264.田舎名所巡り・3
「はーい、皆さんこっちでーすっ」
次に案内されてやってきたのは山の中の渓流地帯。
岩場でごつごつとした河原が広がるこの場所は天然のキャンプ地帯ってところだろう。
渓流釣りしてるおっちゃんが何人かいるし、恐らくテリトリーがきっちり決まってるところだな。
こういう釣り場って、意外と釣り人達の間でテリトリーが決まってんだよな。
新人が下手な場所で釣りしてるとそこはどこそこの何とかさんの場所だから余所で釣っとけ、怒鳴られるぞ。とか言われて強制退去させられるんだよ。
意外と年代古いおっちゃんの中でも怒りっぽいのがすごいテリトリー持ってたりするからな。気を付けないと怒られる。
「もう少し行った場所に大きな滝があるんですよ。ここも結構ゆったりできる場所ですけど、少し上流に行きましょうか。できるだけ刺激したり大声あげないでくださいね。怒られますから」
俺は即座に妖精さんのお口をチャック。
なんでよーと口ごもっていたが一番口開きそうなのが妖精さんなんだよっ。
俺達は大きな岩を避けたり、小型の岩を登ったりしながら上流へ。
おお、空気が変わった。
水気が多い場所に来たぞ。
ここ、ディーネさん連れてきたら喜びそうだな。
「昇龍滝って言うらしいですよ、此処の滝つぼには主が住んでいて、それが龍なんだとか」
龍かどうかは別として、なんか滝の上の方におっちゃんがいない?
「ぎーぁ?」
「いや、ほら、あそこ。なんか変な衣装のおっちゃんが座禅組んで浮かんでね?」
「うわ、ほんとだ。ヒロキさん良く気付きましたね」
「なんだあのおっさん。絶対普通の人間じゃねーだろ」
「見て来ようかヒロキ?」
「いや、下手にアイネさんやルースさんが向うと怒られそうだな。右側から回り込めそうだし、ちょっと行ってみるか」
せっかくなので挨拶だけでもして行こう。
なんか人類じゃなくて人外系みたいだし。
服装からして偉そうな身分の高い人に見えるし、顔とか絵画とかにある閻魔大王みたいないかつい顔してるからなぁ。
まさかアレが閻魔様、とかじゃないだろうし。縁類とかかもしれん。
ルースさんとアイネさんに手伝ってもらい、側面の崖を昇って行く。
ギーァと未知なるモノさんは自力で登れるのが凄いな。普通に人外の動きしてるけど。
「ギーァ」
「む?」
「いや、お前が挨拶するんかいっ!? すいません修行中でしたか?」
どことなく仏教系の偉い人に見えるそのおじさんは、片目を開けてこちらを確認する。
「これはまた奇妙な者共が来たものだ」
「下から滝を見に来たら貴方が居るのを見かけたもので、挨拶しておこうかな、と」
「ほぅ、殊勝なことだな若造。我に挨拶とな。しかし我が何者かは知らぬと見受けるが?」
「空に浮かんでますし、仏教系のお偉い様かとは邪推しましたが、何ぶん学がないもので」
下手に知らん。とかいうよりはこちらを卑下しておいた方がいいよな。なんか突然無礼者とか言われて斬りかかられそうだし。威圧感すげぇ……
「む、そこにいるのは呪いの塊ではないか。斯様なモノが大人しく従っているというのも珍しい」
「ふふ、私は旦那様に妻にしていただきましたので」
あれ、もう妻確定だったっけ?
「なかなかに面白い。そちらはいろいろなモノが混ざっておるし、産まれて間もないようだが、深淵のモノ、宇宙人に天使、悪妖精までおるのか」
悪妖精? え、妖精さん悪者なのか!?
「我が名は滝霊王である。この滝を守護し、下に住む邪龍を封せし者である」
「邪龍を封じる……」
滝つぼの主って邪龍なのかよ!?
「ソイツの名前って何なんだ?」
「名か。火之迦具土神より生まれし闇の水神。闇御津羽神だ」
いや天津神!?
名前は知らんけどヒノカグツチは知ってるぞ。えっと、クラミツハ?
「あー、天津神のアレか。確か渓谷やら谷合の源流を意味する女神だっけか」
そうなのか?
「この世界では恨みを持ち堕落した神、邪神である。ゆえ、我がこの滝を昇らぬよう封じておるのだ」
結構曰く付きの場所らしい。
「ん、ってことは、近くに闇淤加美神もいたりすんのか?」
未知なるモノさん、誰ですかソレ?
「然り、ソレもまた封じている。貴殿は物知りだな」
「まぁ、このゲームするにあたって伝承系は結構調べたからなぁ」
未知なるモノさん意外とオタク系だったのか。
もしくはゲーム好きだな。
まぁこのゲームやってるくらいだしゲーム好きか。
「コトリさんがいるし、封印解いて撃破しちゃう?」
「コトリさんよりレベル高かったらどうすんだヒロキ」
それは確かに……
滝霊王さん、どうですかね?
「ほぅ、確かにその呪いならば負けることはあるまい。しかし、相手も闇の眷族である、相性が悪いだろう。そこな天使が100を越えたらまた来るがいい」
100レベル推奨か。
あと10レベルくらいあげたらルースさんは適性範囲になりそうだな。




