245.第二回イベント格闘大会本戦7
「ふむ、芽里さんとか。残念じゃったのぅ、ワシとあたるとは運が無い」
「あら、稲荷さんは神サマかもしれないけどその体は寄り代でしょう? レベル帯も同じくらいだし、勝てない訳じゃなさそうだけど?」
「ほぅ。言うたな。ならばその実力、見せつけてくれんかのぅ」
ニタリ、好戦的な笑みを浮かべる稲荷さんと芽里さん。
あれ、このゲームってバトルマンがだっけ?
ライバルたちが戦いに楽しさ見付けるようなヤツだっけ?
「行くがよい!」
「風狐……行ったわよメリーさん!」
いやメリーさんって、自分で糸使って操ってるじゃん。
あ、でも意外と器用な動きするな。
ハサミ使って風狐の頭切ろうとしたし。
さすがに風の神通力で弾かれたけど。
稲荷さんはお札を使っての爆散攻撃。
芽里さんは俺があげた漆黒の鎌を使って中距離でコレを迎撃していく。
手に衝撃は来てるだろうけど、間近で爆散されるよりはマシみたいだ。
しかし、芽里さん凄いよなぁ。
稲荷さんの相手しながらメリーさんを操って風狐の相手もしてるんだろ?
一人二役とかじゃないぞこれ、三役四役くらいしてる感じだ。
でも、やっぱりそれだけせわしなくしてても一人じゃ難しい。
稲荷さんと風狐は別思考で勝手に動くので、芽里さん一人では徐々に追い込まれ始める。
これは無理か?
誰もが思った時だった。
メリーさんが風狐の尻尾を切り裂いた。
風狐の悲鳴が上がる。
驚いた稲荷さんに初めて隙が出来た。
その隙に稲荷さんに近づいた芽里さんが鎌の一撃。
ギリギリ反応した稲荷さんがこれを弾くものの、その勢いを利用した芽里さんは攻撃対象を稲荷さんから風狐へ。
痛みで悶える風狐を思い切り切り裂いた。
「なんと!? 風狐が!?」
召喚生物だったためか、その場で消失していく風狐。
二対二だったのが一匹消えたことで稲荷さんが若干不利になった。
「これで二対一ね!」
「いいや、一対零じゃな。吹き飛ぶが良い」
芽里さんが鎌を引き絞り稲荷さんへと走る。
逆方向からはメリーさんがハサミを開いて襲いかかった。
しかし、稲荷さんが芭蕉扇みたいなモノを取り出した瞬間、流れは一気に変化した。
物凄い風圧が芽里さんが弾き飛ばす。
糸が切れ、メリーさんがその場に崩れ落ちる。
吹き飛ばされた芽里さんは必死に場内に残ろうとするが、風圧に抗い切れず場外へと吹き飛んで行った。
「ふぉっふぉっふぉ。残念じゃったの。ワシを倒すにはまだ……」
「おりゃぁ!」
「ほ?」
芭蕉扇片手に高笑いしていた稲荷さん。その背後で立ち上がったメリーさんが思い切りドロップキック。
稲荷さんが場外へと吹っ飛んで行った。
警戒とかし忘れてたから……
「場外! えー、これはどう判断すればいいんだ? 生身の芽里さんが場外で、その芽里さんの意識は即座にメリーさんに移って稲荷さんを背後から急襲。稲荷さんが場外。残ったのは人形のメリーさんのみ、と……よし、勝者メリーさん!」
司会者さんが一瞬困惑してたけど、勝敗決めるのは自分だからって理由と残ってたメリーさんが当然勝利だろ、と判断したことでメリーさんの勝利となった。
ここはメリーさんを芽里さんの体と考えるか、ただの付属物と考えるかで判断が分かれるところだね。
当然芽里さんファンからは大歓声、稲荷さんファンからは大ブーイングが始まった。
「つ、次の試合始めますッ! サユキさん、イーグレイさん会場にモノが投げられる前に入って来てくださいっ」
次の試合はサユキさんか。相手は……銀色肌にアーモンドアイ、背丈は子供位で腕が異様に長い生物だ。うん、これは地球外生命体だ。
戦闘開始と共にサユキさんに向けてレーザーを走らせるイーグレイ。どこが良いグレイなのか分からんが、サユキさんは本能的な勘かぎりぎりでコレを避けた。
すっげ、人差し指だけでレーザー撃ってる。
というか長い指三つだけじゃん。手は親指入れて四本なのかイーグレイさん。
サユキさんはなんとかレーザーを躱しながら真っ黒い物質を投げる。
イーグレイさんの口を狙ったようだけど、この宇宙人、口開かないぞ。
サユキさんの必勝攻撃は無意味になった。
これはもう敗北必須じゃないかな?
あ、ほら、サユキさんもあきらめムードじゃないかな。
おや? 違うぞ。
なんかもうあきらめムードからのヤケクソムードに入って走りだした。
どすどすどすっと近づくサユキさんに恐れおののくイーグレイさん。
必死にレーザーを放つが、サユキさん、なんか悪運強いな。
ほんとぎりっぎりで避け切った。
そのままジャンプして放物線描きながら、イーグレイさんめがけてフライングボディプレス。
まさかの直接攻撃だった。
イーグレイさん潰れちゃったぞ今。何あの破壊力!?




