249.第二回イベント格闘大会本戦11
「勝者、未知なるモノさん!!」
未知なるモノさんが破壊光線ぶっぱした瞬間、勝敗は決した。
というか、試合会場が粉砕されて生き残ってたディーネさんが破片と一緒に地面にべちゃっと落下したのだ。
逃げ場すらなかったからこれは仕方ない。
というか、未知なるモノさん武闘場破壊しないでくれません!?
いくらデータ復旧すればすぐに戻るっていっても前例できちゃったら皆が破壊し始めちゃうじゃん。
「あー、もぅ、舞台破壊するとか聞いてないしーっ」
「あはは、悪りぃな嬢ちゃん」
水滴さえ残ってれば復活できるディーネさんだけど、今回は身体の一部でも場外に吹っ飛ばせば勝てるからなぁ、これは未知なるモノさんの作戦勝ちというべきだろう。
ただ、舞台自体を破壊して相手を場外にする、というのは浮遊生物にとって一番やり易い攻撃だ。次の大会は飛行キャラが狙いそうだなぁ。
何しろ自分より強い相手でも苦労して戦うより足場を破壊した方が楽に倒せるからである。
これでベスト4確定か。
どうでもいいけど今回、全部後攻側が勝利したなぁ。
残ったのはハナコさん、芽里さん、ブレイド、未知なるモノさん。
おいおい、蓋を開けてみたらウチのチーム潰し合いまくって二人しか残ってないし。
しかもその二人もここで潰し合いじゃん。
残った勇者くんと未知なるモノさんのどっちかが決勝まで来るのが確定してるし、これ、下手したら優勝も無理かも?
未知なるモノさんとハナコさんが闘ったりしたらハナコさん消し飛ばされたりしないだろうな。
あ、べ、別に芽里さん負けろって訳じゃないんだよ。勝ったのがハナコさんだったらっていう想像だけだからね。
「準決勝第1試合、ハナコさんVS芽里さん」
あああ、始まってしまった。
ハナコさんと芽里さんの戦いがっ。
二人とも応援したい。でも負けてほしくない。
どうすれば、どうすればいいんだぁぁぁっ!?
「ヒロキがまた蠢いてるんだけど」
「妖精ちゃん、ヒロキは放っておきましょ。どうせハナコさんと芽里さんのどっちも応援したいけど負けてほしくないーとか言ってるだけだから」
「なるー。じゃ、放っておくか」
試合開始と共にハナコさんは鬼火を複数周囲に出現させていく。
対する芽里さんはメリーさんと協力しての接近を試みる。
一定の所まで近づいたその瞬間。
ガトリングガンのように連射されていく鬼火たち。
時に避け、時に切り払い、芽里さんが連弾を避けて行く。
しかし一部に紛れていた陰火を切ったり、避けたりしたことで隙が生まれ、たまに被弾してしまうようだ。
ただ、その被弾する鬼火はほとんどが陰火であり、実質のダメージにはならない。
とはいえ、陰火に紛れて当たってしまう鬼火もあるため、多少なりともダメージを喰らっていた。
「ハナコ!」
『わっ!? びっくりした』
相手の名を叫ぶと共に鎌をぶん投げる芽里さん。
咄嗟に避けたハナコさん。その間にメリーさんの姿が消えていた。
『しまった!?』
なんと鎌に乗って一緒に飛んで行ったメリーさん、そこに芽里さんの意識が飛び込み、避けたハナコさんを背後から奇襲する。
「捉えたっ!」
『なんのまだまだ』
両手でハサミを構えて突撃して来たメリーさん。そのハサミがハナコさんを上下から切り裂く寸前、ハナコさんがバスケットボールを投げ込みハサミがこれをまっぷたつ。
その間に逃げたハナコさんが側面に回り込み、メリーさんの頭を掴んでダンクシュート。
地面に飛ばされたメリーさんは必死に逃れようとするが、自由落下状態の彼女は逃げ切れそうになかった。
ああ、メリーさんが地面に刺さった。
『これで芽里さんのみね!』
「さすがハナコ……さて、どうしたものかしら……」
既にメリーさんという緊急脱出方法は封じられた。
鎌も投げ飛ばした以上武器もない。
芽里さんには攻撃手段がなくなっていた。
『負けを認める?』
「ご冗談。良いのハナコ? 音波攻撃とかしなくって」
『ふふ、強がりって訳じゃなさそうね。何をするつもりかな?』
折角だしリクエストに応えよう、とマイクを取り出そうとしたハナコさん。
不意に、気付いた。
『動かな……い?』
ソレは実に巧妙に、しかし確実に張り巡らされていた。
ハナコさんの身体に、あるいは舞台上に、または司会者の身体に。
芽里さんがメリーさんを操るために使っている細い糸。
それがハナコさんを拘束していたのである。
あまりにも細すぎて見えなかった。
アレを用意したのは芽里さんだったからどんな糸なのか鑑定してなかったけど、アレ、幽霊も縛れるって意外とヤバい糸なのでは!?
「悪いわねハナコ、メリーさんを囮に使わせて貰ったわ」
『こ、これはちょっと、想定外かも』
「踊れ、ハナコッ!」
『あ、赤いちゃ……ひゃあぁっ!?』
さすがにマズいと思ったハナコさんが奥の手を使うより早く、ハナコさんを糸で操り場外に移動させる芽里さん。
赤いちゃんちゃんこを使って起死回生を計ったハナコさんだったが、自らの身体を操られて地面に着地させられてしまった。
「じょ、場外、勝者芽里さん!!」
ハナコさんが、ハナコさんが負けちまったぁぁぁ!!?
でも相手が芽里さんだから恨むに恨みきれねぇぇぇぇっ!!




