280.唯一の戦利品
「えっと、ごめんね?」
リテアさんが謝る。
ようやく気付いてくれました。俺が戦利品一つもないってことに。
なので、上の沼地ででた敵三種のドロップ一式と、この遺跡にいた敵4種のドロップ一式を貰えることになった。
それと、ボスドロップは山分けになった。
さすがにボスまでおんぶに抱っこは俺としても避けたいので、ここは全力で頑張らないとな。
んで、目の前にあるのがそのボス部屋と思われる扉の前である。
「よし、気持ちを入れ変えて行きましょうか」
「そっすね。二人で倒せるボスだと期待しましょう」
「あー、レイド戦の可能性もあるか、ま、大丈夫でしょ。出現する敵弱かったし」
それもそうか。最悪……悪魔召喚するしかないだろうな。
一応奥の手があるし、行くだけ行ってみよう。
レベル的にも余程の敵が襲ってこない限りは大丈夫なはずだ。フラグじゃ、ないからね?
扉を開いた先にあったのは……デカい機械作りのゴーレムだった。
これ、レイド、いや高ランクパーティー用ボスじゃね?
俺達の進入を感知して、ぶんっとモノアイが光り輝く。
二つ眼じゃなくて一つ眼のロボットかよ!?
右腕はガトリング砲、左腕はパイルバンカー。やっべ、なんか男達の欲望を具現化させたようなロボットだ。これでドリルまで完備されてれば終わってた。
って、ブースター移動かよ!?
背後に設置しているんだろうブースターで急加速して迫ってくる。
さすがに重量物のタックルは当たるだけで挽肉確定だ。
とはいえ、逃げる時にリテアさんと逆に逃げたせいで分断されてしまった。
埴輪たちが攻撃しまくってるのでヘイトは向こうに向ったみたいだけど。
でも、だからこそ、こっちへの注意が散漫なんだよな。
壁際でリテアさんへと体を向けたロボット向けて、レーザー銃を連射する。
さすが高位力の宇宙人レーザー銃。ダメージがパネェぜ。
っと、ヘイトがこっちに移ったか。
ブースターを点火して俺へと突撃、する途中で再びヘイトがリテアさんへと向ったらしく方向転換。
リテアさんはくるりと華麗に体を回転させて逃げ切る。
回転といっても横回転じゃなく縦回転。両手を床についての間横への回転だ。
側転ともいう。
リテアさんがやると綺麗に弧を描いて見えるからいいよな。俺がやるとあんなにきれいに回れない、というか回ることすら不可能だ。
壁に当たる直前に避けた御蔭でロボットは壁に激突。
途中で止まったりはしないようだ。
御蔭でかなり大ダメージを与えられた。
というか……これが攻略法か!?
俺とリテアさんは視線を交わして即座に動きだす。
ロボットがリテアさんからこちらにヘイトを移し、突撃。
リテアさん程の綺麗さは無いけどギリギリで回避。
ロボットは止まり切れずに壁に激突して自らを破壊して行く。
これなら充分勝てそうだ。
まぁ一度でもミスったらぷちっと潰れるけどなっ。
ぎゃぁぁ!? あっぶね。危うく逃げ遅れて死ぬとこだった。
HPが早々に半分削れた。
怒り狂ったらしいロボットが赤く灼熱する。
おお、速度が上がって攻撃力も上がったぞ。
御蔭で突進力も増加して壁に激突した際のダメージも増加したようだ。
「来るよ!」
既に攻略法は確定した。
あとは速くなった分こちらもタイミングを見極めて逃げるだけだ。
たまにレーザー銃でヘイト管理を行い、リテアさんと協力して相手のHPをちまちま削って行く。
久々の手に汗握る戦いだな。
一瞬のミスで即死確定とは……
でも、なんかオラワクワクすっぞ。とか言いたくなるくらいに高揚している。
よし、そろそろ終わりだ。
こういう時は終わり際が一番ヤバいんだ。
勝って兜の緒を締めよってな。
そら、この回避で終わりっ。
ロボットが壁に激突し、HPと共にその体が砕け散った。
俺は一気に距離を取り、周辺共々ロボットを警戒する。
自爆攻撃は、なさそうだな。
恐る恐る近づいてみる。
どうやらロボットの残骸は回収可能らしい。
リテアさんと視線を交わし、これも半分づつ回収することにした。
ガトリング砲、回収しました。
「さて、とりあえずボスは倒したけど、あっちが宝物庫かしら?」
リテアさんが早速扉へと向う。
俺もそちらへ向おう、と思い歩き出した俺は、ふと、一枚だけ色の違う床を見付けた。
これ……もしかして?
「おーい、宝物見付けたよ?」
「こっちも、多分隠し階段見付けた」
「え? 隠し階段!?」
とりあえずリテアさんに合流して、宝物を分ける。
その後、埴輪の攻撃で色違いの床を爆破。
現れた階段を二人で降りて行くと……そこには、まさかのモノが待っていた。
「これは凄いわね」
「人型ゴーレム? いや、機械だからアンドロイド?」
一体の人型ゴーレムと、一体の動物型ゴーレムがそこにいた。
いや機械だからやはりアンドロイドと言うべきだろうか?
古代機神の発見、それは今回の俺の唯一の戦果と言ってよかったのかもしれない。
これもまた、二人で分けることになったのである。
 




