247.第二回イベント格闘大会本戦9
「わかってますよ、麻痺、効いてないですよね」
「チッ、チャンスととらえて近づいて来るかと思ったんだがな」
ヒナギさんは終始遠距離からの攻撃に徹してるなぁ。
未知なるモノさんが誘ってみたけど全くのらなかったようだ。
未知なるモノさん、中距離までなら触手で対応してるみたいだけど、遠距離攻撃使う気配ないなぁ。何かあの変化には条件でもいるのかな?
これはヒナギさんの削り勝ちかな?
「ったく、奥の手ここで披露かよ、仕方ねぇな」
「あ、はは。奥の手とかないって言ってくれた方が嬉しい、かなぁ」
「悪りぃな。俺だって自分の弱点は対策してるもんでね。腕を一度変えるだけじゃねぇんだよ」
と、ヒナギさんの爆裂札を触手で弾きながら、大きく息を吸い込む未知なるモノさん。
あ、マズい、とヒナギさんは何かを察したようで、札を放ちながら逃げだした。
そんなヒナギさんを嘲笑うように、未知なるモノさんが赤黒く輝く光を口から吐きだした。
まさに破壊光線。吐きだすと同時に顔を動かし扇状に薙ぎ払って行く。
「ちょ、むりむり全体攻撃は避けれな……あ――――っ!!?」
光の奔流にヒナギさんが飲まれて消えた。
未知なるモノさん、着々と人外への道歩んで行くなぁ。
一体どこに行きつくつもりなんだろう。
「勝者、未知なるモノ!!」
「ぷはっ。これやるとめっちゃ腹空くんだよ」
「うえぇ、自分が消失する感覚とか知りたくなかったよぅ」
戦いが終わって舞台に戻ってきたヒナギさんがひんひんと泣きながら去っていく。
未知なるモノさん、いたいけな女の子をレーザーで消失させるとか、反省してくれ。
「さぁ、ベスト8が出そろいました。次の試合はカルカさんVSハナコさんだーっ!!」
カルカさんとハナコさんか。
レベルは同じ、怪人と幽霊の戦いだ。
お互いに相手の手の内は知り尽くしている仲間だからなぁ。
あとはどれだけ応用した能力で相手の虚を付けるか、ってところかな。
「すまんなハナコ、今回は勝たせて貰うぞ」
『あら、それはこちらのセリフよ。魅せてあげるわ。私の新たな実力を!』
ハナコさんの新たな実力だって!? こ、これはもうハナコさんの勝ち確定だろ、うおぉぉぉぉ!! ハナコさーんっ!!
「く、ヒロキのヤツ、完全にハナコ推しじゃないか、やりにくい」
『ヒロキはねぇ、まぁ後でフォローするから頑張って』
「全く、勝つかどうかも分からんのにアレに嫌われる可能性まで出るのはなんとかしてほしいものだな。では……行くぞ!!」
カルカさんの言葉で双方戦闘態勢に移行する。
カルカさんは鞭を振るい、ハナコさんは鬼火を周囲に出現させていく。
『連続射出、いけ!』
「全て消し去ってやろう」
鞭の動きが凄いな。
飛んでくる鬼火を全て迎撃している。
一部すり抜けてくる陰火も混ざっていたが、これは気にせずそのまま受けることにしたらしい。
ダメージがないから放置した方が楽なのだそうだ。
「代わり映えがしないぞハナコ! この位ならば変身することもなく倒せそうだな!」
『あら、じゃあそろそろ始めようかしら。さぁ、皆~、私の歌、聞いてねぇーっ!!』
と、マイクを手にしたハナコさん。まさかのハナコさんリサイタルですか!?
うおぉぉぉぉっ!!
俺ばかりじゃない、ハナコさん親衛隊たちが拳を付き合え叫びだす。
ハナコさんが本当に歌いだし、俺達は待ってましたとサイリウムを取り出し力の限りオタ踊り。
綺麗な歌声にカルカさんがごふっと口から血溜を吐きだした。
さらに耳と鼻から血が噴き出し、片膝を付く。
赤いちゃんちゃんこが発動したか? いや、アレは全身血だらけになるはずだ。
じゃあ今の状況は……音波攻撃なのか?
いや、確かハナコさんのスキルに霊歌があったな。
つまり歌に霊力を乗せて攻撃に使っているのか。
確かに遠距離なうえに防御方法が不明な広範囲攻撃はカルカさんには防ぎようがないだろう。
すぐさまクリオネ形態へと変化するが、音波攻撃はクリオネ形態でもダメージを与えるらしい。
カルカさんは身悶え、必死に触手を振るう。
しかし、空を浮くハナコさんは上空へと退避してしまい、触手が届かない。
さらに鬼火の連弾が真下に向って放たれ、防御手段が触手しか無いカルカさんだけが徐々にダメージを蓄積させていった。
「勝者、ハナコさん!」
結果を言えば、打つ手がないまま潰された、と言うべきだろう。
カルカさんは本気で遠距離手段を手に入れると宣言してたからこの後付き合わされそうだなぁ。
ハナコさんのライブで俺のテンションは爆上がり。ハナコさんファンクラブも最高潮のテンションでヒャッホゥしていた。
大丈夫かなぁ、フーリガンみたいにならないだろうな。
思いがけないライブ、ありがとうございましたっ!
ハナコさんが歌う切っ掛けを貰ったカルカさんにも何かプレゼントみたいなのしたいな。
やっぱり遠距離攻撃スキルだろうか? いいのあったら優先的に紹介しよう。
 




