25.その七不思議は恐すぎる
「なるほどなー、おねーさんのせいなのかー」
全然すまなそうじゃないですねテケテケさん?
「そう言われても隠れたり出来ないからなぁ。まぁ、テイムしたんだし責任持って面倒見てよね」
なぜそこでツンデレしたの?
移動に使ってた両手組んで胸支えてそっぽ向くとか、お腹から出ちゃいけないモザイクさんたちに土が付いちゃってるじゃん、大丈夫なの!?
「うっわ、制服汚れた!?」
「気になるのそこなの!?」
もうダメだ、テケテケさんの相手してたら日が暮れてしまう。
「あ、そうだ、朱莉」
「ひゃい!?」
ん? どったの?
「や、やっぱりいきなり呼び捨ては恥ずかしいからダメぇっ」
なんか真っ赤な顔でわたわたしだした朱莉。
さすがに本人が呼び捨てオッケーとか言っててもいきなり女の子呼び捨てはまずかったか。
「えぇ。えー、と、じゃあ朱莉ちゃん?」
「そ、それでいいです。で、な、何かな?」
「俺、今七不思議調べてるんだけどさ、ウチの学校の七不思議、何か知らない?」
「えーっとね、夜中に一階の女子トイレを三回ノックしながら『ハナコさん遊びましょー』っていうとお化けが出るよ」
「それ、本人の前で言っちゃう?」
ハナコさん、相手NPCだから。
「あとね、夜になると学校の廊下をけけけけけーって叫びながら走る上半身だけの女の人がいるんだって」
「それはおねーさんのことなのでは?」
小首傾げんなよ、同じゲームのAIだろ。
なんでNPCの言葉に疑問感じてんの? AI処理が人間に寄り過ぎでしょ二人とも。
「あとはー、あ。そうそう、音楽室のピアノがね、夜中になるの。4回エリーゼの為にを聞くと死んじゃうって噂だよ」
それはヤバいな。
「あとねー。体育館で跳ねるボール? ハナコさんがボールで遊んでるって聞くよ」
ハナコさん?
「うん、たまに暇な時遊んでるかな? というか、私ってここの学校七不思議二つもでてるのかぁ」
「それは七不思議といっていいのだろうか? 七つ全部知ると死ぬとかないよね?」
俺の疑問に答えてくれたのは、朱莉だった。
どうやらそれは大丈夫らしい。
そもそも各学校に七つづつあるんだから一校の七不思議知って死んでたら他の七不思議知ることすらできないよな?
ただ、全部の七不思議知ったら何か起こりそうな気がしなくもないけど。
「んでね、運動場をね、犬が走りまわるらしいの。用務員のオジサンがね、その犬の顔がオジサンの顔だったんだぁって喚いてたの聞いたよ」
「おお、新しい情報でた」
「運動場かぁ、帰り際は正面玄関から直接自宅に戻ったから見てなかったのね」
確かに、テケテケさん仲間になったから一旦帰ろうってなって時短のために直接帰っちゃったんだよな。
「あとはー、なんだっけ? あ、もう一つあったよ」
お、六個目まで知ってるのか。
多分開かずの間だな。
「この学校にはね、全ての教室に存在する学生が居るんだって」
ふぁ?
「その学生はね、どの教室を覗いても絶対に必ずいるらしいの」
え、何ソレ恐い。
ウチの教室にもいる生徒で他の教室にも同じ奴が存在してる? しかも夜関係無しでいるの? 滅茶苦茶恐っ!?
「誰か気になるわね。折角だから今日はソイツ探しましょうか?」
「そ、そうだな、折角だし1年1組の教室が目の前にあるし、覗いてみるか」
「あ、ヒロキ君、おはよう」
「え? おはよ……なんでここに?」
「ん? 何か変かな?」
「い、いや、うん。おはよう。じゃあ俺の教室こっちだから」
思わず挨拶した人物に謎の危機感を覚え、足早に教室を離れる。
自分の教室へと向い、そっと様子を伺うと……
「ヒロキ君おはよー」
「あ、ああ……マジ、かよ」
1年1組にも、1年2組にも、当然のようにソイツが居た。
屈託なく微笑むクラスの人気者、NPCとも凄く仲が良く。プレイヤーたちにも人気のある人物。そう、説明士……輝。
一度教室を出る。
小首を傾げる輝君はこの際放置だ。
さすがにちょっと正気度が削れたよ今の。
「は、ハナコさん、お、俺、今気が動転してる。テケテケさんが間横に居た時より精神がヤバい。ちょっと隣の教室見て来てくださいお願いします」
「う、うーん、私もなんかちょっと見るの恐いなぁ」
「あ。じゃあおねーさんが見て来るわ。どうせだから他の教室も回って来るわね」
え? 待って、テケテケさんが行ったら……
「ケケケケケケケケ」
俺がはっと気付いてテケテケさんを止めようとした時には、既に3組へとテケテケさんが突撃した後だった。
「ぎ、ぎゃあァ――――!?」
「キャ――――――――――――――ッ!?」
そして教室は、パニックになった。主にプレイヤーの皆さん。
教室から我先にと出てくる生徒たちとソレを追うように4組へと向うテケテケさん。
あとは……分かるな?




