あるから行けるんじゃ……いや、状態異常のせいか! 夢中状態だからこちらに対して興味を示してないんだ。
となると、これしかない!
そーっと後ろから近づき、羽の一つを掴む。
驚いたグレムリンがようやくこちらに振り向いた。
「きゅぃっ!?」
「話は通じるか? 悪いがおまえさんをテイムする。返事は如何に!」
「きゅぃぃ!?」
「えーっと、ほら、これが欲しくないかな? テイムされたらあげるぞー」
と、取り出したのは量産型レーザー銃。
怯えていたグレムリンが眼を見開き手を伸ばす。
おっとテイムされてからだぜ?
―― グレムリンがモノ欲しそうにしている、テイムしますか? ――
―― グレムリン♀をテイムした! ――
ちょ、♀部分何時判別したの!?




