270.第一回幻想生物巡り3
「成る程、鞭の素材探しと幻想生物の探索か。珍しくこのような山頂まで来た者が居ると思ったがそういうことならば歓迎しよう。ここは天狗たちの楽園と言ったところだ」
「すいませんねわざわざ」
「構わぬ。どうせこの辺りに来るのは修行目的か自分を強いと勘違いしたただの頭のおかしいヤツだけだ」
まぁ、敵の平均レベルが60前後だったから先ず来ないだろうな。
もうしばらくしたら来るかもだから一応伝えておくか。
「ほぅ、もう間もなくここまで到達するモノが出るかもしれぬのか。あまり良い素行ではないものも幾人かいるというのなら確かに気を付けるにこしたことはないだろうな。まぁこの儂をどうにか出来るモノがおるともわからんがのぅ。呵呵呵」
「え? そんな強いのか」
「こらスレイさん」
「呵呵呵、よいよい、どうせ鑑定スキルを持っていよう、見てもよいぞ」
いいの!?
「で、では遠慮なく」
名前:サナトクマラ(???)
種族:天狗? クラス:護法魔王尊
二つ名:鞍馬天狗、アセンデッド・マスター
Lv:???
HP:???/???
MP:93200/93200
TP:99000/99000
GP:???/???
状態:普通
技スキル:
???Lv1720: ???
???Lv1530: ???
???Lv800: ???
???: ???
???: ???
???: ???
以下略
―― 相手の隠蔽を看破しました! ――
……うん、ツッコミどころが多過ぎる。
「呵呵呵、どうせ名前すらわからんかったであろう。鞍馬天狗と呼ぶことをゆるしてしんぜよう」
いや、名前サナトクマラとか出てるんだけど?
なんだっけサナトクマラ? どっかで聞いた気がするんだけど。
しかも名前のところ、カッコでまだ真名を隠している様子だ。
「ふーん、鞍馬天狗ねー」
「うむ。牛若を育てたこともある。牛若には会ったか?」
「いえ、会ってないですけど……いるんです?」
牛若っていったら鞍馬天狗に修行を付けて貰った牛若丸。またの名を源義経だったはず。
ここはゲーム世界だから本来いるはずのない、っていうか現代では既に死んでる牛若丸も健在ってことなのか。
え、ってことは源氏平氏とか戦国大名とか生きて……
待てよ、確かどっかの学校で戦争してる幽霊が居るとかあったな。
となると生身ではなく幽霊として出現する可能性もあるのか。
「おお、そうだ。そなたら大杉苑瞑想道場で訓練していくか? 牛若が訓練しておった場所なのだがこの近くにあるのだ。案内しよう」
あれ? いつの間にか俺達修行することになってないです?
「あ、そうだ。鞍馬様なら知ってるんじゃないかな?」
「うむ?」
「ウチの味方に天使と妖精がいるんです。天界か妖精郷に返したいんですけど、入口とか知りませんかね?」
「ふむ。天界と妖精郷なぁ。さすがに儂では門外漢だからのぅ。魔界への入り口ならば儂の寺にあるのじゃが」
「あんの!?」
いやいや、なんでそんなもんが天狗達の村に!? 村かどうかすら知らんけども。
「儂の現実世界にある寺にもあるだろう? 魔王寺だかなんかそんな感じのアレじゃ。アレに似たのがこの世界にもあってのぅ」
いきなりメタ発言してるし、このゲームところどころでプレイヤーに優しくないな。
「そこの六芒星が入口になっておるのだ。開通の儀を行うか魔界由来のアイテムを持っておれば通れるはずじゃが、持っておるか?」
さすがに持ってないな。
「悪魔召喚の書は持ってるけど、他は……死者の書とか使えるかな?」
「使えるなら私のドロップアイテムである解放の呪宝じゃない? アレだったら封印されたモノは大体開けるし」
ああ、なるほど、そっちもあるか。
「ソレが何か知らんが、下手に開くと向こうから大悪魔共がこぞってやってくるぞ? 世界を滅ぼしたいならやるとよい」
「よし、絶対使わないでおきます」
余程ヤバそうな場所では解放の呪宝使わないようにしないと余計な封印まで解いてしまいそうだ。
「ここだ。といっても何もない場所だがのぅ」
確かに何もない。
木々の間隔が開かれていて広場になっているだけで、根っこが飛び出ていたり日陰だったり日向だったりで、普通の山に出来た空き地である。
まぁ段差とかあるから駆け回る時はちょっと大変かな。
コレを気にしながら走ってればその内悪路を気にせず走りまわれるようにはなるかもしれない。
ちょっとその辺り訓練してみるか。
「あ、ヒロキがなんか走りだした?」
「おお、確かに此処で訓練すれば何かしらひらめきがあるかもしれんぞ。おらもやる!」
ネネコさんが後ろから走って来て追い付いてくる。どうやら並走してくれるようだ。
しかし、ゲームで走って疲れるってどうなのか。現実世界の身体大丈夫か?




