266.田舎名所巡り・5
「以上で本日の案内を終わらせていただきます」
本当に半日コースだったな。
意外といろいろなところを見に行った気がする。
「世話になったな案内人」
「いえ、僕も滅多に見ない光景見れましたし、あの滝に滝霊王さんがいるとか初めて知りましたよ」
一応チューブに流す気はあるけど、あんまり刺激しないように伝えとかないと天津神さんが復活してしまうからな。
下手に復活して変なイベント発動されると困るのでしっかり伝えよう。
ただし、しっかりし過ぎて振りにならないようにしないとな。
「それじゃ、今日は僕はこの辺でログアウトしますね」
「ああ、またな」
再び商店街に戻ってきたところで案内人さんがログアウトしていった。
俺と未知なるモノさんも此処で解散だ。
未知なるモノさん、なんか前回イベントで助けた娘と会うらしい。
もしかしてカップリングできちゃうのかな。
「さて、この後どーすんのヒロキ?」
「とりあえず本屋寄ってみよう。だいぶ古い本屋っぽいから変わった本が売ってるかもだし」
「本っていえば、確か悪魔召喚の本を一つ持ってたっすね」
「そういえばそうだな。使う機会が無かったから忘れてた。まぁあいつ等ってイケニエとかいるし、必要になった時に呼びだす感じでよかろ。それより本屋寄ったら家に帰って格闘大会の景品整理しようぜ。全員でやった方が楽しそうだし」
「そういえば私も何やら貰いましたよ。エキシビジョンで盛り上げてくれたお礼、だそうです」
コトリさんも貰ってたんだ。
っと、ここだ。
古本屋に辿りついたので、皆して入る。
思い思いに見て貰うことにしたんだけど、結構狭いな店内。
「ギーァ?」
ギーァ、その手で掴めるか? 切り裂くなよ、金払わんぞ?
「人間の知識もいろいろあるんっすねー」
「ん、蜂の本ミツケタ。容姿似てる。ワタシの縁者?」
「さすがにソレは無いでしょ」
「呪本とかないかしら?」
こんな場末の本屋にあってたまるか。
そんな……
……
……あー、見てない、見てないぞー。
「いや、もう、見ちゃってるじゃない。買っちゃえば?」
妖精さんやめて。これは違う、偽物さ偽物のはずさ。
「エイボンの書かぁ。やったねヒロキ」
ああ、言っちゃったよ。
なんでそんな本がこんな場所に雑に平積みされてるかな。
あー、お婆さん、これいくらー。
「んー。100円じゃぁ」
なんでやねんっ!
頭おかしいのか!? 禁書が100円って!?
「お婆さーん、これはいくらー?」
「んー。100円じゃぁ」
ダメだこりゃ。
全員が選んだ本、全て100円。
折角なので気になった本をいくつかピックアップしてみたが、それも100円だった。
店主が100円だっていうんだからとりあえずソレで支払ったけど……こんな売上じゃ店潰れるだろ。
婆さん、こいつぁ店への寄付だ。釣りはいらねぇ、とっときな。
さりげなく3万円をレジカウンターの中へと突っ込んでおく。
一応裏に書かれた値段からしてこの位だったんだ。
値段が分かる奴のを参考にした金額だから全部が全部同じ値段じゃないけどな。
恐らくエイボンの書とか数千万はするはずだし。
俺の良心が3万くらいは還元しよう、と囁いのだ。
予想外にいいモノ手に入ったからなぁ、とりあえず家に帰ろう。
さすがにこれ以上田舎町うろつくのはなんか揺り返しのイベントがありそうで恐い。
というか、これも実は幸運スキルが仕事した結果とかじゃないだろうな。
UFOへと戻ってくると、早速皆に集合を掛ける。
残念だが数人用事があって戻れない、ということで、今回は見合わせ。
次回ログイン時に皆で集まることにした。
うーん、これが揺り返しかな?
まぁ皆の時間が合わなかったってだけの不運なら甘んじて受け入れるか。
一先ず俺達は食堂で分かれ、各々自由行動することにした。
俺は、そうだな、まずは何故か居着いてしまっているギーァの部屋でも作っておくか。
ギーァも部屋も無く徘徊するだけなのはアレだろうし。つかテイムした方がいいのかこの謎生物。
えーと、ギーァ君よ、テイムした方がいい?
「ギーァ!」
―― ギーァが仲間になりたそうにしている、テイムしますか? ――
―― ギーァさんをテイムした! ――
さん付されてる!?
あれ、ギーァって年長だっけ? なんでさん付け!?
ま、まぁいいか。とりあえずさん付けされてるならこれからはギーァさんと呼ばせて貰おう。
もしかして英霊とか何か偉い魂の転生体なんだろうか?
全くそうは見えないけど……
妖精さんはどう思う?
「私に聞かないでくれる? こんな謎生物妖精にもいないわよ」
そりゃそうだろ。これが妖精とか言われたら精神崩壊するわっ。




