254.エキシビジョンマッチ・コトリさんレイド戦2
SIDE:タツキ
「クソ、結界硬過ぎだろ!」
「リンフォンが動きだした。どうする! どうすりゃいいんだよ!?」
「アレを動かしてる間は攻撃してこないみたいだぞ。まずは集中砲火で結界を破ろう!」
皆、それぞれ動き始めている。
思い思いに必殺技を叩き込むが、結界を破れるほどじゃないようだ。
何度か試して、皆諦め始める。
「結界は壊せない、リンフォンは着実に変化している、これどーすんだよ」
「なんか方法ねーのか?」
「これはもう、無理じゃないか?」
「あ、あの、もしかしたら、僕のスキル、使えるかも」
「「なんだとっ!?」」
なんだ? あそこに皆が集まりだした?
何か方法見付けたか。
僕らも行ってみよう。
人々が集まりだしている場所へと向う。
どうやら話題の存在は可愛らしい顔の小学生プレイヤーだった。
「何かあったのか?」
「ああ、そこの小僧が有効なスキルあるらしくてな」
「あ、えっと僕、有名観光施設などの案内をしてるんです」
「えっと、ゲームで? 現実で?」
「やだなぁゲームの話ですよ。それで、ですね。案内してる中で覚えたスキルの中に、対象を一点に集合収縮させるっていうスキルがあるんです。これ、遠距離攻撃を一点に集中できないかな、と」
「それは……確かに行けそうな気がするけど」
「まぁせっかくだ、やるだけやってみようぜ」
その場に集まった遠距離スキル持ち達が各々スキルを発動させていく。
「一斉射、行くぞ! 案内頼む!」
「はい、『数多のモノよ、此へ集え!!』」
本来であればそこかしこに飛んで行くスキル達。
その全てがツアー・コンダクターにより呪殺結界の一点へと集中して行く。
そして……
「クソ、これでもダメか!?」
「待って、あれ! 呪殺結界にヒビが入った!」
「お、おいおい、全員の渾身の一撃だぞ。バフ盛り盛りで放って、ヒビだけ?」
「それでも回復する気配もない、あのヒビを広げていけば割れるぞ」
「やるじゃねぇか案内人!」
「あ、はは、人を集めるだけのどうしようもないクズスキルだと思ってたけど、役立ててよかったです」
「謙遜すんなって。よし、皆もう一度だ! 俺達であのクソ硬ぇ結界ぶっ壊そうぜ」
可能性が見えた。
それだけで、皆の戦意が一気に上がる。
協力するプレイヤーも増え。より一層威力を高めた一斉攻撃が始まった。
『数多のモノよ、此へ集え!!』
無数の矢、無数の魔法、無数のスキル。
その全てがひび割れた結界の一点向けて収束する。
ひび割れがより一層進行し、ぱらりと結界の一部が剥がれ落ちる。
「いける、いけるが……これだけ攻撃集中させてまだ結界が破れねェのか!?」
「くそ、MP尽きた。回復薬復活するっつってもいきなりこんだけ使わせられるのかよ」
「ただのボス敵だよな。なんでこんな硬いんだよ!? 一パーティーだけじゃ勝てねぇだろ!!」
「もう一度だ! 後一度、あの結界を破壊するぞ!!」
「チャージ完了、結界破壊と同時に突撃するぜ!」
「っし、案内役、行けるか!」
「はい! 僕が活躍できることがあるんです、ここはもうやるっきゃないっしょ!!」
きっと彼は戦闘向きではないのだろう。補助をするため、それだけでも参加しようと来たはずだ。
でも、活躍できていた。
今、一番必要な能力を持っていた。普段はクズスキルでしかなかったものは、コトリさん戦において、否、以後、彼は重宝されるだろう。大型ボスの弱点向けて、大ダメージを叩き込むための能力持ちとして。
そしてそれは、他のプレイヤーたちにも言えることだった。
今まで目を向けていなかったスキルの中にも使えるモノがあるかもしれない、それに気付いた彼らは今までスキルの肥やしになっていたクズスキルたちへと目を向けることを決意する。
この闘いが終われば、きっとスキル革命が起きることだろう。
とはいえ、今はレイド戦。こちらへと意識を割く時だ。
「全員、一斉射!」
『数多のモノよ、此へ集え!!』
三度目の正直と言うべきか。
プレイヤー達の頑張りが、ついに呪殺結界を粉砕した。
パキィンっと音を立て結界が煌めくように粉々になって行く。
「おや、まさか結界を破壊できるとは」
「っしゃ! 良くやったお前ら、ここから先は、俺の出番だ!!」
近接特化のプレイヤーたちが走りだす。
一番早く辿りついた男が拳に炎を纏わせる。
「唸れ炎拳! 猛れ我が命! バーニング・ラァァァッシュ!!」
コトリさんの華奢な体に無慈悲な拳が炸裂する。
まさにラッシュ。まさに乱打。
だが、同時に彼は思った。思ってしまった。
「硬ぇ……タングステンでも殴ってんのか俺は……っ」
「お前タングステン殴ったことあんのかよ!?」
「あるわけねぇだろ。つーかダメージ入ったか今の!?」
全く効いてる様子はない、否、そればかりかリンフォンを動かす手を止めることすらしていない。結界の破壊はまだ第一段階をクリアしただけなのだと、嫌でも気付かされるプレイヤーたちだった。




