256.エキシビジョンマッチ・コトリさんレイド戦4
SIDE:タツキ
「これで、3分の1じゃぁ!」
拳を突き上げ飛びアッパーカットを放ったプレイヤーの一撃で、コトリさんのHPがついに3分の1減った。そう、減っただ。3分の1まで減ったんじゃない。3分の1だけ減ったのだ。
残り3分の2が残っているコトリさん。その動きが変化する。
今までリンフォンに集中していた目線が、プレイヤー達に向けられた。
赤い唇がニタリと笑みに変化する。
「抗いますか。そうですか。ふふ、ふふふ……」
「ようやくこっち見たかよ!」
「嘆きの……御手」
近接戦闘を行っていた多段ヒットを稼ぐ第一人者。そんな彼が拳を突き出そうとしたその刹那。
伸ばされた細い手が彼へと触れる。
「が、あぁぁぁぁ!?」
「触れた相手のHPとGPを一定量奪い去るスキルだ! コトリさんが動きだしたぞ!」
「おい、一定量って即死レベルか!? あいつ死んだぞ!?」
「コトリさんのレベル考えろよ! 一定量つっても俺らのHPなんざ軽く一瞬で奪える位のダメージなんだろ。つまり、触れたら終わりだ!」
「ちょ、俺近接攻撃しかできねぇんですが!?」
「死んでこい、骨は踏み締めてやる」
「あれ、死者に鞭打たれてる!?」
「呪殺術、使いますよ?」
突如、プレイヤーへと飛んで行く黒い魔弾。
ぎりぎりで避けたプレイヤーに追尾するよういブチ当たる。
そして、呪い、恐怖、あるいは即死が付与されるのだが、一撃一撃がダメージ高く、一撃喰らえば今のプレイヤーたちなどほぼ吹っ飛ぶ。
「うげ、遠距離攻撃まで!?」
「呪殺弾とかいいつつ一撃必殺なんですが!? 呪いはどこよ!?」
「ええい、怯むな! コトリさんのHPだって減りだしてるんだ、全員死力を尽くせ!!」
「クソ、あの魔弾殆どGP使わねぇぞ!? なんだよあの弾幕!?」
「俺ら全員潰してもあり余るってか、ええい、とにかく攻撃だ! 一撃喰らったら死ぬんだ。紙装甲は捨てちまえ!」
「うるせぇ、俺らタンク役だぞ、動きも遅ぇのに追尾弾とか避けれるか!!」
「回避盾でも難いわ!!」
「近接格闘組なんざ避けるのも難しいんだぞ!?」
ぶつくさいいながらも皆攻撃を続けていく。
スキル名を叫ぶ者、ついでにオリジナル名を叫ぶ者。ポーズをとる者、ただただ無言で攻撃する者、皆必死に攻撃を続けるが、徐々にその攻撃が減っていく。
コトリさんが攻撃を開始してから一気に人数が減っているのだ。
遠距離追尾の呪殺術。近接即死の嘆きの御手。
たった二つの攻撃手段が増えただけで、プレイヤー達が減り始めた。
「不味いぞ、このままだと制限時間一杯生き残ることすら難しいかも!?」
「近接系がどんどんやられてく」
「これで、どうだ!!」
「うおっしゃぁ!! 緊縛入った!!」
「状態異常は入るのか! よし呪いでスリップダメージを……おぎゃっ!?」
「あ、馬鹿野郎、呪い特化のコトリさんに呪い系効く訳ねぇだろ!? 反射してんじゃねぇか!」
「なぁ、今思ったけど、物理攻撃普通に効いてね?」
「あ? どういう。待て、コトリさん物理無効持ってたよな」
「ってことは、今最大ダメージ叩き出してる連撃系軒並み無効じゃん。え、どういう」
「恐らくまだ使ってないんだ。そろそろ3分の2削れる、来るぞ!」
「げ、鷹が完成しちまったぞ!?」
コトリさんは攻撃の合間にリンフォンを操り少しずつ正二十面体を崩して行く。
そして熊を作り、今また、形を崩したリンフォンは鷹へとその姿を変えていた。
残り30分。
魚が完成した瞬間、戦闘は終わりを告げるだろう。
「削り切るぞ!!」
「応ッ!!」
「粘るわね……物理無効、コトリバコ」
「なんだ? 急にダメージが効かなくなった!?」
「物理無効がONになったんだ。もう一つのスキルは?」
「あそこ、なんか匣が出てる!」
「あれ、壊していいヤツ?」
「とにかく壊せ、置いてるだけで一族郎党皆殺し♪ が発動するぞ!!」
生存者の一部が匣の破壊へと向う。
「うおぉ!? 硬ぇ!? こいつの耐久力どうなってんの!?」
「木箱の耐久力じゃねぇよ!? しかも中でチャプチャプ鳴ってんですけど!?」
「ふふふ……闇の捕食」
コトリさんがさらにスキルを発動させる。
コトリバコの呪いを受けた者たち。特に女性陣から優先して足元に生まれ始める黒い穴。
「ひぃっ!?」
「掴まれ格ゲー少女っ」
「あ、ありがとうございます未知なるモノさん、っていうか格ゲー少女って誰ェ!?」
「あのバー格ゲーの奴だろ。んで君のアバターは少女。だから格ゲー少女」
「安直過ぎ!?」
穴に捕食されそうになったプレイヤーを近くの誰かが手助けしていく。
それでも助け切れなかったメンバーが闇に呑まれ脱落していった。
「っし、レッドバーまであと少し、皆正念場だぞ!!」
「もうでたらめでもいいですからとにかく物理以外の遠距離放ってください、僕が案内します!」
「よく言った案内役! お前が今回のMVPだ!」
実際、彼の攻撃収束スキルの御蔭でダメージが多く入っているのだ。彼がいなければここまでダメージを与えることすら、むしろ呪殺結界を破壊することすら出来ていなかっただろう。




