283.帰りも電車で帰ります
キマリスは帰って行った。
最後の質問には笑顔だけを残して帰って行きやがった。
それにしても……あれだけ欲しいって言ってたイケニエ用の肉、持って帰らなかったな。床に置いたまま忘れて帰りやがった。
別に契約不履行じゃないぞ。相手が持って帰らなかっただけだからなっ。
こっちは肉渡すつもりだったんだぞ?
「えーっと、結局その肉、どうするの?」
「一応回収しとく。もしかしたらキマリスが取りに来るかもしれないからな。キマリス用に保存しとくよ。一応あいつが今の持ち主ってことになるし、預かり品だな」
「そう。じゃあ戻りましょうか。上の階に転移陣が出てるから遺跡に入る手前に戻るはずよ」
「了解、んじゃ行こうか?」
「解。マスター、着いて行けバ、いいで、すか?」
「ああ。一緒に着いて来てくれ」
「あら? ヒロキ君はテイムしないの?」
テイム?
いや、でもマスター登録出来た訳だし俺のパーティーメンバーになったんじゃ?
「NPC系はテイムしておかないとほら、死んだらそれまでだし、悪意ある相手にテイムされるかもしれないわよ、テイムしてなかったら例えパーティーメンバーだったとしても別の人にテイムされるって、掲示板見てない?」
「うえ!? そんな酷いことあるの!?」
そういえばテイム保持者を殺してでもテイム契約奪い取るヤツもいるくらいだし、実行する奴が居ないとも限らないのか。
第三回イベントに関して俺が死んだ場合どうなるのか運営に聞いておかないと。
―― 古代兵器乙女型LXT-21cが仲間になりたそうにしている、テイムしますか? ――
―― 古代兵器乙女型LXT-21cをテイムした! ――
これでよし。名称は帰ってから落ち着いて決めるとしよう。
ずいぶん長い名前みたいだし。
「それじゃ、帰りましょ」
リテアさんと古代兵器猟犬型LXT-21bと共に地上へと戻る。
ちなみに早々犬の名前をポチに変えてたリテアさん。もうちょっと名前考えた方が……
地上に戻ると、元の沼地に入る手前に出現していた。
ダンジョンから戻る際にあるワープ施設。便利だけどどこに出るか分からないのはちょっと怖いよな。
まぁ問題は無いからいいけども。
「じゃ、私は帰るわね」
「あ、ちょっとお待ちを。折角なのでよかったら遊びに来て下さい」
「ん? あら。此処を尋ねればいいの?」
UFOな自宅がある場所を携帯電話で送っておく。これでリテアさんもウチを利用できるようになるし、接点が出来たってことでまた会えるでしょ。
「なんか変なのばっかいますけど、気が向いたら来てください、皆喜ぶと思うので」
「ええ。気が向いたら訪ねてみるわ」
リテアさんたちが去っていく。
後に残ったのは俺と、ナース服を着た人型機械の女の子だけだった。
……帰るか。
「んじゃ道すがら君の性能教えてくれる?」
駅に向って歩きながら、彼女から説明を受ける。
どうやら素体の状態だとパンチやキックしか使えないらしい。
あと夜伽用の身体ではあるが、まだ経験は無いとのこと。寝ている間に襲われた様子もなく全身故障もないのでオールグリーンなのだとか。ゲーム内でその辺り奪われることはないとおもうのですが?
そして武装に関しては、武器を解析して取り込むことで自在に扱うことが出来るそうだ。
試しに量産型のレーザー銃渡してみたら取り込んで解析を始めた。
始めたのは良いけど解析終了までしばらくかかるそうなので今すぐには使えないらしい。
なので、泥沼の下にあった遺跡に居た機械型ゴーレム達の残骸アイテムをついでに取り込んでもらうことにした。取り込んでパワーアップか。未知なるモノさんみたいな機械兵器だな。
駅へと辿りつき、ホームで二人、電車を待つ。
後ろに気を付けとかないとな。幽霊がたまにいる時があるんだよ。
押されてデッドエンドとか冗談じゃないし、しっかりと気を付けないと……
「マスター、この機械、何か……」
電車が来たので二人で乗った。
その瞬間、困惑気味に告げるロボ子さん。
何かってなんぞ?
あ、ドアしまった。
「何か、嫌な気配がし、マス。これ、は……検索にあり、マセん。名称不明種族不明、しかしな、がら、人とは違う、モノが、動力設備? に、何か行ってお、リマす」
動力設備に何か行ってる?
あ、電車動き出した。
……選択肢、でてこねぇ!?
「あれ? いつものダイアログがでない?」
「ちょっと、どうなってんの!?」
「バグか? GMコールした方が良い?」
「いや待て。これイベントだ! この電車キサラギ駅に向うぞきっと」
おいおい、二度続けてキサラギ駅行きはちょっとどうなんよ?
「マスター、ここは危険です。脱出を推、奨」
確かに何かしらのイベントみたいだな。デスゲーム委員会か?
しかし、警戒してたわりには何も起きない。
そして警戒することしばし。電車は、駅に止まることなく走り続け、俺はようやく異変の間違いに気付いた。




