217.二階探索
皆揃って二階へとやってきた。
迫りくるナースや浮遊霊は結構多い。
全部呪殺結界の御蔭で消し去られてるけど。
皆もう安心しきってピクニック感覚である。
しかし、ほんとコトリさん一人居るだけで安全な探索になってるなぁ。
俺達だけだったらもう詰んでたし。
二階に着いてからも安全な探索は継続されている。
ソレと言うのも、コトリさんの呪殺結界、まさかのパッシブ扱いなのである。
つまり、MPの消費がないのだ。しかもコトリさんが任意でONOFF出来る親切設定。恐らく敵として存在するボスキャラだからだろう。
まず味方にすることを想定されていないキャラだからこそのスキルなんだと思われる。
敵ボス味方にしても弱体化しないって、いいよね。
おっと、新しい敵発見。なんだアレ? 影人間?
うおお!? めっちゃ走ってきた!?
呪殺結界に突撃し……
「ルースさんっ!」
「は、はいっす!!」
渡したままだった大鎌をぶんっと振るうルースさん。神聖属性付きの鎌が呪殺結界を抜けて来た影人間を真っ二つに粉砕する。
「ぬ、抜けたっすか!?」
「おそらく呪い系生物だ。あいつはルースさんお願い」
「りょ、了解っす」
また来た。
今度はさっさと鑑定に掛ける。
名前:
種族:歩行死者 クラス:呪死者
二つ名:なし
Lv:88
HP:43/8839
MP:1203/1203
TP:870/870
GP:4120/4120
状態:普通
技スキル:
???Lv88: ???
???Lv73: ???
???Lv65: ???
呪殺耐性: 呪殺属性への耐性を持つ
???: ???
???: ???
あー、やっぱり同属性だから効きが悪いのか。
ダメージは喰らうけど呪殺結界越えて来る程度にはHPが残ると、まぁほぼ一撃死状態だけど。
ただ、呪殺属性な生物なので直接触れるのはマズそうだ。
やはりルースさんに任せるのが一番だろう。
ん? あれは……刃の四肢を持つ女の人!
「コトリさん、あの人だ。俺達の命の恩人」
「え? アレは……」
「よし、折角だしテイム交渉を……どうしたのハナコさん?」
テイム交渉しようと結界から出ようとした俺を、裾を掴んでハナコさんが引き留める。
振り向いて彼女を見れば、凄く哀しそうな顔で首を振った。
『だめよヒロキ、彼女は……ボスじゃない』
「……え?」
「AIはNPCと変わらないわよヒロキ様」
アカズさん? え? どういう事?
『つまり、助けられたのは、偶然。こいつ等はこの病院に出てくる雑魚キャラの一人』
嘘だ。だって、俺は危ないって、避けろって、聞こえたぞ。女の人の声で。
ぼ、ボスだって、はは、か、鑑定ッ。
名前:
種族:アラクネ クラス:ラクネ
二つ名:なし
Lv:85
HP:9400/9400
MP:200/200
TP:2380/2380
GP:4570/4570
状態:普通
技スキル:
???Lv87: ???
???Lv76: ???
???Lv60: ???
???: ???
???: ???
???: ???
嘘だろ。
マジで冗談じゃなくこいつモブモンスターだ。
つまり、NPCキャラ。完全な感情無しのAI。
いや、でも、俺は助けられて……
「もしかしたら、別の誰かが助けてくれたんじゃないかしら?」
「会話も不可能よ旦那様。この病院に入ってからこの敵は既に5体程倒してるし」
そ、そっか。接敵したのは二回だけで、両方一体での遭遇だったから、俺、勘違いしちまったのか? 良く考えりゃコイツに攻撃された時、慌ててしゃがまなかったら死んでたしな。
でも、あのあと逃走して行ったのはどういう理由だったんだ?
「ヒロちゃん、信じたくない気持も分かるけど……」
「ああ、いや、うん。任せるよコトリさん」
「はい、じゃ、死んどけっ」
結界向けて両手で斬りかかっていたラクネに呪殺術を叩き込むコトリさん。
ダメージ過多であたった瞬間、ラクネは全身黒色へと変化して消失していった。
呪殺怖っ!?
って、またラクネ来た。
本当にモブ敵だったのか。
じゃあ。俺を助けてくれたあの声の主は一体……
考えても仕方ない。テイムを求めてるなら向こうから接触があるだろうし。
よし、気持ちを切り変えよう。
両頬をパンッと張って気合を入れ直す。
ちょっと頬が痛いが、呪死者なんていう結界素通りして来る奴もいるからな、ここから先は気を抜かないように行かないと。




