250.第二回イベント格闘大会本戦12
「準決勝第二試合、勇者ブレイドさんVS未知なるモノさん」
ブレイドさんって結局NPCなのかプレイヤーなのかわからんな。
とりあえず、両方かなり強いからどうなることか……
ま、俺は応援するぜ、未知なるモノさんと知り合いだし。
試合開始と同時に動きだしたのはブレイドさん。
未知なるモノさんは触手をたゆたわせただけで動こうともしていない。
どうやらブレイドさんの攻撃を見てから動くカウンター狙いのようだ。
「リロードブレイブ、我が力の全てを糧に!」
は?
え? それ、あんたの必殺技じゃん!? なんで開幕直後に放ってんの!?
さすがに未知なるモノさんも想定外過ぎて驚いてるぞ!?
「くらえ!! ブレイブ・ブラスターッ!!」
「チッ、いきなりかよ!?」
腕を砲塔に変形させて、迫りくるエネルギー斬撃へとぶっ放す。
おお、拮抗した!?
あ、でもダメだ。威力が弱い。押され始めた。
「マジか!?」
「あんたは長引く方が危険そうだからな。速攻で沈んで貰うッ!」
ある意味未知なるモノさんにとっては一番厄介な敵かもしれない。
未知なるモノさんって何が飛び出してくるか分からない程能力持ってるし、下手したら相手を食べて能力奪っちゃうし。
長引けば長引くほど不利になるのは相手側である。
ゆえに速攻。
未知なるモノさんが何かをする前に開幕速攻で叩き斬る。
ブレイブ・ブラスターをギリギリ回避した未知なるモノさん。
思わず高エネルギーのブレイブ・ブラスターの行く末を見守る。
客席には当たらず場外から出る辺りで防壁にぶち当たって霧散した。
「ヒュー。あんなもん当たったら上半身吹っ飛ぶっつの」
「それでも生きてるのか、本当に未知だな君は」
ブレイドから視線を離したのは一瞬だった。
その一瞬で未知なるモノさんへと踏み込み、斜め上からの気合斬り。
「やべっ」
咄嗟にバックステップしようとした未知なるモノさんだったが、勇者の一撃は斬撃を飛ばす超広範囲斬撃。
結果、避けることすらできず、彼は袈裟掛けに切り裂かれた。
「ふっ、悪いな未知なるモノさん、この闘い私が……っ!?」
何かを察したブレイドが慌てて距離を取る。
二つに分かれた未知なるモノさんから触手が襲いかかり、先程までブレイドが居た場所を穿つ。
判断が遅れていればあの触手に捕まったブレイドが場外に放り投げられて勝敗が付いていただろう。
「お、おいおい、その姿でまだやるのか?」
「悪いなブレイド。俺は自己再生系はかなり喰ってんだ。簡単にゃ死なねぇぜ」
うっわ気持ち悪っ!?
触手が切断面から溢れて互いにくっつき、別れた半身をくっつけ始めた。
しばらくうねうねしてると未知なるモノさんが完全復活する。
「君は……魔王か何かだったかな?」
「ただのプレイヤーだよ。ほんと、なんなんだろうな、この体?」
自分ですら自分を分かってない未知なるモノさん、未知すぎる。
「全く、面倒な存在だね君は」
倒すに倒し切れないブレイドさんにとっては本気で危険生物だろうなぁ。
未知なるモノさんは敵対するのではなく味方に引き入れておくのが一番安全なんだ。
下手に敵対選ぶと喰われるし。
「ならば、これでどうだ!!」
ブレイドが動いた。
一気に距離を詰め、突撃と同時に剣先向けて真っ直ぐに突っ込む。
「今度は突進かよ。思い通りにやられてたまっか!」
今度は未知なるモノさんが破壊光線発動だ。
まさかの一撃にブレイドさんも突撃を止めて剣を構え直す。
「リロードブレイブ、我が力の全てを糧に!!」
あ、それ二撃目放てるんだ。
「ブレイブ・ブラスターッ!!」
未知なるモノさんが口から吐き出す破壊光線。
ブレイドもまた、これに対抗するために必殺技で応える。
二つの必殺が中央でぶつかり、一瞬の拮抗。
継いで大爆発。
「うおぉ!?」
さすがの衝撃に驚き慌てる未知なるモノさん。
バランスを崩して転倒す……ブレイド!?
爆風を突き抜け未知なるモノさんへと肉薄するブレイド。
まさかの事態に未知なるモノさんは倒れる寸前で何も出来ない。
そんな未知なるモノさん向けて、渾身の蹴りが炸裂した。
無防備に受けた一撃で吹き飛ぶ未知なるモノさん。
咄嗟に触手を伸ばしたものの、そのことごとくを切り裂かれ、最後の一撃も不発に終わる。
未知なるモノさん、無念の敗退だった。
「勝者、勇者ブレイドさん!!」
勝因は爆発を見越してあえて前に突撃していたことだろう。
爆発のダメージを負ったらしくブレイドの身体もかなり焼け爛れていたが、このダメージを必要経費と割り切ったことだ。
何より宣言通り速攻で片を付ける事だけを考えた御蔭で未知なるモノさんの隠し玉を使わせなかったことが勝敗を決したってことだろうね。




