243.第二回イベント格闘大会本戦5
「さぁ、ベスト8決定戦、第一試合はカルカさんVS(V)o¥o(V)」
怪人の長たる首領だったカルカさんと猟師の激突。
クリオネ対猟師ってどっちが勝つんだろう。
遠距離持ちの猟師さんのが強そうなんだけど……
戦いは、始まってすぐに一方的になった。
猟師さんの銃撃をカルカさんが触手で弾きまくる防戦一方だ。
動く事も出来ずただただ弾くしか出来ていない。
このままだとその内避け損ねたカルカさんが負けるだろう。
だからカルカさんも考える。
さすが首領だっただけあって修羅場の潜り方は分かっているらしい。
まさかの自身を回転させての……それレギオンがやってた奴じゃーんっ!?
くっそ、AIが似通ったレベルなら動きも同じなのかよ!?
ただ、触手も回転しているため銃弾を弾き、身体は蛇行しながらも前進を始めている。
これは充分勝ち目が出て来たぞ。
ん? 待て、何だあの銃。あれは……やべぇ曲射型じゃないか!?
猟師なのに軍用銃使ってんじゃねーよ!?
あああ、頭に直撃し……弾いた!? 今、カルカさん弾いた!?
しかしどうする、曲射銃に徹甲弾でも使われたら死んじゃわない?
カルカさんは、それでも回転しながら近づいて行く。
独楽のような軌道で猟師に近づくものの、猟師もまた、手早く動きながら射撃を続けている。
ん? カルカさんが止まった?
このままだとどうにもならないと判断したようで、動きを変えるつもりらしい。
おそらく、一撃必殺に賭けるはず。
回転を止めたカルカさんは触手を足代わりにステップを踏みながら銃撃を避ける。
そして、全ての触手を頭上に集め、撓む。
なんだ? 皆が注視した次の瞬間、物凄い速度でぶっ飛んだ。
猟師向けて自身の身体を切り揉み回転させ、触手をドリルのように頭上に集め。
自身を銃弾に変えた一撃に、さすがの猟師も逃げようとするが、逃げるごとに触手を使って位置を変更しながらカルカさんが襲いかかる。
「くっ!?」
猟師が思わず声をだす。
銃身を使って突撃して来たカルカさんを受け止めるが、物凄い音が響いて……いやぁぁぁ!? これ歯医者で良く聞く嫌な音ぉぉぉ――――ッ!!?
「おぉーっと (V)o¥o(V)選手吹っ飛んだ!? 銃身を犠牲に弾丸突撃は防いだが、既に満身創痍だぁぁぁ!!」
しかも吹っ飛んだ先がぎりぎり場外手前だしな、なんとか体を起こすが、既に両手が銃を握れる状態じゃなかった。
それに気付いた彼は、なんと新しい銃を取り出すと銃を腕に固定。
口でひもを縛って銃口をカルカさんに向けると、同じく紐を使って口で引き金を引く。
「まだ来るか!?」
「獲物を打ち抜くまで終わらんさっ」
一発の銃弾。やはり徹甲弾持ってるじゃん!?
弾こうとしたカルカさんの触手を三つほどブチ抜き、ぎりぎり避けたカルカさんの頬を掠めて行く。
「く、まだ……」
「いい加減くたばれっ!!」
触手の一つで猟師を叩く。
さすがにこれ以上は持たなかったらしい。
踏ん張りが効かなかった猟師がゆっくりと場外へと倒れて行く。
「し、勝者、カルカジーナ・アルセーヌ!!」
最後はもうゴリ押しだったなぁ。
でもカルカさんベスト8進出決定だね。おめでとー。
「さぁじゃんじゃん参りましょう。第二試合はハナコさんVSターボババァ!!」
うげ、ターボババァがハナコさんと対決か。
ターボババァは近接型。ハナコさんは遠距離特化。
だけど、ターボババァは速度がヤバい。
つまり、ハナコさんはまた苦手な敵との闘いになっているわけだ。
ルースさんも弱点属性だったけど、こっちは打たれ弱い後衛に対して素早く移動する前衛だからなぁ。不利なんてもんじゃないほどに不利だ。
試合開始と同時にババァの姿が掻き消える。
物凄い速度でハナコさんの背後に現れ、蹴りを放つ。
ハナコさんは咄嗟に振り向き何かをガードに使うが、勢いを殺し切れずに場内にぶつかり撥ね跳ばされる。
ぼよんぼよんと床をバウンドするハナコさん。どうやらぎりぎりでバスケットボールを身代りにできたらしい。
空中で停止したハナコさんは即座に鬼火を生成して連射。
その全てを避け切り、ターボババァが駆け回る。
さすがにあの速度には敵わないか。
これはマジでヤバいかも。
ターボババアがハナコさんの認知外速度で接近し、背後に回り込む。
終わりだ、とばかりに手を伸ばしたその瞬間、その視界を埋め尽くす青い炎。
視界を奪われ、たじろぐターボババァ。
伸ばした腕をがしりと掴む半透明の幼き腕。
驚くターボババァの腕を引き、空中に浮かせながら彼女の頭を鷲掴むハナコさん。
空中に浮いたターボババァにはもはや速度に任せた逃げは不可能。つまり、ハナコさんによる生首ダンクシュートの餌食であった。
「場外ッ!! 勝者、ハナコさん!!」
地面に突き刺さった老婆がプランと揺れる。
非情にも勝利のために迷いなく地面にシュートを決めたハナコさんが瞳を閉じて拳を突き上げた。




